登山者情報1,266号の1

【2009年07月23-26日/梶川尾根〜川入/井上邦彦調査】

西田省三氏

 今回の山行は、来年に発行予定「岳人別冊2010」の取材である。京都の女性2人とカメラマンの西田省三さん、私の4名で梶川尾根から川入に縦走を行った。
【7月23日】
 05:10米沢駅で合流し、07:08天狗平を出発する。07:48-02楢の木曲り、08:58湯沢峰を通過し、09:07-32暑さを避けて鞍部のブナ林で休憩を取る。オオコメツツジ・ツルアリドウシが咲いている。
 10:09-27滝見場で石転ビ沢を仰ぐ。中ノ島(草付キ)最上部の雪はごく僅かになっている。梅花皮小屋のOTJによれば、既に黒滝から上は夏道を辿って中ノ島(草付キ)に取りつくとのことである(石転ビノ出合は門内沢を渡渉し、さらに石転ビ沢を渡渉する)。
 11:08-37五郎清水は一番奥の湧水を頭から被る。痺れるような冷たさである。12:11三本カンバは雲の中で視界がない。ミヤマクルマバナ・白と黄のニガナ・トリアシショウマ・ノリウツギ・ミヤマコウゾリナ・オオバユキザサが咲いている。
 12:39-57梶川峰で一息を入れ、13:15ケルンまで進むと、ウサギギク・ハクサンフウロ・オンタデ・クルマユリ・チシマギキョウ・コゴメグサが咲き、さらに進むとニッコウキスゲ・ヨツバシオガマ・・ミヤマリンドウ・ハクサンボウフウイワカガミ・チングルマが出てくる。ヒメサユリはもう終わりである。
 緑化ネット施工個所で発芽の様子を確認する。7月5日とは格段の違いである。下のネットには単子葉植物が薄いもののほぼ全面に見られ、上のネットには双子葉植物が見られた。ここから先は、チングルマ・ミヤマアキノキリンソウ・コバイケイソウ・白ニガナ・キンコウカ・コゴメグサ(盛)・ゴゼンタチバナ・ミヤマホツツジが咲いていた。
 13:58扇ノ地紙にはまだ広場の脇に雪が残っていた。バイカオウレン・アオノツガザクラ・イワカガミ・ハクサンコザクラ・ヨツバシオガマ・ニッコウキスゲ・ヒメサユリ・エゾイブキトラノオ・ミヤマホツツジ・ハクサンフウロ・マルバシモツケ・クルマユリ・タカネヨモギ・ヤマハハコ・イワオウギ・クチバシシオガマを見ながら、14:30門内小屋に到着した。
 その後、視界が開けてきたので、門内岳まで散歩に行き、初日が終了した。私は管理人の金子さんと情報交換。小屋の管理は課題山積である。
【7月24日】
 通常の山行であれば問題のない天候であるが、取材山行となれば視界が大事である。また光の量がポイントということで、06:23門内小屋を出発する。
 オノエラン・イイデリンドウ・チシマギキョウ・マルバシモツケ・ニッコウキスゲ・クチバシシオガマ・ハクサンフウロを見ながら進むが、残念ながらイイデリンドウは蕾を閉じたままである。西田さんはカメラを濡れないようにしながら、ガスの合間を縫って撮影する。杁差岳は姿を見せるのに、南は雲に覆われている。御西小屋では風雨のため登山者が停滞しているとのことである。
 07:18北股岳山頂も視界はないまま通過する。07:44-08:28梅花皮小屋で一休みして、南に向かう。梅花皮小屋の周辺には、チシマギキョウ・ホソバヒナウスユキソウ・ニッコウキスゲ・クルマユリ・タカネナデシコ・マルバシモツケ・ヨツバシオガマ・エゾイブキトラノオ・ミヤマホツツジ・タカネサギソウ・シラネニンジン・イワオウギ・ミヤマシシウド・ハクサンフウロ・ハハコグサ・ハクサンシャクナゲ・キバナニガナ等が咲き競っている。
 08:54梅花皮岳山頂を通過し、僅かに下った08:57登山道が残雪に覆われていた。ショウジョウバカマ・イワカガミ・ミヤマキンポウゲ・イワイチョウ・ハクサンコザクラ・アオノツガザクラ・コバイケイソウ・ハクサンボウフウ・ムカゴトラノオ・ニッコウキスゲ・ヨツバシオガマ・ホソバヒナウスユキソウを見ながら歩を進める。
 09:17烏帽子岳山頂を通過する。依然として御西小屋周辺は荒天とのことだが、亮平ノ池の先まで見通しがきいた。クサイグラ尾根分岐手前のお花畑は、ニッコウキスゲ(盛)・シナノキンバイ・ハクサンボウフウ・イワオウギ・ミヤマキンポウゲが咲いているが、ガスが思うように流れず、撮影に苦労する。
 稜線の西側に出ると風があるが、さほどではない。最低鞍部で残雪を踏み、09:59-17亮平ノ池で休憩を取る。この先、ハクサンコザクラ・シラネアオイを始め様々な花が咲いていたが、記録を取らないでしまった。
 いよいよ縦走の核心部に入る。登山道は頻繁に残雪で覆われており、残雪の縁は半透明に氷化している。滑ったら一巻の終わりである。昨年7月28日の滑落死亡事故(御西小屋から梅花皮小屋を目指していた3人パーティが天狗ノ庭を通り過ぎて暫く行った所、登山道が残雪で覆われていた個所で1名が滑落。翌日遺体となって収容された)を思い出す。残雪の手前で草付の急斜面を登って、残雪の上に出る。雪は全体に硬くなっているので、慣れていないと滑って歩けなくなる。ストックでは雪に刺さらない、勿論ゴムキャップをしたストックの使用は論外である。
 左に下る踏み跡が2本あり、上に登る踏み跡が探しにくい場所に、竹で印が付けられていた。梅花皮小屋管理人であるOTJの仕業である。
 右の熱変成を受けた岩を登り、沢状の窪地を進み、10:42御手洗ノ池を通過する。すぐ残雪の上を歩く。またしても残雪と登山道を交互に歩く。飯豊連峰の主稜は典型的な非対称山稜であり、西側は傾斜が緩いが雪庇の発達する(雪が遅くまで残る)東側は急斜面となっている。登山道は急斜面を横切って作られている。これはピッケルを持つのが常識と考えていた先人達が、潅木の藪を嫌ったからである。
 足元が危険と判断した個所で、ピッケルを出し、筆者は滑落に備えて下で待機し通過した。
 稜線に出て、11:17天狗ノ庭の標柱に到着した。ここで筆者は施工個所に降りてモニタリングを行う。昨年貼ったネットは剥がれることもなく貼り付いて土砂の移動を停止させている。土嚢や流速のコントロールも機能している。一昨年のネットは既に植物の発芽が始まっていた。
 天狗ノ庭から天狗岳直下までも以前は東側に登山道があり、ここは大変に急峻で初心者を同行した時は緊張したものであるが、今は頂稜にルートを変更している。
 若干雪を踏み11:56天狗岳で小休止、視界はない。さらにもう一度残雪の上を歩き、保全施工個所を登ると、12:20御西小屋に到着した。小屋にはWKBがおり、水も汲んで来てくれていた。
 管理人のIWUに聞くと、水洗トイレが壊れて大修理が必要とのこと、外のトイレを使っていた。
【7月25日】
 予報はかんばしくなかったが、今日はお花畑の核心部であり、何としても晴れて欲しいと願っていた。すると、奇跡的と言うか、日本海が見えた!磐梯山や三国小屋も見えている。
 ダイグラ尾根の道刈りに向かうWKBを見送り、先ずは保全箇所の撮影を行う。ここは石組による流速コントロールを始めて試みた場所である。さらに緑化ネットで土砂の移動を抑制し、発芽を促したのである。効果のほどを見ていると嬉しくなってくる。
 07:27御西小屋を出発する。大日岳はなかなか全貌を見せてくれない。登山道の下には池塘が散在しているが、砂が入っている所も多いようだ。将来はこの辺りも何とかしたいと思う。
 コバイケイソウ・ハクサンボウフウ・ミヤマキンポウゲ・エゾシオガマ・チングルマ・アオノツガザクラ・イワカガミ・マルバキンレイカ・コゴメグサ・ムカゴトラノオ・クチバシシオガマ・キバナニガナ・ミヤマホツツジ・イイデリンドウ・ミヤマコウゾリナの咲く登山道を進む。
 期待の草月平に着くと、ニッコウキスゲが一面に乱舞していた。今回の取材はここがメインである。飯豊山がガスの中から現れるまでひたすらに待つ。そして撮影会が始まった。イイデリンドウも花弁を広げる。可憐なコゴメグサ・・・
 08:49玄山道分岐でピンクのテープを結んだ集団とスライドする。飯豊の集いの一行である。弘法清水は雪に埋もれているように見えたので近づかなかったが、WKBによれば露出していたとのことである。
 乾性のお花畑には、チシマギキョウ・ホソバヒナウスユキソウ・オヤマノエンドウ・ムカゴトナノオ・イイデリンドウ等が咲き乱れる。
 09:38飯豊山々頂で、ガスが晴れるまで待つが、なかなかうまくいかない。そのうちに飯豊の集いを案内している片岡さん達がやってきた。山頂周辺のハクサンシャクナゲは何故か赤味が強い気がする。
 本山小屋で管理人の高橋さんと情報交換をする。一ノ王子の分岐から左に下ると、水場は全て露出していた。ただ水場までの道の浸食が深くなっているのが気になった。
 御前坂上部には緑色の細いロープを這わせていた。登山道の誘導のようである。ミヤマハタザオ・イワテトウキを見ながら御秘所に下る。チシマキンレイカ・タカネマツムシソウ・ムカゴトラノオ・クルマユリ・ヨツバシオガマ・タカネアオヤギソウ・ダイモンジソウ・ミヤマシャジン等が咲いている。道脇で「寛永通宝」を見つける。
 御秘所では岩の上に立って雲が動くまで待つ。モデルもカメラマンも楽ではない。鞍部の裸地で観察すると、砂は水に流された跡があり、周氷河地形ではなく登山道の影響のようだ。
 ようやく大日岳も頭を出す。御幣松尾根を登っているWZL・XVYと交信する。惣十郎清水は残雪がすくなくなった。一服平から大日岳山頂まではAXLにより綺麗に刈り払われているとのことであった。
 13:09草履塚にはマルバダケブキが咲いていた。下る途中、登山道脇に水が湧いていた。20m程度残雪の上を歩き、稜線の裸地に出る。ミヤマアキノキリンソウ・タカネマツムシソウ等が咲いている。
 13:45-07切合小屋で佐藤さんからお茶と自家製梅漬けをご馳走になりながら情報交換をする。
 大日杉小屋から来る登山道は、分岐手前の沢が残雪で覆われており、残雪を巻く様に踏み跡が確認できた。一方、御沢は下部の河床が露出し、既に通行はできない状態だ。
 分岐の施工個所を確認する。旧道に草が生え始めているが、もう少しメンテナンスが必要に思えた。ガクウラジロヨウラク・アカモノ・ハクサンコザクラが咲く中を進み、途中で乾杯用ビールを冷やす雪を取り、14:41種蒔山標柱を通過する。
 15:32三国小屋に到着し、ザックに水筒を入れて水場に向かう。水場分岐のペンキは下からしか見えないので下る時は見落とさないようにしたい。降り口は崩れた浮き石が積み重なっており、恐ろしい。これでも管理人の大関さんがかなり整備したとのことである。水場直前の岩場にトラロープがあるが、ここは滑りそうである。水筒を手に持って汲みに行くような場所ではない。雨が続いたせいか、水はホースから勢いよく出ていた。
 小屋に戻ると、御前坂でスライドしたアベヒロさんが戻ってきた。大関さんも加え暫し外で歓談していると、雨がパラついて来た。その夜は道刈りしながら登って来た平野さんも加え、最後の夜にふさわしい情報交換の場となった。
【7月26日】
 昨夜の強い雨も上がり、07:09三国小屋を出発する。剣ヶ峰で岩場を下る様子を撮影すると、心は既に下界に飛んでいる。
 08:11地蔵山々頂を左に分け、08:20水場で喉を潤す。以前は水場の上を登山道が通っていたため、水を汲んでいる人に落石が当たったこともあるが、今の登山道は水場の下を通るように変えられた。
 降るに従って暑くなる。下十五里でオレンジ色のペアルック!登ってきたMDE&ebijyunnさんとばったり!
 19日も感じたことであるが、新しく作った丸太階段への道が分かりにくいことこの上なしである。そのうちに何とかすると思うが、下りの方は十分に注意して欲しい。
 10:40御沢に到着。登山道の入り口に登山者数カウンターが設置してあった。林道を歩いて、10:52川入キャンプ場に到着。後は置いてあった車で飯豊の湯に直行した。

滝見場から石転ビ沢を遠望する
石転ビ沢上部
五郎清水に降る
美味しい湧水を堪能しました
トットバノカッチ
梶川峰の忘れ物
前回補修した個所
緑化ネットの芽が大きくなっていました
前回は見られなかったムシロにも発芽しています
愛おしくなります
感激です
元気に育って欲しいものです
周辺にはチングルマが咲いていました
門内小屋手前
クルマユリ
門内小屋にて、今夜のご馳走は?
夕方に晴れたので、門内岳まで遊びに行きました
ハヤブサでしょうか?
明日の好天に期待します
二ツ峰

続く⇒