登山者情報162号

【西俣ノ峰〜頼母木山】

本コースは梅花皮荘と天狗平の間の雪崩地帯を通る必要のないことから、この時期に多く使用されるが、三匹穴と頼母木山頂の間のコース選択がポイントになる。またまだまだ吹雪くことから冬山にも対応できる技術と装備が必要である。稜線の朝はアイゼンがないと歩行が難しい。
車道は民宿奥川入りまで除雪されているが、駐車スペースがないのでマイカー利用の時は梅花皮荘手前の駐車場利用となる。バス利用の時は梅花皮荘で下車。奥川入から雪の上を歩く。途中の湿地にはミズバショウの白い花が膨らみ始めている。尾根の取り付きには標識などは何もないので注意する。尾根に取り付くと夏道と雪道が交互になる。マンサクの黄色い花が盛りである。ブナの芽も大きくなっている。地元のマタギの方が、今年は花の芽が多いのでブナの実も豊作かも知れないと語ってくれた。イワウチワはつぼみが見られたが花には早い。標高650mから上は全て雪道となる。西俣ノ峰直下970mの尾根の分岐は下降時に迷い易い。西俣ノ峰と枯松峰(1184m)の間、雪庇が崩壊し始めており、ルートの選択に充分注意すること、部分的に露出している夏道は手入れがなされていない、このコースは基本的に廃道になっており、この時期だけ使用が可能なコースである。枯松峰手前には雪洞に良い場所が ある。杁差岳の展望が良い。最低鞍部の大ドミ直前には僅かだが夏道が出ている。標高1,415mが森林限界である。すぐ上の僅かに露出した岩(1450m)に遭難の歌碑が建っている。ここから傾斜が落ちて尾根は大変に広くなりダケカンバが点在している。ここが三匹穴である。ここから頼母木山頂迄の間は晴天時でもコース選択に戸惑いを覚える所である。特にガスられた時の下降はデフがないと手に終えないことがあるので十二分の注意が必要である。1991年5月2日に本コースを登った方が、頼母木山と手前の1740m峰を間違えて頼母木小屋を求めて北西の尾根に入り凍死している。上りは三匹穴から上は尾根の左斜面を直上した方が楽である。右手は這松等の露出した部分を行くことになるのでやや歩きにくい。頼母木山頂には石柱・地蔵尊・三角点が露出している。地神北峰を望むと指導標が露出しているのが確認できた。頼母木小屋までは雪庇の上を行く。小屋は殆ど全て露出しており、小屋の後ろの梯子を登り冬季出入口から中には入れる。私の前に使用した登山者が窓を開けていたので、僅かだが吹き込みがあるが、問題はない。夏の入口 も扉は開くので掘れば使用できる。便所は鍵がかかっている。1995年04月08日(井上邦彦調査)

【天狗平〜梶川尾根】

梅花皮荘と天狗平の間の雪崩と滑落が本コースのポイントである。沢沿いのコースは雨天時が最も危険が高く、気温が高くなる午後からの行動も避けたい。
梅花皮荘から車道沿いに行く。大きな雪崩はほぼ落ちたが、スノーブロックヤスノーボールが頻発している。砂防ダムの前後が雪崩の注意地区である。旭又沢手前のヘツリでは1984年4月29日に2名の滑落事故が発生している急斜面である。発電所の方がスコップで道を掘っているが、上部から何時ブロックが落ちてくるかに注意しながら足元に気を付けてトラバースする。ピッケルはもちろん、早朝にはアイゼンも欲しくなることがある。天狗平の飯豊山荘・天狗平ロッジの営業は共に天狗平までの除雪が終了してからになる。今年は5月の連休には間に合わないと予想される。天狗平から梶川尾根に取り付く、所々に雪庇の残害があり、痩せ尾根のため巻くことができずに乗り越すのに大変苦労する。なくなるのに2週間程度必要であろう。さらに上部は亀裂が多く、踏み抜きやすい。湯沢峰から上部は全て雪道となる。今回はここまで四這になり残雪を乗り越すなどに時間を要したため五郎清水付近に雪洞を掘り、翌日下山した。途中から石転び沢を遠望した所、大きなデブリはまだなく今後発生すると思われた。石転ビノ出合から下流は水面が出ている所があった。
1995年04月08〜09日(高貝喜久雄調査)