登山者情報1,286号

【2009年10月03-04日/弥生-飯豊山-御幣松尾根-弥生(玄山道分岐周辺保全事業)/井上邦彦調査】

 今回の山行は、幾つかの目的と不安を抱えていた。目的は環境省が「飯豊地区登山道植生復元等整備工事」として発注した「玄山道分岐周辺保全事業」の確認、以前実施した御西小屋周辺保全事業」のモニタリング、弥生口から三国岳に至る登山道の状況及び御幣松尾根の状況確認である。不安は同行者が道のない御幣松尾根末端から鏡山までの間を歩きとおせるか、10日ほど前から痛みのある左足が耐えられるかである。
 03:40自宅発、05:00道の駅田沢集合としていたが、二人とも若干早目に到着した。ここで車をデポし、山都に向かう。さらに国道459号を通り、弥生集落に到着する。前日佐久間さんに確認しておいた通りゲートは開いていた。道は次第に荒れてくる。底の低い車では厳しいだろう。
 林道の終点で車をUターンさせ、タイヤに石を噛ませる。駐車場は広くない。手前のスペースを入れても数台が限界だろう。
 06:47歩きだす。木橋を過ぎた所で左の沢に入る道もあるので留意したい。若干登ると広い尾根に広く刈り払われた登山道となる。
 07:10弥平四郎から四ツ沢を経由してくる登山道と合流する。さらに進むと、07:20清水の看板があり、手前に左の小沢に下る道がある。07:36小ピーク、御鏡雪が見えた。また樹間から虹も見えた。
 08:15-33鏡山々頂に到着すると、大展望と虹が出迎えてくれた。天候は期待していなかっただけに喜ぶ。その後は視界がなくなったが、登山道を囲む紅葉に包まれながら先に進む。
 09:00上ノ越の標柱で八ツ小屋尾根を登ってくる登山道を合わせる。09:23-33休憩を取る。黙々と高度を上げて、10:02巻岩山を通過する。10:17疣岩分岐で松平峠経由の登山道を合わせる。10:23獅子沼分岐の標識、獅子沼に向かう道に枝が置かれていた。
 10:29-35疣岩山々頂に三角点はあるが標識はない。浅草から先は高木がない、灌木がガスの中で艶やかに紅葉している。大白布分岐の標柱は文字が読めない状態になっている。
 11:05-34三国小屋でお湯を沸かし食事を摂っていると、山都の小林さん達が登って来た。小林さんから亮ちゃんが巨大なザックを背負って本山小屋に向かったとの情報を得る。皆さんはここから下山とのこと、私達は先に向かうが、この小屋で一緒になったパーティと抜きつ抜かれつ本山小屋までご一緒することとなった。
 12:07七森の標柱、12:25種蒔の標柱を通過する。12:36種蒔山分かれで右に折れ、12:37切合小屋水源の小沢で水を汲み、12:42分岐に戻る。
 12:44-58切合小屋で休憩。草履塚を登っている途中で、ガスが僅かに切れ始めた。13:30草履塚山頂を通過、KEBのペースが落ちてきた(後で聞くとシャリバテだった)。13:46御秘所を通過し、御前坂を登っている途中、急速に視界が広がって来た。カメラを持つ手が動き始める。KEBも撮影に夢中になっている。
 14:38一ノ王子分岐から水場に向かうと、ブロッケンが出現した。水は細く面倒なのでコップで水筒を満たした。14:54分岐に戻り、13:04本山小屋に到着!kennroku・MH・亮・一交・内木さんが迎えてくれた。
 予定では本日、保全作業の資材が空輸されてくる予定であるが、これまで視界がなかったので半分諦めていた様子だ。でも視界が急速に回復し風も収まった。
 15:45ヘリの音が聞こえたが、タイミングが悪くガスがかかり、戻ってしまった。ヘリがいなくなると再び視界が回復する。
 16:16再度ヘリが飛んできたが、なかなか着陸しない、各ポイントの様子を確認しているようだ。16:23ようやく着地、川端さんとシミケンさん達が降りてきた。さらにも一度作業員の方々を運び、一週間分の食料を小屋の脇に下ろす。フライト制限時刻が迫ってくる中、最後は玄山道分岐に資材を搬入し今日の予定は無事終了した。
 その晩は、全員で保全事業の成功を祈って乾杯!となったのは言うまでもない。
 明けて4日、山での作業時刻は下界と異なり早い行動となった(といっても登山者よりは遅めだが)。天候もまずまずである。
 06:37皆から若干遅れて本山小屋を出発する。06:50-54飯豊山々頂で記念撮影、見渡す展望を楽しむ。07:07駒形山々頂を通過する。ここから下る途中で左折する箇所の標柱が朽ち始めた。視界のない時はザレ場を直進してしまうパーティがいるので注意したい。
 07:15-08:23玄山道分岐で保全作業に関わる。麻袋を二つ縫い合わせ、丸太2本を通した石の搬送具には感心した。この方法は今後も使えそうだ。
 最初に登山道から流れ出している深い溝に取り組む。石ダムをA型とB型に分類し、設置する場所を指定する。要はアーチ型とロックフィル型のようだ。アーチ型の作業が始まるが、なかなかうまく行かない。
 そこで作業経験のあるシミケン・亮・HZUで一個作ってみることにした。両側を掘りこみ力石を据える。真中に大きな石を当てようとしたが、もったいないということと、真中は両脇より低くすることから数個の石を組み合わせて作成した。これを基に川端さんが説明すると、さすがに造園家の方々である、要領を体得したようである。
 どうも彼らは各種の規制が厳しい高山帯(国立公園特別保護地区)では、何処までが許される行為なのかに戸惑っていたようである。
 弘法清水で水を補給し、現場を後にする。大日岳に雲がかかって来たが、秋の稜線を満喫しながら進む。
 08:57-09:08御西小屋で施工状況を確認する。石ダムや排水路はしっかりしている。流れてきた草が石ダムに堰き止められたようで、大きく育っている。また緑化ネットを貼りつけた場所の芽が初夏とは比べ物にならないほど元気に根付いている。嬉しさが込み上げてくる。
 大日岳に向かう。チングルマの赤が棚田の畔のようだ。09:31文平ノ池の標識は倒れたままだ。登るにつれて大日岳にかかる雲が消えて行く。至高の眺めを満喫しながら、10:22大日岳山頂に立つ。
 風を避けて10:30-55若干下った惣十郎清水で休憩とする。ここは清水ではなく融雪水使用であり、当然ながら水はない。
 実川側の急斜面を慎重に下る。途中で御手洗ノ池と似た黒い地層があった。やはり熱水変質を受けているのだろう。
 11:16最低鞍部を通過し、僅かに進むと「牛ヶ首」の標識が置かれている。さらに登ると登山道の真ん中にウサギが横たわっていた。まだ死後それほど経ってはいない。目立つ外傷はないが数箇所に爪の痕があり、猛禽類に襲われたものと思われた。「このままでは可哀想だからせめて道の脇に」と言うKEBに対し、「猛禽類にとってはむしろこのままの方が発見しやすいし滑空しながらの搬送も容易だろう」とそのまま放置することにした。仮に猛禽類が処理しなくても、様々な動物達の良い餌となって命が引き継がれることだろう。
 11:40一つ目のピークを越える。さらに岩のある小峰を幾つか越えて、11:58標柱のある牛首山々頂に到着する。標柱は朽ちて文字が読めない。
 ここでばったりハタノさんと会う。御幣松尾根の主とも言うべきハタノさんは、今週も日帰りで大日岳往復とのことである。
 12:30早川ノ突キ上ゲからはぐんぐん高度を下げて、12:56一服平を通過する。その後はロープが何か所にもわたって設置されている。急な下りが連続する。
 いいかげんいやになった頃、13:38-53月心清水に到着。ここで腹ごしらえをする。川を隔てて望む鏡山は、登り返すと思うとうんざりする。
 月心清水から登山道は樹林帯となり傾斜がやや落ちてくる。やがて河岸段丘の見事なブナ林に到着し、尾根の末端に向かう。アシ沢と本流の間の細い尾根を下って行く。
 14:43登山道と分かれて、踏み跡を辿りまっすぐに尾根を下降する。沢に出た所で左の上流に向かうと、取水口の溜水域上限になり、瀬となる。
 ポイントを定めて瀬を渡るが、苔で滑りやすい。対岸で身支度を整えるが、KEBは靴を濡らしてしまった。
 15:15適当な崖を選び、両手で灌木を握り登り始める。すぐに河岸段丘に上がる。コンパスで方角を確認しながら、南にある沢を渡り尾根を忠実に登ると、明らかな踏み跡が見つかった。所々には鉈目もある。16:19-25休憩を取る。GPSで高度を確認し少々焦りを感じるが、濡れた登山靴で藪を登るKEBは疲れ始めたようである。
 踏み跡は次第におぼろげになってくる。17:20-31休憩を取る。陽は沈み次第に暗くなってくるが、ライトを付けると眼前の葉が光りルートが分からないので、我慢をする。
 17:57ついに行動不能と判断しヘッドライトを点ける。がむしゃらに登るだけであるが、二人ともうっかりタラノキを掴んで飛び上がる。
 18:21ひょっこりと登山道に出た。場所は東経139度41分55秒、北緯37度47分22秒。ちょうど鏡山南東標高1,190mの巻き道であった。
 登山道に出ると、道のありがたさがしみじみと分かる。一服平で自宅に遅くなる旨のメールを入れていたが(月心清水でも3本であった)、ここでもメールを送る。
 KEBのライトの電池がなくなりかけていたのでライトを交換し、19:04分岐を通過、19:24ようやく駐車場に到着した。
 ここからは順調に帰宅する筈であったが、車を走らせてまもなく左前輪がパンク!悪路を走っているうちに、岩の角にタイヤが触れたようである。
 開き直り、ヘッドライトを点けてタイヤを交換する。あとは宮古地内で工事のため入り組んだ回り道に四苦八苦し、無事に田沢に到着し、解散とした。

今回のコース(全体)
御幣松尾根末端〜鏡山
弥生口駐車場
分岐、弥平四郎から四ツ沢を登ってくる道を合わせる
「清水」の標識
「清水」の標識の手前、左の小沢に下る道がある
ピークが見えた
ヤマブドウはまだ熟していない
虹が見えた!
虹に見とれるKEB
鏡山々頂
鏡山からの大展望
大日岳にかかる虹
飯豊山と草履塚
これから目指す巻岩山
ナナカマド
黄葉
紅葉
ひとつひとつ峰を越えていく
素敵な紅葉に包まれて進む
疣岩分岐、ここで松平峠から登ってくる登山道と合流
ダケカンバ
ガスの中、でも秋色が素敵
獅子沼分岐
浅草を過ぎて
黙々と歩を進める
昔、松の木尾根を登ってくる登山道があった
三国小屋で休憩
ミヤマナラのドングリは熊達の貴重な食料だ
アカモノが1輪咲いていた
岩場を通過

続く⇒