登山者情報1,668号

【2013年07月04日/末沢川遭難/井上邦彦調査】

 05:44に役場の担当者から「朝日連峰で釣り人が帰ってこない」と電話があり、小国警察署に向かう。福島県の方が3名、3日の夕方に帰宅すると言い残して2日20:00頃に山形県に向かった。4日0:21家族から警察に捜索依頼が出された。警察で調査した結果、2日深夜に該当する車両が小国町に向かっていた。小国警察署で探しまわった所、朝日連峰登山口の五味沢地内で車両を発見した。車両を発見したパトカーの位置は五味沢から針生平に向かう途中の穴淵小沢付近であった。だとすれば要救助者は荒川本流で釣りをしていたと考えられる。念のため救助隊朝日班長の齋藤初男さんにも車のある場所を確認してもらうため、現場に向かってもらった。パトカーが帰署してから話を聞くと、車のあった場所は穴淵小沢ではなく針生平であることが判明した。だとすれば話は変わり、末沢川に向かった可能性が高い。車を確認した初男さんも同じ意見だった。荒川本流であれば消防団員を中心として捜索することが可能であるが、山を越えて道なき沢を捜索するには山岳救助隊でなければ危険性が高い。08:00民宿ふもとに隊員を集合することにした。
 情報の収集と整理を終え、自宅に戻って山道具を車に投げ入れ、民宿に向かう。中に入ると朝日班員4名、警察署員、消防署員が相談をしていた。これまで得た情報を伝えると、日帰りで末沢川に行き釣りをして戻るのは難しい。往復だけで1日かかる。行っていない可能性が高いのではないかとの意見がでた。なるほどと思うが、それでは何処に行ったというのか。3日は雨が降り増水したが今日は平水に戻っている。車の場所からして大玉沢出合より奥に入ったとは考えにくい。荒川本流なら3人がまとめて流されない限り戻ってこれるはずである。私も含めた3人に若手の警察署員を加えて末沢川に向かい、梅花皮小屋のOTJと御西小屋のGPNにアマチュア無線の中継を頼む、残る2人は荒川本流を探すことにした。
 針生平に置いてあった要救助者の車まで行くと、末沢川にいるとの確信が深まった。山に入る準備を始めて、ザックがないことに気がついた。慌てて山道具を車に入れる時に失念してしまったのである。引き返すことにして、すれ違うメンバーには後で追いかけるから先に行ってくれと声を掛けた。
 OTJの家により、奥さんに断ってザックを借りる。現場に向かって砂利道を走らせていると、道脇に一人休んでいた。車を止め声を掛ける。釣りの服装、小さなザックが複数。「福島の方ですか?」「はいそうです」「帰ってこない3人を探しているのですが、本人ですか?」「はいそうです」ここにいた!「残りの方は?」「車を取りに向かいました」私の車に乗ってもらい、現場に向かった。
 車のある場所には、警察署の車、消防署の車、役場の車、隊員の車が止められ、警察や消防の担当者が3人の事情聴取を始めた。たまたま救助隊の出動シーンを撮影しようと複数のTVカメラが取材している中に、本人達が現れたのである。
 騒ぎが収まり、締切時刻を気にする報道陣が帰ってから、3人に話を聞いた。それによると、「針生平に車を止め、藪を分けて登った。そこから南西に進み、昔のゼンマイ道を通って末沢川に下降した。末沢川を釣りながら遡り滝が出てきたので左岸に取り付いた。それからルートが分からなくなり何度か登り降りを繰り返した。尾根の上で一晩過ごした。自分達が降ってきたゼンマイ道をなんとか見つけ、そのまま踏み跡づたいに降りてきたら、私が会った場所で車道に出た。」ということだそうだ。彼等のルートを地図に下ろそうとしたが、右往左往した場所についてはできなかった。

無事に3人が下山
早速TVカメラの取材となった

おわり