登山者情報2,147号

【2018年09月24日/丸森尾根のオオスズメバチ/井上邦彦調査】
 23日20:13、大境山の登山道刈り払いを終えてうとうとしていたLFD(齋藤弥輔)から電話が掛かってきた。梅花皮小屋の小屋番を終えて下ってきたTVC(梅津会員)が丸森尾根でスズメバチの巣を見つけたというのである。
 メールを開いてみると、確かにTVCから「本日丸森尾根を下山しましたが、途中ですれ違った登山客からスズメバチの情報をえました。場所は丸森尾根の1270メートル付近・・スクリーンショット位置情報参考にしてください。(ただ、GPS精度悪いので±30メートル考慮ください。)スズメバチの巣の大きさどの程度なのか?わかりませんが、丸森移動の際は十分に注意が必要です。写真送るので、登山客の皆さんに注意喚起お願いします。 山道の中央から少しずれていますが、結構絶妙な位置です。ロッジの小関さんから、梅花皮田巻さん、御西草刈さんには連絡していただきました。」という内容と、4件の画像が添付されていた。
 これだけ詳細なデータでは駆除しないわけには行かないだろうということで、LFDと明朝7:00天狗平集合と決めた。
 やはり現場に行ってみないと、どのような作業になるかは分からない。祝瓶山では紺と黒のカッパを着ていたせいか、スズメバチの体当たり攻撃を受けている。防水のなくなった古くて生地が厚く明るい色のカッパを引っ張り出した。さらに長袖の下着が洗濯中なので半袖になる。シャツの上にフリースを着用することにした。ズボンも夏用だと薄い生地なので、洗濯籠に入れていた厚手の作業ズボンとした。
 バイル(釘抜き)、剣スコ、ナタ、ノコギリ、測量用ピンクテープ、蜂よけ網、ヘルメット(通気用の穴はガムテープで塞いだ)、ハチ用スプレー、スミチオン(移植ベラも)持参することにした。
 時間どおりに天狗平に行くと、LFDはすでに丸森尾根登山口で待機をしていた。彼は防護服の他に穴掘り用にピッケルを持参するとのことである。
 07:09登り始め、暑くなったのでシャツを脱ぎ、無線機の電源を入れて天狗平ロッジのUKXと交信をする。07:54、765m峰を通過し、08:32-47夫婦清水で食事をする。途中で4人ほどの単独登山者とすれ違う。誰もハチには気づかなかったと言うが、4人が通れば多少興奮をしているかも知れない。今日は3連休の最終日である。これから登山者がどんどんと降りてくるだろう、作業は早く終えた方がよさそうだ。
 ここからは、今朝プリントしてきた画像を開いて、捜索を始める。09:21現場着、送られてきた画像と一致する、文句のない理想的な現場写真である。送られてきた標高は1,267m、実際の標高は1,291m(GPS、地形図では1,285m)十分使用に耐える誤差である。
 先ずは汗をひかせながらハチがいる筈の場所を観察すると、たちまち数匹のスズメバチを発見。大きさも十分、黄色い腹部にくっきりとした黒い縞模様、オオスズメバチに間違いないだろう。ただ穴から出入りするハチは見当たらない。
 汗が引いても防護服のヘルメットは曇るようだ。LFDはハエ叩きを持って、サンプル用に数匹のハチに衝撃を加え、水筒に採集する。いつもなら次々とハチが飛び立ち、穴が特定できるのだが、ハチが出てこない。一度飛び去ったハチが時折戻ってきてうろうろするだけである。
 付近の木の根などを蹴っても反応はない。それではとピッケルでハチのたむろしていた周辺を掘り出す。一番太い根を切断し、さらにスコップで掘るが、空洞はなく、ハチも出てこない。
 携帯電話で御西小屋のMNN(草刈)を呼び出すが圏外である。無線を入れると町中心部のODDが出てくれたので、MNNを呼び出してもらい、伸縮アンテナに切り替えるとクリアに通話できるようになった。
 MNNによれば、巣から分れた女王蜂の可能性があるとのことである。だとすれば全てのハチを捕まえてしまえば問題はなくなる。
 観察していると、一番大きなハチ(女王蜂?)は腹部を盛んに振っている。時折飛んできたハチと触覚を触れ合って情報交換(もしくは食料の補給?)を行っている。ハチがホバーリングをすると、地面のゴミが舞い上がる。
 女王蜂を採集し、地面が掘り返された場所に1匹のハチが戻ってきた。女王蜂がいた場所の匂いをしきりに嗅ぎ回る。
 上から登山者の賑やかな声が聞こえてきた。手前で立ち止まるように声を掛け、ハエ叩きでハチを採集する。最初に見たハチはこれで全ての筈である。賑やかなパーティに通過してもらうことにした。
 10:38いくら観察を続けてもハチの気配が全くなくなったので、下山することにした。途中で若干の支障木を処理しながら、11:01水場を通過し、12:03登山口に到着した。
 この後、自宅で採集したハチを処理していると、遭難事案の連絡があったが、その掲載は後日としよう。

今回の現場
  etrex20jによるデータ
 標高 1,290.969m
 緯度 37°55′12.48′′
 経度 139°38′26.77′′
夫婦清水
水量が豊富
ここからは印刷した画像と見比べながら登る
数年前に崩れた所
これほど整備されました(下山時に撮影)
ここも整備されている
ここが怪しい! 見比べてみよう
送られてきた画像 今回撮影した画像
送られてきた画像(上から)
送られてきた画像 穴に入っているようにも見える
ここからは今回の撮影
情報交換(?)をするハチ
腹部をしきりに振る
何故かこの小さな木の根に固執している
また別のハチ(?)が近づいてきた
ハエ叩きでハチを採集する
水筒に入れる
巣穴を探す
ピッケルで穴を掘る
反応はない
さらに根を切断し、スコップで掘る
ここまでやっても反応がなかった
年のため標識を付けてきた
上から
カナヘビ?
天狗平ロッジと飯豊山荘が見えてきた
両手を使って後ろ向きに降る
牙をむくオオスズメバチ
今回採集してきたスズメバチです

終わり