登山者情報223号

【朝日連峰:針生平〜大朝日岳/1996年06月02日井上邦彦他調査】

祝瓶山への登山道を右に分けると、まもなく白布橋(潜り橋)である。取り付きに若干雪が残っている。平水時は砂防ダムのような潜り橋を難なく渡れるが、増水のため頭上の一本吊橋を渡る。恐ろしいと感じる人もいるようだ、一人づつ慎重に渡る。橋を渡り終えると白布平である。登山道の周囲には感動的なブナ林が続く。白布沢は飛び石伝いに問題なく渡れる。角楢橋も荒川を越える一本吊橋であり、渡渉はできないのでどうしてもこの橋を渡ることになる。登り始めてすぐ右へ踏み跡を分けてまっすぐ登ると、尾根末端の段丘に昔の屋根型テントを大きくしたような角楢小屋は、かつてのゼンマイ小屋を一般解放しているものである。二棟あり、手前は使えるが一棟は厳しい。便所はなく、水は角楢橋まで戻って本流の水を使う。このコースで一般登山者が使える山小屋はこの角楢小屋と大朝日小屋だけである。角楢小屋から河岸段丘によく発達したブナ林の角楢平を進む。緑の中に溶け込んでしまいそうな山道である。国土地理院の地形図と異なって、山道は山裾沿いについている。喉を潤すのにちょうど良い程度の小さな小沢を幾 つか越える。一部登山道が雪に埋もれており、急な斜面を下ると大玉沢の滝の下に出る。滝の右に洞窟がある、鉱山の試掘の跡ですぐに行き止まりになる。通常は滝のすぐ下を飛び石伝いに渡ることもできるのだか、現在は増水のため時に備えた一本吊橋を渡る。尾根に取り付くと、遭難慰霊碑がある。松の尾根にひたすら高度を稼ぐ。1,059mに「蛇引の清水」と書かれた黄色い標識がある。清水付近は一面雪に覆われているので、そのまままっすぐ旧道を登る。1,150mで右から登山道を合わせる。さらにひと登りするといきなり視界が開ける。1,190m、森林限界である。痩せてはいるが平坦な気持ちの良い尾根である。所々登山道が雪に埋もれているが、特に問題はない。最後にもうひと頑張りして稜線上にでると分岐の標柱があり、祝瓶山からの登山道を合わせる。北大玉山は野川ヌルマタ沢保護地域の標識があるものの、何処が頂上とも気付かずに過ぎてしまうかも知れない。鞍部からふた登りしてきつくなり始める1,450mに木製の標識があり、北西に踏み跡を分ける。ほぼ水平にトラバースすると水場であるのだが、水場は一面の雪で使用 できない。1,550mの小ピークで登山道は東に折れる。西へ下っている踏み跡は1,350mの緩斜地まで続いている。既にかなり薮化しているが、過去に下山時迷い込んで遭難したパーテイがあるので注意したい。平坦な主稜を辿るが登山道と分岐の標識は雪に埋もれている。まっすぐ南東に登ると平岩山のピークであり標柱が立っており、御影森山から来た登山道と合わさる。ここから引き帰したが、大朝日岳までは全て夏道となっている。
確認した花は、カタクリ・シラネアオイ(1本のみ)・ミツバオウレン(盛)・ムラサキヤシオツツジ・コヨウラクツツジ・ノウゴウイチゴ・ミネザクラ(盛)・オクチョウジザクラ・ムシカリ・イワウチワ・ショウジョウバカマ・ミヤマキンバイ(始)・ヒメシャガ(盛)・イワナシ・ヒメイチゲ・キジムシロ。

【朝日連峰:針生平〜祝瓶山/1996年06月02日菅野享一他調査】
徳網から先は砂利道となる。新車の方はお薦めできない。荒川の左岸を進むとやがて大きなブナやトチの樹林となり、橋を渡る。荒川の水は冷たく澄み切っている。橋を渡ったところが針生平である。以前は放牧も行われたと言うが、今は蕨園となっており、入山禁止のビニールテープが張られている。小屋が数件あるが、登山者は利用できない。針生平から正面右手に仰ぐ大きな尾根が目指す祝瓶山であるが、山頂は見えない。大石橋の袂で車道は終わる。ブロック造りは登山者カード記載所である。駐車場は5〜6台程度、山菜採りや釣り人の車で混む。下手をするとUターンができなくなるのでマイカーの場合は歩き始める前に向きを変えておくと良い。満車の場合は手前の砂防ダム付近にも数台分のスペースがある。大石橋はワイヤーにつかまりながら慎重に渡る。一本吊橋ほどではないが、年少者を連れた場合などは手を取ってやる必要がある。大石橋から10数mで道は二つに分かれる。まっすぐに進むと林道跡に出てしまう。左折して小さな沢(大石沢)を飛び石伝いに渡るのが正しい。渡り終えすぐ右手の大きな小屋もゼンマイ小 屋であり、利用できない。ジープなら通れそうな道を進む。周囲は二次林である。以前に白布橋の工事のための車道が荒川まであったが、今は荒れている。この車道跡の途中から標柱と標識に従って右折し、細い登山道に入る。荒川左岸の登山道からブナの樹間に広い河原が見え隠れする。手摺のついた丸木橋でスズイデ沢を渡るとすぐに分岐の指導標がある。水を汲むこともできる。ここで大朝日岳への道と分かれ、右手の尾根に取り付く。すぐに急な登りがあり一汗かく。尾根道が平坦になって暫く進むと、標高618m付近に右手のスズイデ沢に下る踏み跡がある。僅かの降りで水を得ることができる。これから登る尾根道が見えてくるとまもなく、標高780mで右手から尾根を合わせる。817mの小ピークを越えた鞍部がブノグラノタルミである。ここからはただひたすらに高度を稼ぐ。やがて登山道の周囲の樹木が疎らになり、潅木も次第に低くなり背丈ほどになると1,239mのイチノトに着く。岩の上に立ち、素晴らしい長めを楽しむ。西朝日岳・中岳・大朝日岳はもちろん、遠く飯豊連峰も浮かんでいる。山頂はまだ見えない。ここから山上 の快適な登山道となるが、左手の角楢沢源頭はすっぱりと切れ込み、思わず身体が右側寄りになる。山頂手前の1,350mピークは左側を巻く。このピークの前後にはたっぷりと雪が残っていた。残雪の下部は岸壁になっているので遊ばないように注意したい。巻き終わると指導標があり、左手から登ってきた主稜縦走路が合わさる。ここでようやく山頂と対面する。山頂への最後の登りは、足元に注意し、ガンコウランなどの高山植物に額をするようにして這い上がる。山頂は小さな草原になっており、三角店や標識がある。眼下に長井口の木地山ダムや桑住平と、そこから登ってくる急な尾根うえの登山道が見える。
確認した花は、ヤマツツジ・カタクリ・イワウチワ・シラネアオイ・ショウジョウバカマ・ミネザクラ・ムシカリ・キジムシロ・ミツバオウレン