登山者情報1047号

【2006年09月30-01日/石転ビ沢-丸森尾根/井上邦彦調査】

 13:32天狗平から歩き始めると、LFD夫妻に会う、散策とのことである。珍しく泊まり、ザックの中身は殆どアルコールだ。14:01砂防ダムから登山道に入る。砂防ダムを過ぎた所で登山道に猿がいた。こちらを見て藪の中に入っていった。小猿もその後を付いて行った。藪の中かでキャンキャンと犬のような啼声を立てている。周囲の樹々にはツキヨダケが非常に多い。
 14:20うまい水は水量が少なくなっていた。終わりかけのオクトリカブトやカメバヒキオコシ、キバナアキギリ等が咲いていた。
 長ズボンが足に纏わり付くので、婆まくれで膝下に紐を巻き膝に余裕を持たせた。14:30近大慰霊碑通過する。14:47梶川出合は左岸高巻き道を通った。上流から見ると以前の登山道は川を漕げば通れるレベルである。
 丈の伸びた草を分けながら、15:10石転ビノ出合に到着した。ODDの写真にあったすぐ下の雪は欠片も見えない。逆行で雪渓の写真がうまく撮れない。門内沢に向かうが、ここも登山道は草で覆われて足の置き場所が分からない。ODDの写真では嫌らしく伸びていた雪渓が落ちていたので、問題なく門内沢を渡渉する。
 石転ビ沢の水量はかなり少ない、また水が出たような土砂がある。ここも飛び石を伝って渡り、15:19右岸の夏道に出る。登山道はオオイタドリが首の高さまで成長しており、足元が見えない。以前として、逆光で写真がとりにくい。草原の中に草を押し倒したり食いちぎった直径1.5m位の変な穴が二つあった、動物のものだとすれば熊であろう。
 15:24川原に出る。ここからは少し歩きやすくなるが草があるので油断をすると足を挫きやすい。風が涼しくなる。15:33右岸からの枝沢の所から一旦雪を踏むが、また川原を行く。寒くなり長袖を着る。
 15:40左岸を登って雪渓の上に出るが、雪渓端下を通過するので緊張する。そのまま雪渓を登り、左岸に移り足元に注意しながら進んで、15:59ホン石転ビ沢対岸の枝沢で休憩する。
 梅花皮小屋のMDEと交信中、突如MDEの「熊だ!」という興奮した叫び声が聞こえた。無線から流れてくるMDEの声は要領を得ない。何処にいるのか尋ねても「熊、熊がいる」というだけ。私の近くにいるのかも知れない。注意深く周囲を眺めるが、それらしき気配はない。
 徐々にMDEの行動が伝わってきた。彼は梅花皮小屋から北股岳寄りの慰霊碑まで来て私と無線交信をしていた時、梅花皮小屋直下にいる熊を発見したのだ。ここで熊を追い払おうと笛を吹いたが、熊は悠然と草を食べている。急いで小屋に戻ったが、小屋からは近すぎて熊が見えない。冬期出入口に上がると熊が確認できたので、小屋の鐘を打ち鳴らした。ここでようやく熊は北股岳方面にトラバースを始めたのだ。とりあえず私の現在地では危険性はない。ただ何時降りてくるか分からないので、上部を観察しながら何時でも熊スプレーを出せるようにして、16:03歩き始める。
 上部の雪渓は真ん中が派手に崩壊している。左岸の急なガレ場をトラバースするように進むが、左岸からの枝沢が入っている所はトラバースもできない。しかたなく念のためピッケルを抜き、雪渓をよく観察しぎりぎりのラインを歩く。
 再度左岸に移る。足場がガラガラ、地下足袋なので石が動いて足を挟まれると大変なことになる。さらには岩が雪渓で止まっているので、雪渓が崩壊すれば足元の石もどっと崩れ落ちるので緊張する。
 16:40-45北股沢出合の水場で雪渓から離れる。食事を取り最後の登りに備える。黒滝から沢に入り、中ノ島(草付キ)の末端に取り付く。
 MDEからの無線によると、熊は私のいる方向に下ったとのことである。熊スプレーの安全装置を一度外して軽く差し込み、何時でも発射できる態勢を取る。無線機はイヤーホンの他、胸にマイクをつけ、MDEと情報を交わしながら登る。MDEは先ほどの慰霊碑から熊を探し、私の右上方にじっとしていると連絡してきた。
 このまま登山道を登り続けると、鉢合わせになるが、熊の姿は見えない。空は紅を含み始め、山陰になって照度が落ちてきた。笛を吹き私の位置を熊に知らせながら登る。
 見つけた!私の上方、沢が合流している小尾根末端の草の中に、全てが吸い込まれそうな真黒な塊!左手に熊スプレーを持ち、右手でカメラを出して撮影しながら、静かに登山道を登り続ける。笛を吹いても興味を示さないが時折、塊の形が変化している。
 次第に距離が短くなる。顔がこちらを向き眼と眼が合った。一瞬お互いを凝視した。私を意識しているのは確かだが、無関心を装っているように感じた。こちらが急な動きをしなければ、彼も関わりたくないと感じた。心臓の鼓動を隠し、何事もないようにゆっくりとゆっくりと登って行く。
 幸い登山道は彼の手前で左折している。左の小沢に入るとお互いの姿は見えなくなった。そのまま休むことなく登り続け、17:30梅花皮小屋着に到着した。
 翌日も好天に恵まれた。07:05梅花皮小屋発、07:25-43北股岳山頂。山頂にいるとMDEから「昨日の熊が小屋直下にいる」と無線が入ってきた。小屋に向かって戻ると、確かに草付ノ台地で草を食べている熊が見えた。充分な安全距離を保ち、撮影をする。
 その後、ダイグラ尾根に向かったMDEと丸森尾根に向かった私が、それぞれすれ違う登山者に注意を促すことにした。
 08:25門内小屋、08:42-53扇ノ地紙、09:10地神山を通過し、09:19-28地神北峰で一服して稜線と別れた。09:44-51丸森峰で片桐氏と会う。10:01森林限界のすぐ下、10:07危険木を通過。
 10:21-27夫婦清水を確認する。10:39足元ばかり見てあるくとそのまま下に行きそうな場所があった。10:52-58、765m峰で食事を取りMDEと交信。11:18天狗平に到着した。

今回のコース

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