登山者情報2,148号

【2018年10月07日/丸森尾根のスズメバチ/井上邦彦調査】
 6日19:40MNN(草刈広一)からメールが届いた。彼宛のメッセンジャーに「丸森尾根標高801m、根っこの下にスズメバチが3〜4匹出入りしていた」と画像が送られてきたとのことである。その画像だけでは場所の特定は難しいと思い、さらなる情報収集を依頼した。するとスマホで画像を撮影した箇所のGPS画像が届いた。
 LFD(齋藤弥輔)に電話をすると「明日は用事があって出動できない」とのこと。明後日から私はMNNと一緒に北海道研修である。明日の天気予報では、台風が襲来し風は強いものの雨は大したことがなさそうである。MNNと二人で現地に向かうことした。
 7日08:00自宅に迎えに来てくれたMNNと天狗平に向かう。カッパを着て登り始めて間もなく、岩場の直前でMNNが登山道に落ちているスズメバチの巣を発見。これは帰りに処理することとし先を急ぐ。
 プリントしてきた画像を頭に叩き込み慎重に登ると、登山道を横切る木の根に止まっているスズメバチを発見した。しかし持参した画像とは一致しない。しばらく観察したが1匹だけのようだ。やがて北側に飛び去ったので、ピッケルで木の根や周囲に刺激を与えたが、他に出てくる気配がない。ここではないと判断して、さらに先に登る。指定の標高は随分過ぎたのだが、それらしい巣は見つけることができない。しかたなく戻ることにした。
 先程スズメバチが1匹いた所まで降ると、まだいる。いくら観察しても穴に入る気配はない。そのうちに、持参した画像が登山道の下側から撮影したものではなく、上から撮影したものと気付き、照らし合わせてみると合致した。登りでMNNに「どちら側から撮ったものか?」と尋ねたが、彼は情報提供者に確認することなく「下側からだと思う」と答えたので、私も油断をしていた。
 この個体は体が大きくオオスズメバチに違いない。飛んでくるスズメバチをハエタタキで軽く叩き落とし、サンプルとして水筒に入れる。止まっていた木の根や周囲を足やピッケルで刺激を与えたがやはり他には飛び出してこない。捕獲した蜂をよく観察すると、オオスズメバチの中でも体が大きい。女王蜂の可能性も捨てきれない。
 以前、天狗平ロッジ敷地の巨木にスズメバチが巣を作ったことがあり、これを駆除するためスズメバチトラップを作ったことがある。基本成分は日本酒と砂糖である。スズメバチは獰猛な肉食昆虫として有名であるが、カブトムシなどと同様に樹液も好物である。今回はミズナラの根であった。9月24日のスズメバチがいた根も判然としないがミズナラの可能性が高い。「秋になって樹液が根に集まっている可能性も考えられるかも知れない」とMNNは分析する。だとすると、24日にオオスズメバチだけではなくキイロスズメバチも飛来してきたので捕獲しているが、その説明ができる。
 下山途中岩稜直下678mで登山道に落ちているスズメバチの巣の回収作業を行う。MNNが防護服を着込み、巣に近づく。巣は南側に生えているキタゴヨウから強風で吹き飛ばされ、登山道に叩きつけられたものらしく、下半分が壊れて内部が剥き出しになっていた。まず守っていた成虫2匹をピンセットで摘み取る。外皮を剥ぎ取って巣盤を用意したプラスチックの容器に入れる。巣盤から放り出された幼虫にはアリが集まり始めているものがあったので、これは残置した。外皮を登山道外に捨て、これで今回の作業は終了し、12:00帰宅した。
MNNに転送してもらった画像 赤丸に巣があるらしい
その後に転送してもらった上記画像の撮影地
丸森尾根を登り始めると虹が架かった
登り始めて間もなく、登山道脇にスズメバチの巣があった
壊れているが成虫が守っている
位置を記録するMNNと巣
標高810m、右手のミズナラから伸びている根にハチが止まっていた
しかし持参した画像とは違う
下山時にも同じところにスズメバチが止まっていた
根の同じ箇所に固執するスズメバチ
全体に大きく、胸(頭部と腹部の間)が黒い、オオスズメバチだ
上の画像を傾けて切り取ったのが左画像である、最初に受け取った画像(右)と比べてみる 石の形から同一箇所で間違いないだろう
同じく送られてきた場所と今回落としたポイント、これも一致している
678mまで降り、防護服に身を固めて巣の収容作業に取り掛かる
巣を守っている成虫を取り除き
巣を持ち上げる
落ちている巣盤を回収する
蓋を締めて終了
回収した巣盤と成虫
巣を回収した場所
胸部が黄色い キイロスズメバチの特徴である
巣盤の中でうごめいている幼虫
「こんにちは」巣盤の蛹です

終わり