恒例となっている山形県山岳連盟登山部研修会兼指導員研修会が、今年は飯豊町中津川で開催された。最初に清野会長から「登山と火山災害」について解説の問題提起があった。特に、日帰り登山の場合は山頂部で昼食を取る人が多かったことが犠牲者を増やしたとして、登山者が火山の知識を持つ重要性、通常とに違う異変に気づいたら逃げることの必要性を指摘した。また福島県は実務者会議に県山岳連盟が入っているが、山形県は入っていないとして、我々が何をするべきか考えようと提案した。八幡山岳会の阿曽氏は、「鳥海山では各山小屋にヘルメットを装備した。各自治体等(
酒田市の火山噴火対策)のホームページに情報をアップしている。3月末には山形・秋田の担当者レベルの話し合いがなされる予定だ」と情報提供があった。
続いて井上登山部長から「ネットを利用した登山届など」についての問題提議があった。参加者の中で「
ヤマレコ」を利用しているものは、地図作成・登山届作成・知人に対する登山届の登録・記録のアップを行なっていると発言があった。都道府
県警察本部に対するネットを使った登山届出を行った者も1名いたが、難しかったとの感想であった。また「
コンパス」については磁石と間違って利用していると答えた者がいたが、実際に利用したことのある者はいなかった。
参加者の中でスマホを使用している者とガラケーと使用しているものはほぼ半数であった。スマホを使っていてもどのアプリが良いのか分からないので、県山岳連盟推薦のアプリを指定し、使い方を教えて欲しいとの声があった。今回は本年2月に新しくなった「
地理院地図」を紹介した。全員がスマホに頼ることの危険性を指摘しながら、積極的な利用は進めるべきだろうとの意見であった。
新しい資機材についても井上登山部長が、遭難対策として「ヒトココ・ココデス・しらせ〜る」を紹介し、これらは翌日に実体験を行った。また救助用具として「セミスタティックロープ」の活用と留意点について説明をした。
各委員会の研修については、齋藤競技部長が今年度の報告と新年度の計画について発表を行った。遭難対策委員会は阿曽登山部副部長(遭難対策担当)が、全国山岳遭難対策協議会の報告を行った。自然保護委員会については、急な発熱のため欠席した高取登山部副部長(自然保護担当)に代わって井上部長が日山協自然保護委員総会の報告を行った。指導員会については井上部長が、日山協指導員総会研修会の伝達を行った。
会議終了後、たまたま中津川地区で開催されていた「中津川雪祭り」を見学し、その後宿舎で懇親会を行った。
翌1日は、宇津沢に向かい資機材の実験と体験を行った。ヒトココは八幡山岳会の親子2セット、小国山岳会の親子1セット、合計3セットを使用した。マニュアルを見ながら互いのIDの入力から始まり、3箇所に設置した子機を、捜索した。やはり始めて使う参加者はなかなか要領を掴むまでに苦労をしていたようである。「親機と交信中です」という表示が何回かあり、誰も意味が分からず後日の課題とした案件もあった。子機から510mほど離れた山頂部からは探せないのに、わずか10m程度動くだけで発見でき、遠距離の場合は視界を遮る小さな起伏も障害になることが実感できた。また子機に次第に近づいていった所では、起伏があっても発見できた。
発煙筒については「ココデス」は期待通りの効果を確認できた。過去において実験に失敗したこともある「しらせ〜る」は、缶を直接雪の上に置いたことから温度が不足したのでないかと考え、缶の下に小さなベニヤ板(登山用ストーブに使用しているもの)を敷いた。発煙実験には成功したが、鎮火後に缶を動かしてみると、ベニヤ板に黒い焦げ跡ができたいた。「しらせ〜る」はこ「ココデス」に比べて発煙量や時間も長く感じた(説明書ではココデス1分間、しらせ〜る1.5分)。
ココデスは手に持つので発煙位置そのものが高く分、目立つようだ。ココデスは臭いが気にならなかったが、しらせ〜るは風下で、プラスチックが焼けるような臭いが漂った。しらせ〜るの蓋のシールを剥がすと、しっかりとした鏡が出てきて参加者をどよめかせた。これは太陽光を反射させ、ヘリコプターなどに自分の位置をしらせるためのものである。参加者から「過去にはカメラのフラッシュを光らせ救助された例がある」と紹介された。