登山者情報1,525号

【2012年03月11日/白太郎山〜ホコ石/井上邦彦調査】
 ちょうど1年前の3月11日、大震災により想像を絶する惨劇が起きた。続いて発生した原発事故は私達が薄氷の上で生活している現実をさらけ出した。この日は単なる鎮魂の一日ではない、これまで関わり続けてきた山と言う自然と人間の関係に改めて向き合うべきだろう。勝手にそう決めて、10年以上前に歩いたことのあるホコ石を目指した。同行者は竹爺である。今回は彼の読図力向上山行と位置づけて、殆どの部分を彼に先行してもらい、二日酔いの悪体調をごまかした。
今回のルート

 竹爺をアパートに迎え、車の中で地図を渡し本日の行程を告げる。徳網集落除雪終点の駐車場に車を止める。ビーコンを見に付け、06:48竹爺を先頭に歩きだす。竹爺に出した課題は「コグラ沢と清次郎沢の間にある尾根を登って白太郎山に登る。さらに東進し、ホコ石の山頂(1,010m)に至り、尾根を下ってキリノ沢に架かる橋に降り、林道を戻る」というものであった。
 コグラ沢付近は切り立っており雪崩が落ち、まだ不安定である。竹爺は磁北線とコンパスを合わせて登る。時折止まっては、周囲の地形を観察し地形図で現在地を確認する。07:29大きなナラの樹で軽く休憩を取る。トップは竹爺が続ける。08:07私は始めてお握りを頬張るが、胃が受け付けない。
 08:57大人数が通ったトレースと合流する。最近登ったパーティがいたようである。トレースを辿り、09:28白太郎山々頂に到着する。視界は殆どない。ここで竹爺はコンパスの角度を新しい目標に設定し直し、さっそく下降を始める。下降してすぐにコンパスを確認すると角度が違う。視界が乏しい中、右下にブナの木を見つけた。急斜面で下降が難しいので、偵察し大きな尾根を若干下降して右手にトラバースをしたが、その途中で竹爺が滑落!幸い傾斜が緩くなった所で止まった。山頂からの下りは新雪の下に硬い雪があり、今回はピッケルを持参しなかったのが悔やまれた。左側は急峻な地形で、右側に大きな雪庇が出ている。
 10:06鞍部にある小峰は主稜を通過するのが危険と判断、ワカンを外し坪足で右手から巻いて通過した。ワカンを外しても潜る深さは変わらない、キックステップの要領で標高を上げて行く。
 10:48-56ホコ石の峰に到着する。竹爺は慎重に四囲の尾根と地図をにらめっこして、ここが山頂であることを確認する。方向を定めて尾根を下ることにするが、ここから暫くは痩せ尾根となるので、先頭を交替する。小峰を越えると、両側がすっぱりと切れたリッジであるが、ナイフ程ではない。慎重に進むが、何処が空で何処が雪なのか分らないので、ストックで叩き凹凸をつけて確認しながら通過した。
 取りあえず危機は脱したが、右手の雪庇には近づきたくない。そうこうしているうちにガスが切れ、白太郎山が見えてきた。竹爺が山頂に人がいると叫んだ。4〜5人位だろうか、確かに人間である。
 再び竹爺とトップを交替し、ワカンを履いて、あくまでもキリノ沢に架かる橋を目指してもらう。対岸の柴倉山や徳網山がくっきりとしてきた。杉林が出てきた所で、竹爺に沢を下ることの危険性と、見た感じと現場が異なる可能性を指摘し、尾根に戻るよう助言した。暫くは尾根筋を歩いたが、コンパスが示す方向と歩きやすさに誘われて、どうしても沢に向かってしまう。雪がざけて表面だけが動くので歩きにくい。それでも本格的な雪崩にはならないだろうし、安全なレベルで沢の苦労を体験してもらう方が良いと考え、何も言わずに後を歩いた。案の定、沢に入り込んでトラバースとなったが、最後は予定の尾根に上がり、12:30-53どんぴしゃりと橋に到着した。
 いつの間にか青空が広がっていた。徳網山を眺めながら、暫しのんびりと食事をし、林道を歩いて、13:20駐車場に戻った。

急登の途中で一服
熊の爪痕
この穴の住人は誰だろう?
竹爺がぐんぐんと登る
ウサギの食痕
なかなかの登りです
樹皮がすっかりなくなった樹木
最後の頑張りだ
主尾根に出た!
と思ったが
一段高い所に大人数のトレースが
白太郎山々頂、これまではここが終着点
今日はここから東に向かう
目指すホコ石の峰が見えた
嫌らしい小峰を巻くと、いよいよ登りだ
白太郎山を振り返る
絡み合ったブナ
神々しく感じられた
間もなく山頂だ
このブナが目印
地図で現在地を確認する
間違いなく、ここがホコ石の山頂です
視界が開けました
ここから下山です

つづく ⇒