登山者情報1207号

【2008年11月09日/アザミ沢-町境-白布峰-五ノ又沢-今市集落/井上邦彦調査]】

 8日帰宅しても、山で紛失したカメラとGPSが気になる。天気予報は今晩・明日と降水量0mmが続いている。雨が降れば防水機能のない両者は使用不能になるのだろうが・・・諦めがつかないので、翌日捜索に行くことにした。ただ行くだけではつまらないので、そのまま県境を北上する計画とした。
 まだ暗いうちに林道を車で走らせると、ネコでもウサギでもない薄茶色の獣が先を走る。仔ギツネである。親キツネは何度か見たことがあるが仔ギツネは初めてである。キタキツネのぬいぐるみのように可愛らしさ満点である。
 05:45ヘッドライトを点けて歩き出す。既に薄明るくなっているのだが、手入れの良くない歩道は足場が見えないと危ない。突然、5m先の歩道から右下に大きな動物が動いた音がした。姿は見えなかったので正体は分からない。
 06:25-29分水嶺でメールを送信しライトを消す。昨日同様に尾根道を下り、06:54トチノキ沢合流点から牛股沢を下る。07:01-06アザミ沢合流点で食事を取る。アザミ沢に入って行くと、あちこちにいる岩魚が動き出す。浅瀬で2匹の岩魚が水しぶきをあげて暴れ、淵に逃げて行った。捕まえる気になれば簡単だが、この産卵時期は当然ながら禁漁な筈。
 足元から比較的大きな岩魚が石の下に潜った。深さは30cm位、防水カメラであることを思い出して、水にカメラを沈めて適当にシャッターを押してみたら、なんと岩名の姿が写っていた。これに味をしめ、数枚撮影してみた。
 07:27-30昨日高巻いた滝を再び右岸から巻く。比較的新しい鋸跡があった。アザミ沢合流点でセットした高度計と磁石・地図を確認し、昨日の足跡に気を配り入るべき沢を捜す。07:33右から沢が合流する。07:34さらに右から小沢が合流。07:36にも右から沢が合流する。どうもこの沢が怪しいが、もう少し遡ってみることにした。
 砂地にあった足跡は丸く、先に爪跡がはっきりしていた。これは私のものでない、明らかにクマの足跡である。周囲は廊下状でばったりあったら逃げ道はないし、今日も熊スプレーを持参していない。緊張する。さらに上流の土砂崩壊地に足跡はなかった。私が通っていれば必ず痕跡があるだろう。
 07:43沢の分岐に着く。高度計は予定の沢より高め、沢の方向も地形図とずれている。先ほどの沢が予定の沢であると判断し、右の沢に入りすぐ左岸に取りついた。07:47尾根上に出て、07:49眼下の沢へ降り立つ。若干進むと道形らしきものがあり、07:52スパイク跡を見つけた。これでルートが間違いないことを確信した。
 07:58標高550mで、磁石が示す方向に直登すると、08:06見覚えのある606m地点に出た。さっそく落としたと思われる斜面の反対側に移動し、手掛かりを探す。殆ど落葉しているので見落とすことはないと思うのだが見つからない。無線機を落とした溝に降りてそのまま五ノ又沢源流に出て、昨日ナメコを見つけた倒木まで登る。今度は高度を少しづつ変えて何度かトラバースして探すが、何もない。09:38まで探したが結局何も見つからず、諦めることとした。
 09:47標高580m五ノ又沢から尾根の直登を開始した。多少の藪はあるが、10:23高度800mさほど苦労せずに町境に到着する。メールが来ていたので、返信する。快適な獣道を辿っていると、道は左へトラバースし、尾根上は猛烈な藪になる。振り返ると昨日歩いた「テンモド岩」が望める。右手眼下に集落が見えた。川と道路の具合からすると長沢集落から北部小中学校だろう。また瘤のような突起は徳網山と思われた。
 10:50、842m峰山頂を通過する。ここで高度計を修正する。今日の目的地である白布が大きな姿を見せる。藪と獣道を交互し進む。右側のブナ林を詰め、藪をこぎで、11:44ピークに出たと思ったら、まだ先に山頂があった。藪が低く、両側は切り落ちて見晴らしも高度感も満点である。この狭い頂稜に獣道が続いている。
 11:52-12:00山頂に到着する。細長い山頂だか三角点が見つからない。猛禽類が飛んでいたので双眼鏡で眺めてみる。私の知識では自信がないがイヌワシのような気がした。携帯は圏外であるが、後日正確な場所を確認するために携帯電話のGPSを作動させた。少々時間を要したが「北緯38度8分59.610秒、東経139度41分25.889秒」と表示された。これはパソコンで確認したら紛れもなく山頂の位置であった。
 700mに至る大きな尾根の最上部には露岩記号があったので、その北の小尾根を下山ルートとした。ルートは急な斜面にある小尾根なので下降点を探すのに苦労する12:09恐らくこの辺りだろうと見当をつけて下り始めたが、GPSがないので慎重に下ることにした。藪で何も見えないが、右手に大きな尾根がある。左手はシラブ沢源頭の岩壁である。
 12:24少し右へ寄りすぎ、戻って修正、下方の視界がなければ動けない。両側は絶壁、僅かなルートミスが致命傷になる。810mでブナが出てきた。視界はないが尾根が少し広く傾斜も緩くなり一息着くが依然として藪漕ぎには変わりがない。12:38-13:01食事を取る。
 13:05小さなピークで尾根は右に曲がった。13:25右側斜面がブナ林になってきたので、650mで右の沢に下ることとし、13:28五ノ又沢に降り立った。沢は広く平坦で快適である。
 13:45右から地形図にある沢が合流する。13:53廊下状になり長靴では突破できそうもないので、右岸を巻いた。14:00淵となったのでまた右岸を巻き一度下るが先に滝があったので、すぐに右岸に登り、14:15そのまま地形図にある大きな沢の分岐に下った。
 地形図では左岸の分水嶺692m峰まで歩道がきている。しかし高度差があるので、沢分水嶺が最も接近している所までは沢を下ることにした。14:18左岸より沢が合流する。14:26左岸よりもう1本の沢が合流、ここがポイントであると判断する。ルートとしてはすぐ下流の小沢ではなく、ポイントの沢の左岸を直登し、最後は右斜上して歩道に出る作戦である。
 尾根を登りつめて14:45分水嶺に出るが道は痕跡もない、溜息・・・。諦めて藪漕ぎをして鞍部に下る。14:51登りになると道が出てきた。14:59道は左に下っている。この分なら30分もあれば県道に着くだろうと、迎え依頼のメールを送信する。
 右手の704mの双耳峰は岩壁がそそり立ち壮観な景観だ。さらに下るとブナの素敵な尾根道になる。この様子では30分では着かないと思い直し、メールを送ろうとするが送信できない。じっくりと楽しみたい雰囲気なのだが、ついつい急ぎ足となる。
 15:20ロープを伝って大沢川へ降り立ち、右岸に移る。15:26左岸へ渡り、15:29再び右岸へ戻るが、橋はない。予想と違って足元も注意が必要な箇所が時折出てくる。
 15:33杉林が出てきた。15:40民家跡と耕地放棄地を通過し、人家の間を通って15:48県道に出ると、正面は松崎へ行く橋のたもとの集落センターであった。

今回のコース
アザミ沢で悠然と泳ぐイワナを見かける (07:21)
カメラを水中に沈めて撮影、2匹がいる (07:21)
堂々とした顔つきである (07:22)
この滝は右岸から巻いた (07:26)
砂地に熊の足跡 (07:37)
沢の分岐、右に入った (07:41)
左の沢の状況 (07:42)
カメラトGPSを紛失した付近にて (09:45)
この尾根の鞍部が紛失現場 (10:06)
町境を北上する (10:30)
岩壁のある峰が「テンモド岩」 (10:42)
長沢集落と北部小中学校、突起は徳網山 (10:42)
842m峰を下ると樹間から白布峰が見えた (10:53)
左奥が白布峰 (10:58)
842m峰を振り返る (10:59)
何の糞?赤い実はナナカマド (11:22)
分水嶺方面を見下ろす、僅かに町中心部が見えた (11:31)
目前の瘤が白布峰山頂である (11:42)
奥の山は何処だろう? (11:42)
940m峰 (11:42)
通ってきた町境 (11:42)
白沢方面 (12:00)
頭巾山 (12:01)
679m峰 (12:02)
またしても大量の糞 (12:05)
急な小尾根を下る (12:20)
ようやくブナが見えてきた、940m峰を仰ぐ (12:20)
五ノ又沢に降り立つ (13:31)
右岸から沢が合流する (13:44)
全体としては穏やかな渓相 (13:47)
廊下になる (13:52)
この程度ならそのまま長靴で歩ける (13:56)
この先は滝!右岸に逃げる (13:58)
滝を下から眺める (14:07)
正面の尾根を下ってきた (14:16)
カワガラスが見えますか? (14:20)
この沢の左岸から分水嶺に取りついた (14:26)
歩道から見た557m峰 (15:12)
こちらは704m峰 (15:13)
耕作放棄地で出た (15:40)
県道に到着! (15:48)