登山者情報1,490号

【2011年09月30-02日/丸森尾根〜ダイグラ尾根(飯豊連峰合同保全事業)/井上邦彦調査】
《9月30日》
 今回の飯豊連峰合同保全事業は、飯豊連峰で最奥とされる草月平周辺で実施された。そのため各自の都合に合わせることができるよう、現地集合とした。その結果、弥平四郎・大日杉・川入・ダイグラ尾根とコースは多岐に渡ったが、私達は事前に梅花皮小屋に上げた土嚢を搬送するためと、昨年設置した木ダムのモニタリングを行うべく丸森尾根から入山することとした。
 丸森隊は黒崎山の会・西川山岳会・小国山岳会を中心とした総勢15名である。06:20に集合し残っていた土嚢や食材等を分担し、06:52天狗平ロッジを出発した。幸いにも霧雨程度なので岩稜を快適に登るが、1名がやや遅れる。07:47-02、765m峰で休憩。程なく雨が降ってきたので合羽を着て、08:56-19夫婦清水で全員が集合する。梶川尾根を登っているFRSから無線があったので、こちらはこのまま登る旨を伝える。10:10-17風が強くなることを予想し、低体温症を防ぐために合羽の下に着込むように指示をする。スタートで体調の悪かった者も既に復活している。
 雨が降り、登山道が川となることによって、登山道保全の効果を知ることができるので、全員の士気は高い。木ダムを確認しながら登る。残念ながら集中豪雨等で壊れている物もあったが、大部分は有効に機能していることに満足する。11:01丸森峰を通過し、風の少ない所で休憩を取る。ここから暫くは土嚢や石で作ったダムを確認しながら登る。登山道に水が溢れ、絶好の観察日和である。
 12:03地神北峰に出た瞬間、予想以上に風が弱い!これなら楽勝と思って多少進んだら、やはりふらふらと来た。足元の植生によって風力が変わるのがはっきりと分かる、風食を考える上でちょうど良い風である。
 12:23地神山を通過し、12:25風下で休憩を取る。FRSから門内小屋にいる旨の連絡があったので、そこで待機しているように話す。13:01扇ノ地紙でも風下の広場で休憩し、門内小屋に向かう。
 門内小屋にいたFRSに水を渡してお湯を沸かして貰い、秘伝の味噌を溶かして飲むと、皆の力が復活した。それまで元気のなかったハイジは荷物を少なくして貰う。新しく大きいザックなので、自分の持てる重量を誤ったようだ。着替えをしてさっぱりしていたFRSはここで停滞することとし、13:57門内小屋を出発した。
 強風を覚悟したギルダ原だが、ゆっくりと間隔をあまり開け過ぎないようにして通過し、14:53北股岳山頂に出る。後は下るだけ、15:15梅花皮小屋に全員で到着した。
 その夜の様子については書くまでもないだろうが、興味がある方は参加者のブログを閲覧して欲しい。
 なお切合隊から明日の行動計画について問い合わせがあったが、コースによって状況が変わるので、各自で無理のないように判断して欲しいと伝えた。

《10月01日》
 今日も天候はあまり良くない。切合隊から本日は停滞とする旨の連絡があった。飯豊随一の強風地である御前坂を通過する訳だから、無理はしない方が良いだろう。また昨日途中で戻った方も少なくないらしい。こちらのコースは稜線の東側を歩くことが多く、植生的にも極端な強風地は少ないが、出発時刻を約1時間遅くして、05:43梅花皮小屋を出た。
 06:10梅花皮岳を通過し、06:40-45烏帽子岳で立ったまま休憩。06:53クサイグラ尾根分岐でザックを降ろすと、小屋整理のために1時間遅く出発したシミケンさんと竹爺が追いついてきた。なおFRSからギルダ原で下山を決めたとの連絡があった。
 視界はないが雨風共になく、08:00御手洗ノ池で休憩する。08:40-09:10ザックを登山道脇に置き、空身で天狗ノ庭に降り、全員でモニタリングを行う。7月30日に確認した時(第1471号)よりも、随分と草が増えており驚いた。これまで天狗ノ庭で保全事業に汗を流したメンバーは、充実感と感激に満たされた。
 予定より1時間遅れで、10:00に御西小屋着。川端さん一行とryouさんが迎えてくれた。ここで今回の作業手順を相談している時に、LTQさんのメールが転送されてきた。内容は「今晩には冬型は緩むが、明日、北陸道付近を前線を伴った低気圧が通過、その後、一段低い寒気南下。という概況なんで、今日の時雨空模が、まあー小康状態で明日は前線通過のタイミングではシビアー。気温も切合で2℃位で、作業地では0℃位じゃないかな?風は天気図上ではさほど吹かない感じだが、寒気の南下で風が強まる可能性は残す。 まあーあんまり良くないなぁ」というものであった。
 予定では一箇所に集中しないように、黒崎山の会は本山小屋、私達は御西小屋と分れる。しかし、明日のダイグラ尾根下山が心配になった。切合隊は停滞なので、本山小屋はその分空くだろうと勝手に推測。全員本山に変更することとした。
 後は作業をするだけである。天候を鑑みて今回は緑化ネットを貼るだけにし、土嚢袋は小屋にデポして来年使用することとした。
 荷物を小屋に置き、緑化ネットの入ったビニール袋を肩に担いで、10:40現場に向かう。みんな手慣れたもので、場所を決め、浮き石を除去し、ゆるゆるになるようにネットを転がして設置する。針金を曲げる人、針金で作ったペグを打ち込む人、石をネットの上において行く人。ネットを切断して長さを調整したり、草や石の頭を露出させる人。互いに声を掛け合い、流れるように作業が進んだ。さらに排水を目的とした石ダムを3か所作成した。
 1箇所目が完了した所で、黒崎山の会で準備をした横断幕を張って記念撮影。手が痛いぐらいに寒くなり、アラレも降って来た中での作業であった。
 いったん御西小屋に戻り、立ったまま食事を摂る。すると管理人室のドアが開いて松葉さんが顔を出した。何んと我々のために下山を1日遅らせてくれていたのだ。これだったら、御西小屋泊に拘ったかも知れないのだが・・・もう後の祭りである。
 ザックを担いで、再び外に出る。2箇所目の施工個所で、半分のメンバーが先行する。ここもたちまち完成、3箇所目に移動すると既にネットは貼られていた。
 13:00玄山道分岐で今晩のために水を汲んでいると、下方の雲が切れて見事な紅葉が現れ、種蒔山から御秘所まで見えたが、また雲に隠れた。重くなったザックを担いで駒形山に登る。風が出てきたと思う間もなく雪になり、飯豊山を登る途中では登山道の一部に積り始めた。
 14:09飯豊山を通過し、本山小屋手前で坂本さんの迎えを受けて到着。高橋管理人の指示に従って2階に陣取り、楽しい夜が更けた。

《10月02日》
 沢山の人がいたのに寒いと思ったら、-7℃まで下がったとのことであるが、素晴らしい好天の朝を迎えた。小屋前で記念写真を撮影したが、次第に人が増えて行った。
 丸森隊に昨日ダイグラ尾根を登ってきたAQLを加えて、小屋を出る。07:00飯豊山頂で記念撮影、展望は素晴らしいが、とにかく寒くてたまらない。AQLと私が黒崎山の会等の前後を歩くこととし、それ以外の小国山岳会員は先に降りてもらった。
 御前坂を下り、何時もの岩場で休憩し、08:45宝珠山岩稜を通過して、宝珠山々頂を巻く。事件は下降中に起きた。Aさんがスリップして2m程草斜面を落ちた。声が聞えたので戻ってみると、これ以上落ちないように仲間に下から支えられていた。取りあえず登山道の安全な所まで移動する。本人は落ちる途中で左足から異音が聞えたと言い、正常には歩けないとのこと。靴を動かしてみるが痛みはさほどでもないようだ。靴を脱がせて爪先を上げてみるが痛みはない。左右に捻ってみたら、片方で軽い痛みを感じたようである。足首の捻挫や剥離骨折はないと判断したが、湿布の上から念のため軽くビニールテープで固定し、そのまま歩いてもらうことにした。
 無線で先行するメンバーの何名かを残すように連絡する。荷物を柴田さん始め皆に分散し、私の2本ストックを使ってゆっくり下り始める。現在は素晴らしい天候であるが、これが徐々に悪くなるだろう。今ならヘリのフライトは可能であるが、数時間後には雲に覆われる可能性が高い。Aさんは大柄で体重もほどほどありそうである。しかし時間を掛けても歩けるだけ歩いてもらい、限界になったら担ぐという道を選択することにした。
 登山道は相変わらず嫌らしく大又沢側を巻くように下っており、負傷した足に負担が掛る。LFD・EHJ・シミケンさんが途中で合流し、これで体制は万全となった。11:00千本峰、12:03休場ノ峰を通過する。この調子だと下まで暗くなる前に着きそうである。急下降になると流石にペースは落ちる。13:15長坂清水で休憩を取ると、各自のザックの中から、大ご馳走が出できて驚く。やがて施工現場を確認してきた坂本さん一行が追いつく。15:21桧山沢吊橋を渡るとまもなく雨になり、合羽を着る。
 16:20全員無事に天狗平ロッジに集合する。小過はあったものの、大過なく山行を終えることができた。
出発前に天狗平ロッジ前で記念撮影
丸森尾根を登る
雨は上がった
岩稜を登る
温身平を見下ろす
夫婦清水にて
水は豊富に出ていた
大きな段差が続く
本降りになってきた
倒木を潜る
崩壊地にて
登山道に水が流れる
低体温症対策のため、合羽の下に服を着込む
木ダムが出てきた
壊れている所もある
モニタリング前なので修復は見送った
雨もまた楽し
木ダムと水の動きを観察する
ストロボに雨が写りこむ
丸森峰から上の施工箇所
まだ風はさほどでない
川となって流れる水
登山道浸食の原理を観察する
草原を登る
ここも水流が多い
あと一息で稜線だ
門内小屋で休憩
北股岳に向かう
北股岳山頂!
ついに梅花皮小屋に到着!!
濡れた物から着替えて 乾杯!!
お刺身が出てきた
イッチャンが持っているのは 菊水のリッター缶!
シミケンさんが料理しているのは
どらうや烏賊のようです
笑顔が出てきて
楽しさ満開
こうして梅花皮小屋の夜は更けました

続く ⇒ その2

天狗ノ庭

続く ⇒ その4