登山者情報1071号

【2007年04月07-08日/梶川尾根〜石転ビ沢/井上邦彦調査】

 天気予報は尻上がりに良くなっていった。今年始めて天狗平に入るので、林道の雪崩具合が一番心配である。放射冷却のある早朝であれば、落雪の頻度は少なくなる。状況を確認して危ないと判断したら、帰路は西俣尾根か倉手山を経由するつもりである。
杁差岳の見える大淵橋に車を止め、05:26歩き出す。久々に宿泊用の荷物なので多少は重く感じる。雪の表面は案の定、放射冷却で凍みているが、締まっていないので時折潜る。古いトレースを辿るが歩きにくい。路肩が露出している所はできるだけ路肩を歩くこととした。路肩でフキノトウが凍り付いていた。右下に白いチューリップに似た小さなミズバショウがびっしりと群生していた。
 05:48-50倉手山登山口で服を脱ぐ。登山口の標識は完全に露出していた。対岸の西俣尾根の枝尾根には途中の平らな所以外は雪が見あたらない。西俣ノ峰山頂付近の様子がよく見えた。また倉手山登山道にも雪が見当たらない。
 雪崩跡を過ぎる。ブロックの中には勢い余ってかなり下方まで達しているものもあった。05:53国立公園の標識を通過、ここからは何時もの雪崩危険地帯になる。06:00例年怖い思いをする砂防ダム右岸は、若干残ってはいるものの、かなり落ちている。
 06:10オフタガリ対岸で、ストックをピッケルに替える。いよいよ吹き付けである。発電所の方と思うが、数箇所スコップでルートを作ってくれている。それでもまだ上から若干ブロックが来ている。微妙な場所で慌てて足を踏み外せば奈落の底である。全体には想像通り路肩が結構露出していた。
 雪崩の跡はかなり硬くキックステップがやっとであるが、露出している路面は氷が張っておりそちらも危ない。
 06:29ピッケルをストックに替える。結構路肩を歩ける。雪が全体に少なく、上の方のブロックもそれほど怖くは感じられない。
 ブナ林に出ると、足跡は何時の間にかなくなった。スキーの古い跡だけが続いている。部分的にくるぶしまで潜り嫌らしい。天狗橋手前の水場付近は雪が完全に溶けており、使用できる。
 橋を渡って直上し天狗平ロッジを確認する。特段の異常はなさそうだ。06:49飯豊山荘を通過、06:53-07:04駐車場で第1回目の食事とする。
 07:07梶川尾根に取り付く。スノーシューの跡があったが取り付きだけ。夏道を登り、07:42-47楢ノ木曲リで日焼け止めを塗る。心拍数は125/分。
 登るにつれて雪質が変わりキックステップになる。数日前に降った新雪がまだ残っている。08:11雪上と夏道を交互に登り、傾斜が緩み尾根上を登ると目の前に湯沢峰が見えてきた。右手には枯松山の上に杁差岳が見えている。08:24最後の急登をキックステップで登る。爪先だけを使ったので心拍数は143/分まで上昇した。
 08:28湯沢峰の肩に出る。目の前に梶川峰が聳え立っている。程なく左側に北股岳から本山までの稜線が広がってきた。08:32旧湯沢峰を通過する。旧雪は問題ないが、新雪の部分は潜って歩きにくい。
 08:42-08:50湯沢峰を出発する。北股岳や梅花皮岳の露出している岩の部分は、新雪で薄化粧をしたようだ。新雪によって覆われた山肌が美しい。
 ストックが木の根の間に斜めに入り、引くと輪が広がって取れなくなった。夏道を行くと痩せている所に嫌らしく雪が残っている。09:16昨年崩壊した登山道がさらに崩れていた。
 09:26-47滝見場で食事を取る。日焼け止めを塗り、サングラスを掛ける。アイゼンを履いてしてピッケルをバンドに挟んだ。傾斜が増してくると、左手ストック、右手ピッケルを持って登る。雪が水分をたっぷり含んで、アイゼンに新雪がたっぷりとくっついて重い。できるだけ新雪を避けて登る。雪虫がわさわさと湧いてくる。
 段差かと思ってストックでつついてみると、足元から大きな穴が開いた。かなり深い亀裂である。ピッケルを支えにして越える。
 10:38少し傾斜が緩くなるとダケカンバが右に1本ある。おそらく五郎清水だろう。先ほどより少なくなった雪虫が私の足の気配で丸まる。
 10:54急斜面になり新雪が薄くなってその下の雪が固くなってきた。ピッケルのみにする。頭上のダケカンバは数えると7本ある
 ダケカンバ手前の潅木のピークを過ぎ、11:00-12傾斜が緩くなった三本カンバの下で食事にする。ODDと無線交信をする。じっとしていると寒くなってくる。
 ダケカンバから真っ直ぐ登り、右手のリッジ状の尾根に登る。この辺はかなり迷いやすい。下りの時は充分な注意が必要だ。
 左足のアイゼンがおかしいと思ったら、アイゼンが外れてテープだけで止まっていた。不安定な状態のまま慌てて直す。
 冷や汗をかきながら11:29ダケカンバに到着する。LFDと交信し、傾斜が緩くなって来たのでピッケルをバンドに刺しストックに切り替える。アイゼンに雪が付いて酷い、ストックで雪を落としながら登る。杁差岳方面、西俣尾根全部が見えてきた。
 12:07-19梶川峰の標識で食事を取る。標識を三脚代わりにして記念撮影。ピッケルとアイゼンをザックに収納し歩き出す。手が冷たくなってきた、寒い。
 12:33梅花皮小屋に被さるように大日岳が見え始めた。門内小屋・杁差小屋が見える。雲が多くなって来たので、サングラスを外す。撮影する度にサングラスを外すので、眼がおかしくなってきた。再びサングラスを掛ける。
 13:04扇ノ地紙に到着する。広場の方が高くなって、新潟県側の標識だけが露出していた。いきなり二王子岳・二ツ峰が目の前に広がる。新潟県側は全体に赤く、潅木が海老の尻尾状になって山形県側とは全く違う景観をしていた。
 胎内山13:13石の標識が出ている。前方に登山道ともトレースとも思える白い線が続いていた。なんだかよく分からなかったが、近づいてみると亀裂が薄く新雪で覆われていた。
 此処から見る北股岳は、まるで飛び立つ鷲のように翼を広げており、左脇に梅花皮岳が鷹のように留まっていた。中国大陸から血の涙を吸ってきたような黄砂が、純白な新雪に覆われて何か物悲しく感じた。何かを訴えかけているようだ。
 13:27-38に門内小屋に到着した。入口は完全に埋まっている。例年使っている入口左上の窓に鍵が掛かっていることを確認する。後ろに回って冬期出入口の梯子を登って、何とか凍りついた片側の戸を開けたが、その中に木枠の窓があって、中に入ることはできなかった。時間を掛けないと無理のようだし、肉体的に少々疲れてきたみたいなので、それ以上の作業は止めた。
 13:43門内岳山頂を通過する。山頂の祠は一面海老の尻尾に覆われていた。ギルダ原の測量計跡からは夏道が露出している。
 13:56から14:02まで新潟県側斜面で服を着て、最後のお握りを食べる。蒜場山・烏帽子山が見えるが、明るすぎてカメラの液晶(ファインダー)が見えない。サングラスのせいで瞳孔が開いているのかも知れない。二ツ峰は迫力がある。
 14:23ゆっくり登っている途中で携帯電話のバッテリーがなくなる音がなった。できるだけ夏道を行くことにするが、時折どこが夏道だか分からなくなる。
 14:46-15:02北股岳山頂で記念写真を撮り、予備用の携帯で自宅に電話をする。ODDと無線がつながる。遠く御西小屋が見えた。ピッケルを出しストックをザックにつけて下る。風紋が美しい。
 15:16梅花皮小屋に到着したが、やはり例年と雪が違う。管理棟が最上部までびっしりと雪に覆われている。鋸で切りながらスコップで掘る。15:43管理棟の除雪完了。
 本棟の除雪に取り掛かる。冬期出入口はびくともしない。中に雪が吹き込んで凍り付いているようだ。夏の入口を掘ってみると、意外と簡単に開いた。中には雪が吹き込んでいなかった。利用する場合、ドア下の雪をきれいに取り、レバーを完全に下まで下げて隙間ができないようにしてもらわないと雪が入るので留意して欲しい。
 中に入って冬期出入口に取り掛かる。中ドアを身体の分だけ開けて風除室に潜りこむ。吹き込みの量はさほどではないが、床が凍りついている。剣スコでもなかなか氷は砕けず、先がめくれた。それでも何とか16:49除雪完了。
 管理人室で一息ついていると、北股岳山頂から登山者が1人下ってきた。管理棟に誘って、山の話をつまみに喉を潤す。彼は鎌倉から来たフカヤさん、今朝、西俣尾根を登ってきた。「途中で登山者とは一人だけ会った(後日、桃パパと判明)、門内小屋で冬期出入口を開けようとしたところ、井上が動かせなかった木枠の窓を開けることができた。入口左上窓の鍵は外さなかった。木枠は僅かに隙を開けてきた。」とのことであった。
 クサイグラ尾根を下るというフカヤさんを見送り、05:25梅花皮小屋から石転ビ沢に下る。上部は傾斜感がかなり出ているし、アイゼンが小気味良く効いた。しかし一番急な所に差し掛かると新雪になり、膝近くまで潜る状態。新雪は安定しているというものの、新雪が雪崩れたらと考えると気味のいいものではない。
 05:44-51北股沢のすぐ下でアイゼンとピッケルをザックに付けてストックを出す。ホン石転ビ沢出合が近くなってきた頃、小さな無数の雪粒が上昇気流に乗り、ふわふわと空を漂い始めた。まさに雪が空を飛んでいるような感じである。両岸からは至る所で新雪がボール状雪崩となって落ちているが、雪渓の端までしか達していない。
 06:01ホン石転ビ沢出合を通過すると、雪崩跡に新雪が被さり、落とし穴だらけになっており、手間取る。
 下方は晴れているが、振り返ると上方は次第に曇ってきた。そうこうしていると何時の間にか雨になってきた。06:23かなり潜る所があるのでカンジキを履いてカッパ上を着る。
 06:31-36石転ビノ出合、本降りになってきた。雪崩が嫌だなと思いつつ、カッパ下を履く。門内沢側は大きく窪んでいる。段丘との段差も大きく小雪を痛感する。
 赤滝も窪みが大きく感じる。梶川出合上の水場はかなり広がっており、大岩も露出している。
 06:51梶川出合を通過する。合流部が極端に窪んでおり驚く。梶川出合下の古い夏道の大岩も既に露出しており、滝沢出合の滝は露出し、滝沢出合下の岩も頭が出始めていた。
 地竹原から本流が露出している。河岸段丘に上がり、降りようとするが適当な所がなくカモシカの足跡伝いに夏道の沢の脇の木を掴んで降りた。
幸い雨が止んだ。07:08-16沢に降りて喉を潤す。この先は夏道が出ていないので、おっかなびっくり左岸をへつるが、何時雪が崩壊してもおかしくない。
 婆マクレの直下でカンジキを脱ぎ、彦右衛門ノ平に上がった所でGPSのバッテリーを替え再びカンジキを履く。
うまい水でカンジキを外し、ストックを仕舞いピッケルを出す。デブリを下って部分的に雪の残っている夏道に取り付く。
 07:48-53カッパ下を脱ぎ、ピッケルを仕舞い、ストックを出しワカンを履く。昨夜フカヤさんに、あるかどうか分からないといった雪橋はあった。天気になったり雨が降ったりと目まぐるしい。ブナ林に入るとひと心地着く。雪面に、黒地に白い斑の羽が散らばっていた。鷲にでも襲われたのだろうか。
 08:12砂防ダムを通過し、温身平のブナ林に入る。芽が大きく萌えたブナの木があった。08:54梶川尾根の取り付きを通過する。私のトレースはなく、スノーシューの古い跡があった。09:00飯豊山荘を通過する。
 09:07-20天狗橋袂の水場で一服する。結構疲れてきたので、カロリーメイトとウイダインゼリーを食べる。カロリーメイトは非常食として持って歩くけれど殆ど食べたことがなく、久しぶりだ。
 09:30路肩を歩きたいので邪魔になるのでカンジキを脱ぐ。拭き付けまでの間は殆どが路肩を歩けた。
 拭き付けから先は大部分が雪の上になる。雪がザスザスでカンジキを履きたい所であるが、雪崩の跡が結構ありカンジキでは対応できないので坪足となる。
10:25-28倉手山登山口でカンジキを履く。10:54大淵に到着する。倉手山に登ろうとする単独の方が2人、うち1人は中野さんだった。

今回のコース

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