登山者情報1,226号

【2009年03月08日/西俣尾根〜頼母木小屋/井上邦彦調査】

 先週は所要で山に行けなかった。3月にもなったので、稜線の様子を知りたいと思っていたところに、ハイジから連絡があり、頼母木小屋まで往復することになった。
 以前、長者原の猟師が胎内川に越える時、頼母木山の北を横断したと聞いていたので、今回はこのコースを確認してみたいと考えた。またこのコースで横断する尾根は、遭難者から無線で救助要請があったにも関わらず、悪天候のため出動を見合わせ、その後に遺体となった彼を発見した、私にとっては生涯忘れることのできない場所でもある。
 05:39川入荘の駐車場に車を置き歩き出す。奥川入から若干進んだ所でカンジキを履く。雪は想像以上に少なく、コース尾根手前の沢の滝が露出していた。柴の出ている斜面を斜めに登り、06:13岩場下で尾根に上がり、カッパを脱ぐ。いきなり全層雪崩の轟音が歓迎してくれた。
 06:38-45大曲で主尾根に出る。ここで軽く食事を取る。雪は硬く古いトレースがあった。07:13十文字を通過する。新雪の量はさほどでなく順調に高度を上げていく。一面にムササビの足跡が散乱している。
 07:35-49(850m)急登を控えてクランポンに履き替える。08:13-19西俣ノ峰山頂、杁差岳は雲の切れ目から姿を見せてくれた。途中嫌らしい所もあったがクランポンを効かせてストックのまま進む。それにしても雪庇は例年よりかなり小さく感じられる。
 09:09-19枯松峰で頼母木山を見上げる。大ドミから登った所より樹木は霧氷に覆われる。2本の本の大きなダケカンバと再会すると、嬉しくなる。10:20森林限界を通過し三匹穴の雪原に上がる。
 今回はデフ棒を5本持参した。先ずは三匹穴の中央部と登り口に1本を刺す。ここから尾根の左側を斜上して、ダルミにも1本刺す。うまく行けばここに戻って来れる筈である。
 視界がなくなってきた。騙し峰を左から巻くように斜上して鞍部に到着する。本来ならここにもデフ棒を差す所であるが、帰路は別コースを予定しているので1本をザックに残したまま進む。この辺りは平坦で方向が分からなくなるが、頭中の地図に従うと、雪面に笹葉などが数m先に見えるので、高い所のものを目印にして進む。
 11:20頼母木山々頂に到着する。風は予想通りさほどではない。標柱で記念写真を撮って、稜線の夏道を辿り北に下る。すぐに道はなくなり、ホワイトアウト状態になるが、風が左から来ているので方向が分かるし、左に寄り過ぎれば潅木が出てくるのでルートの見当は着く。
 突然、7m程前方に、白顔の黄色い動物が出てきた。瞬間、見つめ合った後、テンは潅木に下っていった。そう言えば、最近はウサギよりもテンの足跡を見かけることが多くなったような気がする。
 11:40-12:59頼母木小屋の夏入口は、上端と下端に鍵があり、中間にノブがあります。底まで掘る気で取り組んだのですが、何と鍵が掛かっておらず、若干掘った段階で開けることが出来ました。小屋の中に入り、中から底まで雪を掘り出しました。すぐに埋まると思いますが、硬い雪は取り除いたので次回は簡単に掘れると思います。なお帰る時は上端の鍵だけを掛けて(横に回すだけ)来ました。
 小屋の中で暖かい豚汁を作り、ささやかに乾杯!。外に出ると、何と視界は開けています。地神山・二王子岳・鉾立峰・杁差岳・光兎山・二ツ峰・・・
 出発前に地形図を頭に叩き込み、ピッケルを持ち、小屋から僅かに登った所から千代吉沢に下る。確か前回は、風を避けてこのまま沢を詰めて、山頂直下の鞍部を越えたと思いますが、今回はそのまま水平に尾根を横断する。昔の様々な記憶が胸を横切る。これまで幾度となく遭難救助に関わってきたが、これほど切ない判断をしたことはない。
 13:27登る時に刺した最後のデフ棒に合流。後は展望を楽しみながらひたすら下る。13:50-55オオドミで1枚脱ぐ。14:18枯松峰、15:00-18西俣峰を通過する。
 今日は誰かここまで登ってくるかと思ったが誰もいなかったようだ。雪が腐り、坪足となる。サルの足跡が散乱、木から飛び降りた跡もあり、2頭が姿を現した。
 15:40十文字を通過する。所々膝や腰まで潜り、散々な目にあいながら、16:00大曲を通過し、最後は尻セード。16:38奥川入着。

今回のコース
登りは頼母木山々頂、降りは千代吉沢を横断しました
これから出発です
岩場を登ります
主尾根に出るとウサギダナイが見えました
こちらは倉手山です
十文字ノ池直下から振り返ります
西俣ノ峰です
飯豊山方面
十文字ノ池を振り返ります
枯松山
山頂直下から頼母木山を遠望
西俣ノ峰山頂
杁差岳も迎えてくれました
飯豊山
同じく飯豊山
稜線には雲が掛かっています
杁差岳もチラリズム
西俣西俣ノ峰を振り返る
大雪原にて 雲がなかなか取れない
それでも杁差小屋が確認できた
枯松峰山頂にて
木立の間から見る杁差岳
枯松峰を見下ろす
三匹穴
森林限界手前から霧氷が着いていました
飯豊山とダケカンバ
飯豊山を背景に
次第に高度を上げていきます
気温が低くなってきました
三匹穴を振り返る
急斜面のトラバース
頼母木山々頂!

続く⇒