登山者情報1064号

【2007年02月04日/町境:無名峰(750m)/井上邦彦調査】

 眼を覚ますと、昨日とはうって変わって強風が家を震わせていた。予報では町中心部で風速5〜6m/t、1人なら考え込むところであるが、今日は二人である。テルモスに紅茶を入れる。
 集合場所のコンビニでお握りを買い込み、2台の車で五味沢に向かうが、途中スリップ、幸いにも対向車がなく助かった。後続車もスリップしてあわやの所だったとのこと。凍った路面に薄っすらと雪が積もり、滑りやすい状況である。
 徳網集落の先、除雪の終点に車を1台置いて、北部小中学校まで戻る。07:15出発。前回と同様に太鼓沢川右岸から林道沿いに北に進む。前回はECBがスノーシューであったに対し、今回は二人ともスキーなので、条件は悪いが順調に進む。天候も心配したほどではなく、07:56カッターシャツを脱ぐ。
 08:01-04前回尾根に取り付いた三俣(仮称)に到着する。ここで前回と同じく渡渉、08:11本流を左岸へ渡渉、08:25-32右岸へ渡渉し食事を取る。前回下って来た時は長靴にカンジキだったので平気で川を渡ったが、今回はいちいちスキーを脱いで渡渉し、雪の上に這い上がる繰り返しである。
 08:40雪が少ないため開いている枝沢を強引にスキーで渡ろうとしたら、足場が崩れ動けなくなる。無様な格好でスキーを外し、ザックを引き上げてもらい脱出する。08:56左岸へ渡渉し、すぐ枝沢を渡渉。雪が多ければ雪崩が出そうな崖、柴を掴んで強引にスキーでへつる。カンジキでも苦労しそうな場所を平気で柴をスキーの足場にしてへつるので後続のNIYは苦労している。
 09:13枝沢を渡渉し、09:25-29なかなか来ないNIYを待っている間、何気なくGPSで現在地を確認したところ、予定より西に来ていることに気が付いた。地図とコンパスをにらめっこし、NIYが散々苦労したヘツリを戻り、尾根上に出る。今度はNIYはスキーを脱いでヘツリを越えて来た。
 その尾根をトラバースしようとしたが、下降点がない。どうも尾根の右手が前回下った沢のようである。適当な所まで尾根を登り、今度は下り気味に沢に降りる。沢は雪で埋まっていた。雪崩の恐れがないことを確認して、沢身を登っていくと、正面に誰かが歩いたような跡が出てきた。前回、私とECBが下った跡である。まさか2週間前のトレースが残っているとは!
 10:14-22県境が見えてきた。県境に出れば風が強いだろうと考え、雪庇下で食事を取った。腹ごしらえをして県境に出ると予想通りに風にさらされた。あとはひたすら県境を東進するが、尾根が狭いのでスキーでは登り難い。
 10:50-11:00カンジキに履き替えて直登する。雪少なく柴だらけだ。ザックに括りつけたスキーに強風が当たりバランスが崩れる。NIYが遅れるため待っているのが辛い。一瞬、通ってきた太鼓沢川と餓鬼山が見えた。
 11:48-12:08休憩を取り再びスキーを履く。13:00-13:10尾根が痩せてスキーでは通れそうもないので、ワカンに履き替える。何時の間にか南側に出ていた雪庇が北側に変わった。スキーで下り、止まった瞬間、スキーの先端で雪庇が崩壊した。地図を見ると遅々として進まず時間だけが経過していく。13:42ようやく巨大な尾根を持つ710m峰に到着した。
 ピークから750m峰をに向かおうとすると、雪庇が出ている。さらに右側は切れ込んでおり、左側は雪崩地形である。慎重にストックで雪庇を切り取り、露出している潅木を目指して下る。この先は痩せ尾根の上をクロベが占領しているため、急な側面にしがみつく様にして突破する。
 14:10-20鞍部までくるとブナ林になり、14:40-45スキーを履く。15:01、750m峰は徳網山の分岐点である。ここで直角に左折するが、このまま北に尾根を下りると大変なことになる。地図とコンパスとGPSを合わせてゆっくりと進む。突然、先頭を行く私の右足と左足の間に亀裂が入った。無意識で左足に加重すると、右足は空に浮いたままで雪庇が落ちていった。
 GPSを頼りに右の緩いブナ林を滑る。ここが非常に微妙なライン取りとなった。若干右に行き過ぎるが、左には尾根がない。ひたすらGPSの示す方向に下ると、いきなり前方に痩せ尾根が出てきた。
 15:01-06食事を取る。この先の痩せ尾根はクロベが密生している。思い切って南斜面に出ると雪は安定している。そのまま痩せ尾根の右斜面をトラバースする。後は安定したブナ林を快適に進む。時刻が気になり始める。
 16:35に662m峰を通過し、気も緩んでいた。三度目の正直が・・・いきなり足元が消えた。全く無意識に身体は左に倒れ、両腕を雪に突き刺していた。乗っていた雪庇が崩壊したのだ。幸いにも私の身体は止まっている。改めて周囲を見ると、かなり広範囲で崩壊が発生したようだ。少しずつ身体を動かして脱出する。
 薄っすらと702m峰が見え、右の緩斜面は一面の杉林となっている。赤渕平である。ようやく先が見えてきたが次第に日が翳り始め気温も下がってきた。動物に皮を食べられた木の枝が雪面を覆っていた。これほど食い散らかした光景を見たのは始めてである。
 16:54鞍部で県境を離れ、コンパスで方角を定め、右の杉林に下る。兎の足跡が多いと思っていたら、目の前5mの所で兎がきょとんとこちらを見ていた。その後も杉林を滑降し、17:30吊橋に到着した。
 私はスキーを持ってさっさと渡ったが、なかなかNIYが来ない。そうしている間に暗くなってきた。NIYのヘッドランプが点灯し、ようやく吊橋を渡ってきた。
 17:53今朝デポした車に到着し、今回の山行は無事に終了した。

今回のコース
スキーを抱えて渡渉する 岸に上がるのが大変 雪が少ないので渡渉が多い
何度も渡渉 沢筋が細くなってきた 急斜面を横断する
柴を掴んで キブシは折れやすい 尾根を越える
目的の沢に下る 2週間前(第1062号)のトレースが
残っていた
通常なら雪崩で通れないコースだ
町境(県境)が見えた 最後の頑張り 風の強くなる町境手前で休憩する
町境 町境を辿る クロベの林を登る
一瞬、太鼓沢川が見えた 餓鬼山が見えたのもこの時のみ 急登になる
尾根が痩せてくる 地吹雪の中 黙々と登る
薄っすらと前方が見えた 何時の間にか雪庇の方向が
変わっている
雪庇に気をつけて進む
痩せ尾根はワカンに履き替える スキーの先端で雪庇が崩壊した なかなか先に進まない
710m峰 750m峰方面 710m峰から雪庇を崩して下る
痩せ尾根が続く ワカンでもルートに苦労する スキーが枝に掛かる
とにかく進む 振り返る ようやくブナ林となる
スキーの方が楽だ 750m峰山頂にて 突然足元の雪庇が崩壊した
割れた雪庇 呆然とするHZU 再び痩せ尾根となる
雪崩の可能性を確認し、東斜面を進む 尾根上より格段に早い 750m峰を振り返る
凍て付いたブナ林 ブナ林を進む 動物の足跡が風雪に浮き上がっている
622m峰 雪庇の崩壊に巻き込まれたHZU 落ちた雪庇
何とか這い上がる 崩壊した場所を振り返る 702峰、右の杉林に下る
動物に齧られた枝が一面に散乱していた 陽が翳ってきた
今回の終点 暗くなった吊橋を渡る