登山者情報1030号

【2006年07月29日/日暮沢〜竜門小屋/井上邦彦調査】

 今回の朝日山地森林生態系保護地域合同パトロールは、置賜地区の日程が町民登山と重なったため、山形地区のパトロールに参加させていただいた。
 02:45目覚ましが鳴る。ザックに適当に道具を入れて、03:30自宅を出発する。途中のコンビニで食料を買い、柳川温泉経由で見附に向かう。道路は細く曲がりくねっている。トンネルを潜ると、一安心である。古寺に向かう道を左に分けて、日暮沢小屋には05:30に到着した、小屋直前の沢は車道に水が溢れていた。
 小屋の駐車場には既に東北森林局やふれあいセンターの方が到着していた。全員が集まった所で、挨拶や参加者の紹介があり、06:10日暮沢小屋を出発した。歩き出してすぐ標柱があり、ここを左折すると尾根登りが始まる。
 蒸し暑く、カッパを脱ぐ。先頭は大江山岳会の阿部さん、セカンドに私がついた。途中で登山道が掘れているところや湿地があり、登山道整備の具体的な方法について話しながら登る。
 08:07-29ゴロビツ清水で一息入れる。清水というが沢である、登山道からは僅かな距離である。ここで地元大井沢の方から地名のいわれを教えていただいた。
 「ゴロビツ」は清水の上の地名、ワッパ(弁当箱)を落としたのが由来という。広辞苑を引くと櫃(ひつ=什器の一)とある。米びつという言葉を聞いたことがあるので「びつ」は弁当箱で、これがゴロゴロと落ちたのだろう、と勝手に解釈した。
 「清太岩山」は清太という狩人が隠れて熊を待ち受けていた場所だそうである。面白いのは「ユウフン」である。漢字で書くと「熊糞」、山形県の地質研究者である安齋徹さんが登った時に熊の糞があったことからついた地名とのことである。
 アカモノが咲いている。草原脇の登山道には食虫植物のモウセンゴケがあった。09:20-31森林限界のピーク、09:39-45清太岩山々頂で休憩する。
 清太岩山から下った鞍部の両側が船窪地形になっている。地滑りによる二重稜線や船窪地形は珍しくないが、尾根の両側に見られるのは記憶がない。
 ミヤマコウゾリナ・オトギリソウ(=イワオトギリ)・ヤマハハコ・ヨツバヒヨドリと花が出てくると、10:15ユウフン山頂についた。ここから再び鞍部に下る。ガスの切れ間に竜門小屋が見えた。ミヤマホツツジ・タニウツギ・ミヤマアキノキリンソウ・エゾシオガマ・タカネマツムシソウ・ズダヤクシュ、次第に花が多くなる。
 10:58-17稜線の分岐に到着する。真っ赤な実を付けたミネカエデは葉の先が尖っているのでコミネカエデだと教わった。林野庁の方々は流石に詳しい。
 ここで大朝日に向かう班と分かれ、私達日帰り班は竜門小屋に向かう。稜線にはタカネツリガネニンジン・ミヤマアキノキリンソウ・オヤマリンドウ・ミヤマコウゾリナ・ハクサンシャクナゲ・オトギリソウ・ミヤマリンドウ・シラネニンジンが咲いていた。
 11:34-12:40ハクサンイチゲに囲まれた竜門小屋に到着する。小屋に入り管理人に挨拶をすると、なんと遠藤さんであった。遠藤さんは今春チョモランマに登ったと聞いていた。その後、小屋番をしているとのこと。ラーメンを食べながら暫し歓談。高所でも私達が使っているのと同じガスストーブを使うが、プロパンガス成分の多いガス(国内では販売していない)を使う、国内でこれを使うと火力が強くて金属が溶けてしまう話などをお聞きした。
 小屋を出発し稜線を戻り、12:52分岐から下山する。13:25-35ユウフンで一息を入れ、14:05清太岩山を通過、時折登山者とすれ違う。葉がハート形なので弓矢から名が付いたというヤハズハンノキが多い。15:03-20ゴロビツ清水を過ぎる。ここから大井沢の前田さんと狩りの話をしながら下る。
 大井沢では小玉川と同じようにナメ棒を持参すること、兎猟は単独で行うことが多いこと、熊猟は巻き狩りで行うこと、熊の胆は乾燥させてから分ける事など、私が体験したこととの相違点が興味深かった。
 前田さんは村田銃時代から猟を行っている大先輩である。単発なので手指の間に弾を挟み連射する技術。熊を近づけすぎ次の弾を込めることができなくなり、そのまま鉄砲の先で熊を押して転がり落とした武勇伝。バンドリ(ムササビ)の毛皮が非常に高価で売れたので、集落の方々が競って猟師になったこと。村田銃ではムササビのいる樹木まで弾が届かなかったこと・・・
 尽きない話に楽しく下り、16:39日暮沢小屋に到着した。1名の方が遅れたので、先に解散の話しも出たが「何処かのツアー業者じゃあるまいし、皆一緒が当たり前」と迎えに行き、全員が揃った所で解散となった。

今回のコース
日暮沢小屋で挨拶 塵を拾いながら登る
ゴロビツ清水にて 清水というより小沢です
生態系保護地区の看板は
雪で破損していました
掘れた登山道
蒸し暑い 一歩一歩
清太岩山々頂 クロヅル
清太岩山を振り返る 潅木帯を行く
時折雨が叩きつける 足元に花が出てきた
ユウフンにて 最後の登りに取り掛かる
稜線の分岐にて、コミネカエデ タカネツリガネニンジン
(ハクサンシャジン)
帰途は晴れてきた エゾシオガマ
登山者が登ってきた ユウフンにて一息つける
尾根の両側が船窪地形になっている 小朝日岳方面
小朝日岳 展望を楽しむ
前田さん ウラジロハナヒリノキ
ハイイヌツゲ ヤハズハンノキ
アカモノ モウセンゴケ
急な下り坂
エゾアジサイ