登山者情報1,294号の1

【2009年10月28-29日/足ノ松尾根-門内小屋修繕/井上邦彦調査】

【28日】
 去る10月10日、梅花皮小屋の管理人に入ったODDから無線で「門内小屋の外壁が破損している」と連絡してきた。翌11日新潟の阿部さんから電話で「現在門内小屋にいるが、外壁が壊れている。なんとか応急処置をしたいが、道具がない」との連絡があった。当日の夕方には胎内市から「頼母木小屋にいる目黒さんが明日、管理棟の鍵を持って修繕に向かう」との連絡。そして17日に応急処理がされている現場を確認してきた(登山者情報第1293号)。
 その結果、この程度の応急処置では冬は越せないだろうと判断、各方面に対応をお願いしてきた。
 10月24-25日に中条山の会を始め各地元山岳会の方々が、頼母木小屋にある外壁の材料を門内小屋まで運んでくれ、28-29日に業者が入るとの情報を入手し、その同行をお願いした。
 07:00奥胎内ヒュッテ集合とのことなので、余裕を持って05:00自宅を出発し、06:05奥胎内ヒュッテに到着した。
 今回のメンバーは田中さんと齋藤さんと私の3人である。齋藤さんは山屋ではない板金屋さんである。門内小屋と頼母木小屋の本棟や便所の工事に携わったので、修繕にはうってつけの方である。
 06:50車に「門内小屋工事車両」の表示を付け、ゲートの鍵を開けて出発した。07:03登山口から登り始める。
 07:45-55姫子ノ峰でひと汗拭う。予報では次第に天候が良くなる筈だ。08:28-35滝見場で休憩、齋藤さんが苦しそうだ。
 稜線は雲に覆われているが、徐々に良くなりそうである。08:35英三ノ峰、09:00ヒドノ峰、09:06水場分岐を通過する。
 09:17-31ブナ林の中の地滑り地形で休憩する。齋藤さんは痙攣で足が動かない。田中さんが飲み薬を提供していた。
 09:46イチジ峰で森林限界を抜け出すが、ここからさらなる急な登りが待っている。10:25-41休憩を取る。かなり苦しそうである。
 10:55西ノ峰の標柱まで来れば後は傾斜が緩くなる。笹原の道を進んで、11:05-10大石山で稜線に出て休憩とする。
 周囲の紅葉は既に終わり、草原に枯れた花がドライフラワーのように立っている中を進み、11:58-12:35頼母木小屋に到着する。
 頼母木小屋の便所は1穴が完全に閉鎖され、1穴が使用できるようになっており、土足厳禁となっていた。水は遮断され、水源地である千代吉沢に下る看板が設置されていた。
 13:00頼母木山、13:34地神北峰を通過し、13:56-14:00地神山で休憩する。齋藤さんは気力で歩いているようだ。
 14:34扇ノ地紙、14:47胎内山を通過し、15:05門内小屋に到着するが、直前で齋藤さんがダウン。とりあえず田中さんと小屋に行き、管理棟を開ける。
 私は20Lのポリタンクを持って水汲みに行く。水は豊富に出ていた。小屋に帰ると既に齋藤さんは本棟の中で外壁材の裁断など下準備をしていた。私と田中さんで応急処置の板を外す。応急処置は風下側に数本の釘で外壁に固定し、そこからあり合わせの材料を継ぎ足して角材とロープで風上の窓枠に縛りつけられていた。また軒下は寸法が足りないので木片を当てていたが、既に壊れ始めていた。
 全てを取り除き、使用されていた材料は釘を抜いて石室に収納した。山では少しの材料も貴重である。
 齋藤さんの指示で、鉄骨にねじ込まれている螺子を全て外すが、地面が不安定なのでひとりが脚立を押さえていないと危ない。風は殆どないのに軍手を通して手が冷たく痛い。
 下準備の終わった齋藤さんが壊れかけている外壁を外す。軽量鉄骨が横に並んでおり、その内側は内壁である。この状態で内壁を押せば簡単に外れそうだ。齋藤さんも「放置しておけば冬の間に殆ど吹き飛んでしまうだろう」と呟いた。
 さらに、よく見ると縁の下も露出している。今回の修繕がなかったとして想像すると、@既に最上部の木片は破損が始まっており、最初に上部がなくなる。A窓枠に角材とロープで固定している板の隙間から吹き込んだ強風が応急処置の板を全て吹き飛ばす。B露出した内壁が内部に倒れて風が小屋内部に侵入する。C行き場のない風が風下側(入口側)の壁を吹き飛ばす。D残っている外壁も支えがないので捲れ上がって吹き飛ぶ。E床下から入り込んだ風が床板を吹き飛ばす・・・・春になった時は変形した鉄骨と残骸だけが残り、その他は門内沢に飛散している可能性が十分に考えられた。
 ともあれ、綺麗に外壁を剥ぎ取った所に、齋藤さんが手際よく外壁をはめ込み、先端がキリになっている螺子で鉄骨に固定していく。最後の1枚もぴたりと収まると、軒下との隙間や螺子にコーティングを注入して、完成である。
 気がつくと稜線は晴れ上がり、陽が沈みかけていた。3人で管理棟に入り、持参した石油を入れてストーブを付け、これまた持参した食料とアルコールでささやかな完成祝賀会となった。
【29日】
 翌日は、風の音で目が覚めた。視界は殆どない。あり合わせの食料で朝食とする。ふと風上側の窓を見ると、蝶番が3個ぶらぶらしている。外に出て確認してみると、窓に設置してあった風避け板がなくなっていた。これでは何かが飛んできた場合、管理棟の窓が壊れることが容易に想定できた。
 そこであちこち板を探して、2枚貼り合わせ窓用の風避けを作り、設置した。あとは管理棟内部とザックを整理し、鍵を掛けた管理棟入口をコンパネ等で縛り上げた。
 08:32門内小屋を出発。昨日と変わって下りが殆どなので齋藤さんの調子も回復し、08:49扇ノ地紙、09:11地神山、09:26地神北峰と通過し、09:40-48頼母木山頂でひと息、09:58-10:23頼母木小屋で大休憩とした。
 10:48-55大石山で休憩した後も順調に下山、11:13イチジ峰を通過し、11:28-39登りと同じ場所で休憩。11:44水場分岐、11:49ヒドノ峰、12:03英三ノ峰を通過し、12:27-53姫子ノ峰で最後の休憩を取り、13:19登山口に到着した。
 今回始めて車で入ったので、距離計で測定したところ、登山口から3.1kmでゲート、18.3kmで胎内スキー場、57.1kmで自宅に到着した。

天気予報は最高
対岸の大樽に陽が当たった
見事な紅葉だ
姫子ノ峰にて休憩
ホシガラス
大石山がぼんやりと見える
稜線の雲が薄くなってきた
ヒドノ峰
鞍部が水場分岐
小鳥がいた
名前はこれから調べてみたい
水場の分岐
鳥の巣
ブナ林を抜けるとイチジ峰
コシアブラの枝は変形しているものが多い
こちらはマルバマンサク
大石山が迫ってくる
向こうは鉾立峰
ミヤマナラも葉が落ちている
堂々たる鉾立峰
最後の登りだ
一番辛い所
西ノ峰まで来れば着いたと同じだ
頼母木小屋と頼母木山
地神山
杁差岳と鉾立峰が重なっている
ピークがずれて行く
平坦な笹原を進むと大石山(稜線)に到着
頼母木小屋遠望
頼母木小屋に向けて進む

続く⇒