登山者情報1101号

【2007年08月01日/ダイグラ尾根〜石転ビ沢/井上邦彦調査】

=注意=
【ダイグラ尾根では登山道の雪は全てなくなった。宝珠山上部に雪の欠片4個があるが、利用する場合は転滑落に注意が必要である。また、道刈りをしていないため、大又沢側の登山道は草に覆われ足場が見えない。登山道は急斜面をへつるように作られているので、下を向いている潅木の幹に登山道を乗せると転落する可能性が極めて高い。】
 自宅を出てすぐに1匹の動物が道路を横切った。顔は見えなかったが体型からしておそらくハクビシンだろう。大淵の先で道路からヨタカが飛び立った。
 03:57薄暗い中ライトなしで天狗平を出発する。04:24環境省で設置したカウンター脇を通過する。ようやくかすかに腕時計の時刻が見えるようになった。
 04:32桧山沢吊橋を渡る。吊橋の手前でへつる所は道が3本になっていたが、何処でも歩けそうだ。
04:39-48暑いので長ズボンと上着を脱ぎ、短パン姿になる。ストック先端のゴムを外し、GPSの電池を入れ替えた。ザックは手で持つと重く感じるが、担ぐと差ほどではない。服装を替えたのでかなりすっきりしてきた。今回はリハビリ山行である。はやる気持ちを抑えてゆっくり確実に登ることにする。
 04:54岩場を通過する。リョウブが咲き、桧山沢源頭の稜線にかかる雲が色づいている。クサイグラ尾根の偽烏帽子は迫力がある。駒形山の雪形が小さくなってきた。
 05:00蕨の葉で覆われているホダワラを過ぎ、05:00すぐ石楠花岩を通過する。05:20尾根の右斜面を登る。人の声が聞こえたような気がしたが、山鳩の鳴き声のようである。登り始めの動悸が落ち着き始めた。ノリウツギ・オオコメツツジが咲いている。05:28尾根筋に戻るとすぐ上は平坦になる。5:31御池ノ平の池を通過する。
 05:41-53長坂清水でOTJと交信、お握り食べる。左足のズックが靴擦れを起こしそうなので、問題が発生する前にキズバンを貼る。全体として体のバランスがいまひとつ優れない。
06:14コメツガの平を通過する。対岸の烏帽子沢は土石流が流れたようで、酷い様相だ。モミジハグマが咲く。マルバキンレイカはまだ蕾だ。ここからは「これがダイグラダだ」と言わんばかりの急登となる。
06:33-35休場ノ峰、無線の交信をする。コキンレイカ・ノリウツギ・オオコメツツジ・ヨツバヒヨドリが咲く。06:52-07:00空腹を感じたので、北股岳方面を見ながら食事とする。周囲はコキンレイカが満開だ。タカネアオヤギソウ・カラマツソウ・マルバキンレイカ・ウメバチソウ・エゾシオガマ・ツルアリドウシ・ソバナ・ヤマトウバナが咲いている。程々の風もあり視界良く快適な山歩きである。07:07倒木がある。千本峰直下の昨年枝を切った所にある倒木もそのままになっている。07:16千本峰の標柱が林の中にある。
 07:22岩場のコキンレイカは盛りだ。すぐ下に昨年からの倒木が邪魔だ。この先は足場をよく見ないと草で隠れているので転ぶかも知れない。倒木を潜る。ウツボグサ・シロバナニガナが咲いている。
 07:38ピークを右から巻き終えて鞍部を通過し、ここから登りになる。アカモノ・ミヤマコウゾリナが咲いている。07:52-8:15休憩していると本間さんが降りてきた。先日石転ビノ出合まで登山道補修をしていた時にもお会いしている。
 昨年若干手入れした登山道の崩壊がまた進んでおり、登山道そのものがなくなっている。このままでは大変危険なので、鋸で笹を刈って脇に仮の道を作った。08:20-25折れて枯れた枝が登山道を塞いでいる松を切る。
 ハクサンコザクラが咲き高山帯の雰囲気が出始めたところで登山者3パーティとすれ違う。年配のご夫婦らしい方の足運びをみて、これでは随分苦労するだろうなと思いつつ言葉を交わす。
 花が増えてきた。ヒメサユリ・ミヤマホツツジ・ヤマトウバナ・シロニガナ・エチゴキジシバリ・イワカガミ・ミヤマキンポウゲノウゴウイチゴ・白スミレ・ハクサンコザクラ・ニッコウキスゲ・モミジカラマツ・ハクサンンボウフウ・コバイケイソウ・ヨツバシオガマと記録するのも大変だ。
08:43宝珠山の肩にある標柱を通過し、08:51宝珠山々頂を巻く。ここから三角点・駒形山・岩稜がすっきり見える。鞍部に雪の破片が2個、登山道の下にある。僅かだが融雪水も見える。雪を取って水筒に入れる。ハクサンコザクラは満開、オオサクラソウ・シナノキンバイが咲いている。
 09:05-12宝珠山の岩場で休憩を取る。タカネナデシコが咲いている。風が気持ちいい。素晴しい景色を満喫しながら食事をする。鞍部の登山道下に雪のかけらが2個あった。クルマユリが咲いている。
 09:33岩の休憩場にはコキンレイカ(チシマキンレイカ)が盛り、ミヤマホツツジ・タカネマツムシソウが咲いている。さてこの先は御前坂の先登りになる。振り返って宝珠山を見ると、ぐんぐん高度が上がっていくのが実感できる。
 マルバシモツケ・ホツツジ・タカネサギソウ(盛)・チシマギキョウ・ウスユキソウ・シラネニンジン・コゴメグサを見ながら、駒形山を通る登山者よりも高くなっていく。
 10:22-34飯豊山三角点に到着すると、なんとイッチャン達と一緒に登った本間さんと会う。残念ながら、この前後の写真はカメラがマクロに固定されていたため全てピンボケで使い物にならなかった。
 御西小屋のIWUと交信し、御西小屋に向かう。登山道の両側はイイデリンドウ満開・コゴメグサ・シラネニンジン・マルバシモツケ・ヒナウスユキソウ・アキノキリンソウ・チシマギキョウと花々・・・。思ったとおり今年はニッコウキスゲの当たり年だ。
 10:47駒形山通過、標柱は風雪で芯以外は削り取られた状態で立っていた当然文字どころではない。ムカゴトラノオ・ハクサンシャクナゲ1輪・マルバシモツケ・アキノキリンソウ(多い)・オトギリソウが咲いている。
 10:55-59弘法清水は残雪の中に穴が空き、そこに湧水部が露出しているが、融雪水が入り少々濁っていた。また周囲の雪が薄いので注意が必要である。
 チングルマ・イワイチョウ・イワカガミ・ハクサンコザクラが咲いている。なお、弘法清水に向かう途中には登山者の大便が複数見られた。
 11:01玄山道分岐に戻る。ヨツバシオガマ(盛)・ハクサンボウフウ・クチバシシオガマ・ニッコウキスゲ(盛)コバイケイソウ・ミヤマリンドウ・ハクサンフウロが咲いているが、特に草月平のニッコウキスゲは見事である。登山者を入れて撮影したが、前述の理由でこの当りの写真は全滅・・・。
 11:33-13:29御西小屋でご馳走になりながら管理人のIWUと情報交換。ついつい2時間も滞在してしまった。特にトイレの悩みが多いとのことであった。例えば屋内トイレを使用後はトイレを出て脇にある棒を上下させて大便を送らなければならないが、殆どの人がしないため管理人が纏めてしている。それも一因となってバクテリアで処分できる容量を超えるため(最大の原因は利用者の人数を低く見込んでの設計)、定期的にトイレを閉鎖しなければならない。また冬期用の屋内トイレは既に容量を超えているために使用できない状態となっており、閉鎖している。内容物を汲み取って隣のタンクに移動させる必要があるが、登山者が荷物を置いたり腰を掛けている入口にマンホールがあるので、次々に登山者が来ている今は対応できない。仕方なく、別棟の古いトイレを使用してもらっているが、その内容物の処分にも苦慮している。なお別棟のトイレは数年前とは比較にならないほど清潔に清掃が行き届いていた。これもIWUの人柄だろうと感謝する。
 驚いたのは、私が屋内トイレを確認するため開けようとしたら開かない。ノックしても反応がなく、使用中ではない。IWUは「何時ものことです」とドライバーを持ってきてドアを開けた。トイレを使用する時に中から鍵を掛けるのは当たり前だが、鍵専用の突出部がないため、中で鍵を閉めて開錠しないまま外に出てドアを閉めると、自動的に施錠される仕組みになっている(開錠しなくても中からはドアが開く!)。その結果、誰かが利用した後、自動的に施錠されるので、次に利用しようとするとドアには赤く施錠されている表示が出てドアは開かない。それで誰かが入っていると思い込んで、延々と順番を待つことになる(管理人が気付いてドライバーで開けてやらない限り)。これは設計(施工?)ミスではないだろうか。
 御西小屋周辺の裸地はかなり回復しているが、登山道は年々侵食が進み、極めて深刻な様相を呈していた。
 御西小屋を後にして、ハクサンイチゲ・チングルマ・コバイケイソウを見ながら梅花皮小屋を目指す。
15:43天狗岳脇を通過する。御西小屋からここまでの間に2箇所ほど雪の上を歩いたが、全く問題ない。チングルマ・ハクサンボウホウ・コバイケイソウ・ハクサンフウロ・ミヤマアキノキリンソウ・ウサギキク等が咲いている。左手に大日岳が巨大に見えている。現在の主稜線上の登山道が出来る前に使用されていた旧道は、まだ雪に覆われている部分があり危険だ。
 14:12、15m位の雪を踏むが丁寧に歩けば問題はない。試みにストックの先端にゴムキャップを付けて雪の上を歩いてみたが、やはりこれはかなり恐ろしい。岩場や雪の上でゴムキャップをしたままストックを使用するのは止めるべきだと確信した。ハクサンコザクラ・シナノキンバイ・ミヤマキンポウゲが咲いている。
 14:25また10m位、雪の上を歩く。登り始めの所だけ草地を巻くが、他は問題ない、XXNから電話がある(登山前にムーバに切り替えておいた)。14:29雪の上、15m全く問題なし。
 14:32雪の上を10m位歩くが、梅花皮方面の末端で滑るとアウトなので、そこだけは充分注意すべきだ。14:36御手洗ノ池、この直前に雪の上を歩くが問題はなく、融雪水が取れる。
 14:48また雪の上、慎重に歩けば何とかなるが、ちょっと滑ればアウト。ここの部分が一番問題になるだろう。
14:56-15:06亮平ノ池で食事を取る。鞍部から新潟県側の斜面(お花畑)を登る。タカネツリガネニンジン・ヨツバシオガマ・クチバシシオガマ・ニッコウキスゲ・エゾイブキトラノオ・クルマユリ・ハクサンフウロ・イブキジャコウソウ・ウスユキソウ・ミヤマコウゾリナが咲いている。まだマツムシソウはほころび始め。
 尾根を山形県側に越える。花がコバイケイソウ・イワカガミ・ハクサンコザクラ・ハクサンイチゲに変わる。この辺だけコバイケイソウが多い。
 15:32クサイグラ尾根分岐、先日の遭難の雪は殆どない。シナノキンバイが凄い。遠くの黄色い花々はニッコウキスゲだろうかシナノキンバイだろうか?
 ウサギキク・ミヤマキンポウゲ・ヤマハハコ・イワオウギ・ヤマトウバナ・エゾイブキトラノオ・オタカラコウ・シロバナニガナが咲いている。今回の山行はブヨが全くいなくて、アカトンボに包まれた快適な山歩きである。
 15:40烏帽子岳山頂を通過する。そろそろ下山時刻が気になる。時間に余裕があれば門内小屋のNENに挨拶をして梶川尾根下山と考えていたが、そうはいかないようだ。
 所狭しとイイデリンドウが咲き、チシマギキョウも負けていない。ヤマハハコ・ヒナウスユキソウ・イワテトウキ・タカネアオヤギソウ・タカネナデシコ・ハクサンフウロ・ミヤマアキノキリンソウ・ミヤマキンポウゲ・クルマユリ・タカネツリガネニンジン・ミヤマコウゾリナ・シラネニンジン・マルバシモツケミヤマキンオウゲ・ウツボグサ・クルマユリと枚挙に暇がない。16:00梅花皮岳山頂を通過する。ペースがかなり遅くなっている。陽が傾き始めたようだ。
 16:14-38梅花皮小屋に到着すると、石転ビ沢を登ってきた田中さんとOTJが迎えてくれた。泊まって明日朝下ったらというお誘いを断ったら、OTJからあんまり飲むと危ないと缶ビール1本の制限を受けた。
 小屋下の雪渓は急で硬い。ズック靴では危険と判断し、雪渓脇を下って草付キノ台地に降り立つ。ここからは夏道となる。中ノ島(草付キ)途中で左の小沢を横断する。下を見ると、中ノ島(草付キ)と黒滝の間の雪渓が崩壊中である。登山者が1人北股沢出合付近を登っている。
枝沢に出て慎重に左岸の踏み跡を辿り、16:56-17:03黒滝の上でスパイク地下足袋に履き替える。先ほどの登山者もアイゼンを外しているようだが、彼は薄くなっている雪渓の先端まで上がってきた様子だ。
 スパイクを効かせて快適に雪渓を下る。17:18ホン石転ビ沢出合を通過する。ホン石転ビ沢は雪渓が続いており、左岸枝沢に雪はない。さらに降ると右岸から入る枝沢付近は雪渓がなくなりつつある。もう暫くは雪渓を歩けるが、程なく枝沢の河床を歩くことになる。
 雪渓から出て、踏み跡を進み、石転ビ沢を渡渉、さらに門内沢を渡渉し、17:42石転ビノ出合左岸に到着する。渡渉の時に足を少し濡らす。
 全体に水量が少なく感じられたので、梶川出合はそのまま膝上で沢を漕ぎ、18:07夏道に出る。18:17近大慰霊碑、18:24彦右衛門ノ平を通過し、18:48砂防ダムを通過する。温身平の十字路でOTJに無事下山したことを連絡し、19:13天狗平のゲートに帰着した。

今回のコース
登山道が残雪に埋もれていた箇所残雪

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