登山者情報1173号

【2008年07月19日/石転ビ沢〜梶川尾根/井上邦彦調査】

 緑化ネットを梅花皮小屋まで荷上げし、帰りは梶川尾根で萌芽を見て来ようと、山岳会のメンバーにメールをしたところ、misima君が同行してくれるとの事であった。あまり早くてもと思い、05:30に登山届出所集合とした。
 登山届出所では役場のH君、山岳会の武田顧問、高橋会長が机を出して登山指導を行っていた。既に到着していたmisima君に緑化ネットをまるまる1枚渡す。
 見たことがある登山者と思ったらナベチャンだ、さっそく緑化ネットをプレゼント?流石に嫌なそぶりも見せずに協力してくれた。
 パッキングを済ませ、06:00歩き出す。06:17温身平十文字、06:27砂防ダムを通過する。下ツブテの高巻きから梅花皮沢を見下ろすと、何と雪渓の末端が見える。上ツブテ石はまだ雪渓から突き出ている。
 06:53-02うまい水で朝食とする。標識が壊れているので、そのうち直さなければならないだろう。彦右衛門ノ平を過ぎてヘツリ(婆マクレ)に入ろうとすると、眼下にはしっかりと雪渓が残っている。07:09踏み跡から雪渓に下る。上ツブテ石は下流で観察した通り頭だけ出ており、雪渓は真ん中が少し窪んでいるが端を歩けば問題はない。こんなに雪の多い年は記憶にないくらいだ。
 地竹原の雪渓もまだ安定している。滝沢入口は完全に開いており、周辺には木材が散乱している。梶川出合下左岸寄りが窪んでおり、少し嫌らしいので右岸沿いを通り、07:26梶川出合を通過する。梶川そのものには雪がない。
 梶川出合すぐ上の水場は出ているが、大岩が全く出ていない。もしかすると雪崩で大岩が動いたのかも知れない。梶川出合の流れが変わってくれると嬉しいのだが。
 2003年6月17日雪渓崩壊地の大岩が出ており、ここから赤滝までの間は雪渓が途切れている。07:34、2005年7月28日隆蔵君達と門内沢の遭難者を発見した場所から夏道に上がる。せっかく去年も直した赤滝のヘツリは一部が土砂崩れに覆われ、足場が不安定になっている。
 07:50-08:08石転ビノ出合で菅笠を被ったmattyannとN夫妻パーティを発見し、食事を兼ねてしばし歓談。右岸の小沢(水場)は露出していた。
 08:50-09:32ホン石転ビ沢対岸の水場で休憩する。misima君は宿泊の道具もあるので遅れ気味、mattyannパーティとほぼ同じペースである。
 10:05-55北股沢出合の清水が埋まっていたので、黒滝の脇に来て小沢で休憩をした。OTJから無線で北股沢に落ちそうな浮石があるので確認をしてくれとの依頼があったが、見たところ心配はなさそうだ。また全体的に、雪渓の上方に亀裂ができており、落石は途中で止まる可能性が高くなり、当面の危険はさほどでもないと感じた。
 ここからは左岸沿いに若干登り、中ノ島(草付キ)まで一気に左斜上する。中ノ島の下には数個の亀裂があったがまだ小さい。亀裂を利用して11:02中ノ島(草付キ)に上がる。
 皆はここでアイゼンを脱ぐが、スパイク地下足袋の私は気楽なものである。ショウジョウバカマ・ノウゴウイチゴ・ミヤマキンポウゲ・ハクサンボウフウ・トリアシショウマ・モミジカラマツが咲いているが、花は期待したほどではない。水場手前でナベチャンとスライドする。緑化ネットを小屋まで運んでくれたとのこと、感謝。
 中ノ島から小沢を横切り草付キノ台地に上がると梅花皮小屋が見える。ここから上の残雪は随分と少なくなっている。最後に覆いかぶさるような残雪を左から巻いて、11:43梅花皮小屋に到着した。
 ザックから緑化ネットを取り出し、替わりにお土産(塵)を詰める。mattyannパーティ全員が到着したところで、乾杯!私以外は皆、梅花皮小屋泊まりだ。
 12:40梅花皮小屋を一人で出発する。ニッコウキスゲ・ミヤマキンポウゲ・オヤマノエンドウ・チシマギキョウ・クルマユリ・ヒナウスユキソウ・ムカゴトラノオ・イワオウギ・ヨツバシオガマ・タカネアオヤギソウ・ミヤマキンポウゲ・イイデリンドウ?(開いていなかった)・ヤマトウバナ・イワイチョウ・イワカガミ・マイヅルソウ・アカモノ・ゴゼンタチバナ・ハクサンボウフウ・ハクサンチドリ・ウズラバハクサンチドリを見ながらガスがかかってきた中を登る。
 13:01北股岳山頂を通過、視界はない。マルバシモツケ・オタカラコウ・ハクサンシャクナゲが咲いている。この辺りの登山道は先ほどOTJが刈り払ったようだ。ハクセンナズナ・オトギリソウ・ミヤマコウゾリナ・エゾイブキトラノオ・ハクサンフウロ・チシマギキョウ・ミヤマダイコンソウ・ヨツバシオガマの群落・タカネアオヤギソウ・ヒナウスユキソウ・タカネツリガネニンジン(始)・オノエラン・ミヤマコウゾリナと花々に囲まれて進むが、今年は特にニッコウキスゲが素晴らしい。
 登山口で会ったY・Kさんとスライドする。しかし今日はやけに医療関係者が多い。これだけいれば多少のトラブルには対応できそうだ。13:41門内岳山頂を通過し、ヒメサユリを見て、13:42-(発時刻不明)門内小屋に到着する。
 管理人室をのぞくとLTQが一人で管理人の仕事をしていた。入り口にはハタノシャンが上げてくれた4kg2個の緑化ネットがあった。ツアー登山で朝日山岳会のsuzuki君が来ているとのことなので、本棟で聞くと水汲みに行ったと言う。ガイドさんは大変です。
 ガクウラジロヨウラク・ヤマトウバナ・タカネアオヤギソウが咲いているが、ヒメサユリとニッコウキスゲの競艶は見事だ。
緑化ネットを背負ったkagayaさんとスライドし、14:31扇ノ地神を通過する。チングルマとイワカガミのお花畑、キバナニガナ・ヒメサユリ・ゴゼンタチバナ・ミヤマコウゾリナ・シロバナニガナ・ニッコウキスゲ・ヤマトウバナ・ナナカマド・ヨツバシオガマ・ハクサンシャクナゲ・ハクサンボウフウ・アカモノ・イワイチョウが咲いている。
 14:45-55施工個所に到着する。最上部の排水路はしっかりと機能している。ガレ地を下ると2名の登山者が登って行った。ガレ地の石組はまだ慣れない時に作ったためか、壊れ始めている。
 傾斜のあるガレ地に張った緑化ネットには正直期待していなかったのだが、ここで発芽を見て驚く。緑化ネットの上に砂礫が積もっている所もあるが、基本的な部分で砂礫の移動を防ぐことができれば、発芽は可能と思われた。なお、土嚢袋(麻)を開いて置いた所では変化は認められなかった。
 次に期待を込めて、下の平坦地に張ったネットを確認する。流石にガレ地とはスケールが違う。ガレ地では単子葉植物1種類だけだったが、こちらには数種類の双子葉植物と単子葉植物が確認できた。特に筵を敷いた所(筵にはナイロン紐があるので、1回目の実験でのみ使用し、以後は使用していない)に沢山出ているようだが、ネットだけの所でも十分発芽している。
 15:00ケルンにはチシマギキョウ・ハクサンフウロ・ミヤマリンドウが咲いていた。何時もながら、今後はこの付近の浸食についても取り組む必要があると痛感した。
 15:08梶川峰を通過する。道脇の意思の上に見事な糞があった。ミヤマコウゾリナを見ながら、15:26三本カンバを通過する。だんだん暑くなる。15:38五郎清水を通過する、ここから下は道刈りがなされていた。
 15:59-16:10滝見場で石転ビ沢上部を観察する。若い男性3人組みと抜きつ抜かれつで下る。16:33-35湯沢峰で公園管理人の堅一さんに追い着く。道刈りの帰りとのことである。
 16:54楢ノ木曲リ、17:05岩場を通過する。今年もまた環境省の登山者数カウンターが設置されていた。
 17:10登山届出所に到着、置いてあった緑化ネットが少なくなっていたので補充し、天狗平ロッジに立ち寄る。PWDが幕営しやすいようにとロッジ周辺の草刈りをしていた。今日はQVH・QKGも周辺整備に来てくれたとのことである。管理人の高橋会長・武田顧問と打ち合わせをして帰宅した。

植生復元状況

天狗平の登山届出所前で入山指導
下ツブテ石の巻き道から見ると、ここが雪渓の末端だ!
「うまい水」の標識が壊れていた
うまい水は登山道下から湧いていた
うまい水から若干登って左に入る
彦右衛門の平を過ぎると雪渓が広がっていた
婆マクレから雪渓に降りて上ツブテ石を見る
上流はまだ安定した雪渓
地竹原
梶川出合、手前の窪みは左岸(上流から見る)沿いに進んだ
梶川出合上流水場の大岩が出ていない!
ここから左岸の登山道に入った
赤滝の夏道から雪渓を見下ろす
赤滝のトラバース
土砂が落ちてきて登山道を覆っていた
石転ビノ出合が見えた
石転ビノ出合に到着
石転ビ沢
右岸の水場が露出していた
石転ビ沢に入る
左mattyann、大きなザックはmisima
石転ビノ出合を見下ろす
まもなくホン石転ビ沢出合
ホン石転ビ沢
対岸の小沢の上流で休憩
休憩地から上部を仰ぐ
中ノ島(草付キ)と登山者
アイゼンを付けるmattyannグループ
黒滝は亀裂もない
OTJから連絡を受け、左岸の浮き石を探す
危ない所は見つからなかった
赤メットで登るmattyann
ガスが湧いてきた
と思ったら、視界が戻った
何時もの水場は埋まっていたので、黒滝脇の水場で休憩した
7月6日の遭難現場、雪渓はもう消えている
黒滝上の急傾斜、休むことは許されない(落石が集中する場所)
もう少しの頑張りだ
中ノ島(草付キ)に到着
安全な所でアイゼンを脱ぐN夫妻
お花畑は若干もの足りなかった
中ノ島(草付キ)上部のトラバースはすっかり雪が消えている
落石発生の巣、いまのところは大丈夫のようだ
最後の残雪
水場からみた梅花皮小屋

続く⇒