登山者情報1,370号

【2010年07月21日/遭難事案/井上邦彦調査】

19日午後、高速道路を走行中に携帯電話が鳴った。高速を降りた所で駐車して電話をすると、飯豊連峰で遭難事案が発生したとのことである。帰宅後に小国警察署に顔を出し、詳細を聞く。内容は、単独の方が御手洗ノ池付近で転倒し足首を痛め、自力で梅花皮小屋に戻ったが、そこで動けなくなったとのことである。ヘリがフライトしたが、梅花皮小屋周辺の稜線だけが雲で覆われており、収容できない。生命に異常はないし、容態も安定しているとのことなので、翌日に再フライトすることとして帰宅した。
翌20日は終日雲が多く、何度かのフライトも功を奏しなかった。夕方、警察署に顔を出すと、ご家族がいらっしゃっていた。状況を説明し、翌朝、地上隊を出動させ、ヘリによる収容作業が成功しなかった場合、背負って石転ビ沢を下降し、北股沢か石転ビノ出合でヘリによる吊り上げを行うことにした。さっそく隊員に召集の連絡を行う。またLTQに気象状況の調査をお願いした。
21日午前2時40分に起床し、用具を調える。外に出ると霧に覆われているが、これは雲海だろう。梅花皮小屋のOTJに電話をすると、快晴とのことである。ただ、山の天候は変わりやすい。また現場が良くても飛行場が霧となれば、フライトができない。コンビニで食料を買い、警察署に向かう。
既にご家族が待っていてくださった。新しい状況を説明し、本日中には間違いなく下界に下ろすことを約束して、警察車両に乗り込んだ。湯沢ゲートで飯豊班と合流し、温身平まで車で入った。雲ひとつない青空の下に、石転ビ沢と梅花皮小屋が遠望できた。この先は洪水で道路が欠損しているので車は使えない。
今回は、そんなに急ぐ必要はない。間違いなくヘリでの収容が可能だろう。やがて頭上をヘリが追い越して行き、無線機に収容作業が無事成功したとの連絡が入った。

梅花皮沢第四砂防ダムにて
途中に咲いていたエゾアジサイ
帰途、温身平から望む
梅花皮小屋と石転ビ沢最上部、小屋の直下に登山者が見える