【2008年07月12-13日/日暮沢〜大朝日岳〜三方境〜日暮沢/井上邦彦調査】
なかなか寝付けないまま朝を迎えた。ザックに荷物をつけて車に乗り込む。白鷹町鮎茶屋でNIYと合流し、1台で日暮沢に向かう。
06:35日暮沢小屋に到着する。自宅から114.0kmである。出発準備をしている小屋番の遠藤さんと言葉を交わす。
出発の準備をしていると、金也さんが到着。同行することになり、06:35歩き出す。07:08林道終点の駐車場を通過してトラバースになる。07:11左に小沢への道があり水汲みができそうだ。07:16小沢を渡る。
07:22いよいよ登となる。今回は半袖に半ズボン、風が心地よい。高度をぐんぐん稼いで、07:39傾斜が緩くなる。08:00-12一息入れる。シャツはまだ絞れない。すぐ湿地が出て歩きにくい。
08:20左手に船窪地形があり、底にはまだ雪が残っている。花は終わったもののサラサドウダンの木が見事である。
08:23ハナヌキ峰山頂を通過し、08:43古寺鉱泉から登って来る登山道を合わせる。ずるずると登って行くと、ズダヤクシュやマイヅルソウが出てきた。排水路はずいぶん丁寧に整備されている。土嚢による補修個所も多いが、中には破損している物もある。
09:08三沢(サンザ)清水は大場さん達が引水をしてくれたとの情報を「朝日連峰の道案内」で入手していた。ここで顔を洗い、喉を潤す。
ここで金也さんといったん別れて先に行く。イワカガミ・マイズルソウ・ツマトリソウ・モミジカラマツ・ミツバオウレン・ヒメサユリ・ハクサンイチゲと花も多くなってきた。
09:43古寺山には団体さんがいらっしゃった。この前後のヒメサユリは盛りである。09:35僅かに雪を踏む。ノウゴウイチゴ・ハクサンシャクナゲ・ヒメサユリ・エチゴキジムシロ
カラマツソウ・マイズルソウ・タニウツギ・ハクサンフウロ・ナナカマド・アカモノが咲いている。
09:50分岐の標柱があり、ここから右のトラバース道へ進む。09:56二つ目の沢を通過し、10:00-14分岐で食事を取る。一度カッパ着るが暑いのですぐに脱ぐ。
ヒメサユリ・ニッコウキスゲ・タニウツギ・ガクウラジロヨウラク・ヤマトウバナ・カラマツソウ・ハクサンシャクナゲ・トリアシショウマが咲いているが、圧巻はやはりヒメサユリだろう。
10:48-55銀玉水は使用可能だが、どうも水場のデザインに抵抗を感じるのは私だけだろうか。その上の石段もまるで月山を歩いているような気分になる。石段の両側のネットからは植物の萌芽が殆んど見られないのは、シュロを使っていることも一因なのかもしれない等と考えながら登って行く。
10:58-11:00僅かな距離だが雪の上を歩く。やはり稜線が近くなってくると風が強くなって来る。ゴゼンタチバナ・マルバシモツケ・ヨツバシオガマ・ホソバヒナウスユキソウ・ムカゴトラノオ・コケモモが咲いている。
11:09「霊山朝日嶽神社奥宮」と書かれている石碑を通過する。昔の記憶では小屋の近くに祠?があったような気がする。神社の本殿が小屋の近くだとすると、それよりも下部に奥宮があるのは不思議に感じがするが、これには理由がある。
11:13-13:06大朝日小屋に到着する。今年も大場さんが元気で管理人をされていた。環境省グループは大朝日岳山頂に向かったらしい。こちらは視界がないことを理由に、既に山頂まで行ってきたという置賜森林管理署グループとのんびりしていると、環境省グループが戻ってきた。小屋の中にいると風の音が激しく、時間調整のため、仮眠を取る。
カッパを着、意を決っして外に出る。風はあるが雨はない。ムカゴトラノオ・オノエラン・チシマギキョウ・マルバシモツケ・ホソバヒナウスユキソウ・ヨツバシオガマ・マイヅルソウが咲いている。
13:12金玉水分岐を通過すると登山道は風下になるので暑くなる。ミツバオウレン・チングルマ・イワカガミ・アカモノ・モミジカラマツ・ハクサンチドリ・アオノツガザクラ・ヒナザクラ・ナナカマドが咲いている。
13:34距離はさほど出ないが残雪の斜面を横切る。イワカガミ・マイヅルソウ・ガクウラジロヨウラク・ハクサンシャクナゲ・ミネウスユキソウ(終)・ミヤマダイコンソウ(終)・ハクサンイチゲ・ウサギキク・ゴゼンタチバナ・オトギリソウ・ヒメサユリ・ツマトリソウ・タニウツギが咲いている。
13:48再度残雪を踏んで、13:47-15:46三方境の現場に到着する。既にニュージェックの川端さんや麻生先生が来ていた。
現場の状況を観察する。全員が集まったのは予定の14:30である。始めに川端さんが状況を説明し、各ポイントでどのような作業が適しているか意見を交換した。
現場は鞍部であり、西朝日岳方面から降りてくる登山道が水路となって石を運び、鞍部から東斜面に広く堆積したと考えられる。数箇所に埋設ゴミが確認されたが、これは過去に幕営がなされたことを明示しているし、幕営跡地と思われる場所があった。登山道の西側には数個の地糖があり、その内の1個は端の浸食が著しく崩壊の恐れが高い。また東斜面崩壊地の端には埋没した地糖も確認された。
対策としては、まず上部の登山道に2〜3箇所水路を作り、東斜面に水を分散する。水路を切削する時に出た笹や黒土を材料として、登山道西側の地糖がこれ以上崩壊しないように補強する。周辺でヒロハノコメススキの種を採取して蒔き、その上を緑化ネットで被覆することとした。
打ち合わせを終えて竜門小屋に向かうと、一気にガスが消え、現場の全容が眼下に広がり、大朝日岳がにこやかにほほ笑んでくれた。
16:05-12西朝日岳で休憩を取る。稜線にはまだサラサドウダンが咲いていた。また飯豊連峰であればイイデリンドウが分布している筈のやや乾燥した斜面には沢山のミヤマリンドウが花弁を開いてくれた。16:54竜門山分岐を通過し、ひと下りで遠藤さんのいる竜門小屋に降りた。その夜は・・・(書かない方が無難な気がする)・・・。
翌朝目が覚めると枕元にはまだビール・日本酒・焼酎が残っている。朝食のラーメンをつまみに何時もの癖で後始末に精を出す。
外に出ると快晴!06:35皆のあとを追いかけて出発。ハクサンフウロ・ミヤマキンポウゲ・ハクサンシャクナゲ等、大展望と花々を楽しみながら、08:34三方境の現場に到着する。三方境から眺める以東岳と狐穴小屋周辺の景観は雄大である。その一方、眼下の登山道に赤ペンキで×が描かれ、その先は深く浸食されている。
赤ペンキにしたがって左に巻きながら下る。新道の周辺も砂地が広がっている。花崗岩を持って力を入れたら簡単に崩れた。浸食を受けている場所は砂粒というより土に近い感じだ。
浸食部の東側を見ると、点在する裸地が砂礫に埋もれていた。近づいてみると、風上(西側)には表土が出ており、砂粒が風下に向けて盛り上がっている。さらにその砂粒が裸地の土手を越えて植物群落の中に入り込んでいた。
考えるに、極めて脆くなっている花崗岩が、踏圧などによって砂粒になり、流水によって西側斜面に広く分布し、これが冬期の強風によって浸食地を越えて東側斜面に散在しているものと思われた。浸食地に溜まった砂粒は流水によって容易に下流に搬出されるので残っていないのだろう。
これを抜本的に解決する方法は、「三方境(ピーク)から狐穴小屋に下るルートを東側に分布する笹原に付け替えること。その笹で浸食地に砂防ダムを構築し、流水をコントロールすること。砂粒の供給源になっている場所と浸食地の斜面を緑化ネットで覆い、砂粒の移動を防ぐと同時に植物の種子を蒔いて発芽を促し土壌の安定化を図ること」だろうと思えた。
しかし今年は試行作業であるため、大幅な巻き道は避けることとした。登山道は現在の新道を利用することとし、現場にある大きな石を組み合わせて砂防ダムを作り、浸食地の斜面を緑化ネットで覆うことにした。果たしてそれが可能か、試みに浸食地の一角をピッケルで掘り手頃な石を1個動かしてみた。驚いたことに浸食地の表面は土よりも掘りやすく、その下の岩盤もピッケルのピックで容易に削ることができた。
さて作業の課題として浮上したのは、@石組みができる職人の調達、A緑化ネットの調達である。
今回の打ち合わせにおいては小屋の利用など、志田さんに随分とお世話になった。さらに彼は緑化ネット2枚(重量制限でこれが限界だったとのこと)を小屋まで空輸しておいてくれたとのことであり、率直に頭が下がる。
ただ、昨日の鞍部と本日の箇所を実施するとなれば、さらに緑化ネットと土嚢を調達し荷上げする必要がある。これらの課題に現場では答えを出すことができなかった。これから関係者で協議を重ねていく必要があるだろう。
最後に皆で記念写真を撮り、大鳥池に向かうグループや狐穴の小屋番をするという志田さん達と別れ、10:40三方境を後にした。
NIY・金也さんと3人でのんびりと歩き、12:05竜門小屋に到着。こっそりと隠しておいた缶ビールで喉を潤し、日向でまったりと横になる。幸せなひと時である。
13:05竜門小屋発、13:18竜門山分岐、13:38ユウフンを通過し、14:53-04清太岩山と14:41-43ゴロビツ清水で休憩する。NIYのスピードについていくのも大変であるが、15:32何とか3人、無事に日暮沢小屋に到着した。
歩き始めると、モニタリング実施中の看板があった。 |
ヒラタケ |
古寺鉱泉との分岐に到着 |
こまめに排水路が整備されている |
土嚢は破損している物も見受けられた |
三沢(サンザ)清水で一息を入れる |
顔を洗って喉を潤す〜生き返る瞬間! |
ヒメサユリが出てきた |
ヒメサユリの群落 |
小朝日岳と熊越の分岐 |
ハクサンシャクナゲ |
ヒメサユリに囲まれたNIY |
銀玉水 |
ガクウラジロヨウラク |
まるで月山のような石畳 |
シュロは効果が少ないと聞いている |
ここは少し草が出ている |
霊山朝日嶽神社奥宮 |
大朝日小屋 |
アオノツガザクラ |
登山道が残雪に覆われていた |
山商山岳部遭難の地 |
ミネウスユキソウ |
ヒメサユリを横目に登る |
ウラジロヨウラクに見とれる |
ウラジロヨウラク(額片が著しく小さいのが特徴) |
ヒメサユリ |
西朝日岳南側鞍部の現地に集合 |
ニュージェックの川端さんから説明をいただく |
右手の登山道から流れてきた石に覆われ、まるで川原だ |
池糖の跡 |
埋設している塵等から幕営圧があったと推測できた |
地糖の端が浸食で風前の灯、早急な補強が必要だ |
ガリー浸食が始まっている、笹でダムを作るのがベストだろう |
全体的に緑化ネットで覆いたい |
この登山道は、左に水抜きを数箇所作る |
打ち合わせが終わる頃に全容が見えてきた |
大朝日岳と中岳 |
平岩山も見えた |
ミヤマリンドウ |
天候が回復してきた |
西朝日岳 |
ユーフンが見えれば小屋は近い |
竜門小屋に到着、この夜はここに宿泊 |
翌日は素晴らしい天候 |
小屋を後にして三方境に向かう |
寒江山にて |
大朝日岳の尖峰 |
大朝日拡大 |
飯豊連峰が見えた |
飯豊連峰が連なる |
北寒江山と以東岳 |
振り返る |
ハクサンシャクナゲ |
三方境に下る |
天狗方面と月山 |
月山 |
三方境に到着 |
三方境から見た狐穴小屋と以東岳 |
浸食地の確認が始まる |
付近は酷い状態となっている |
下から確認する |
この風化が進んだ岩(砂)が元凶だ |
登山道の風下側に砂溜まりが見られる |
よく観察すると風下側に堆積している |
右から吹いた風が砂を運んで植物を覆っている |
今回の参加者で記念撮影 |
ヒメサユリに見送られて帰途に着く |
マルバシモツケ |
左手の残雪下にあるのが竜門小屋竜門小屋だ |
北寒江山を越えて |
寒江山々頂のNIYと金也さん |
振り返る |
相模尾根 |
オノエラン |
竜門小屋に帰着 |
ニガナ2種 |
竜門小屋手前からの眺望 |
竜門山に登る |
ユウフンへの下り |
小朝日岳〜大朝日岳 |
以東岳方面 |
竜門山を振り返る |
清太岩山にて |
大朝日岳 |
ゴロビツ清水は細くなっていた |