登山者情報323号

【1997年10月15〜17日/実川口〜大日杉口/OnTheWay遠藤正明調査】
10月15日 普通列車で福島郡山と乗り継ぎ、磐越西線にて日出谷へ向かう。ここでNHK教育テレビ「中高年の山」シリーズの無名山塾主宰岩崎元郎氏と合流する。今日より4日間飯豊にて氏の講習登山のバックアップである。一行は私を含めて9名、タクシーにて実川ゲートに向かう。タクシー運転手と工事現場の方の好意によりゲートを開いていただいて、そのまま湯ノ島小屋まで。季節がらきのこ採りの方々も多く、こちらには開放はしていないそうである。林道歩きがなくなって小屋の時間を持て余しそうであったが、新潟のお寿司やさんや飯豊の歌を作っていらっしゃる方達と、しばしの宴会となり思わぬリッチな登山口の小屋泊となった。
10月16日 朝05時発。工事のトラロープの指示に従い入山。アシ沢は旧道を通る。渡るのに少々苦労。2〜3人靴を濡らしてしまうが、どうにかOK。増水時はかなりの困難だと思われる。ここよりひたすら登りで高度を稼ぐ。月山清水を通過すると、1,400m地点より道側に雪が現れる。やはり今年は初雪が早かった。そのうち雪道となり、騙しながら足を進めたが、1,700m地点でアイゼン着用。岩崎氏は12本爪、歩きやすそうである。私は8本爪、やっぱり安定しているが、他の6本爪の人達はやはりちょっと不安である。櫛ケ峰直下10:50、まもなく時折ガスの中から大日岳方面が望まれる。設置されている針金を過ぎ、牛首山ピーク12:05。ここより積雪も本格的であるが、前日からの暖かさと雨でクラストはしていない。その代わり抜かる所は太股までいってしまい、ラッセルに時間を費やしてしまう。大日かと思われるピークが次々に現れ急坂を登るが、なかなか本峰にたどり着けないが、ここでガスがさっと晴れ、青空の中にようやく大日岳が見えてきた。到着14:50。西大日岳御西・本山・北股・門内まで展望が素晴らしい。初冬の山並みが午後の陽射しに輝いている。沈む夕陽に追いかけられながら御西 へと向かう。こちら側はややクラストし、固めの雪質なので慎重に歩みを進める。夕陽を眺めながら16:30御西小屋着。日が沈むと同時に本山方面より満月が昇ってきて明るい。風が強くなってきたが、星も出て明日の好天を祈る。
10月17日 05:50発。雪はカチカチ。時々隠れ石が笹の所で抜かってしまうので、非常に歩きにくい。トラバースも慎重にアイゼンの歯を効かせる。間もなく熊の足跡が横切って行った。昨日現れたようだ。この寒さと雪の中、冬眠の場を探しているのだろうか?元気に越冬して、飯豊の山の中で原始のブナ森を守ってくれと願う。07:35本山着。プロカメラマンの内田良平氏横須賀山岳会のカメイカンジ氏と出会う。さすがに岩崎氏は顔が広く、両者と面識もあるので、しばし歓談。ここからは雪も少なく、融け出しているのでアイゼンを外す。本山小屋のすぐ先で、女性5〜6人と出会う。御西より先はアイゼン着用でと話をして別れる。御前坂下りで5人パーテイ、学生ワンゲルである。「山で若者が登っている姿はいいな」と岩崎氏も彼らを励まし、彼らも本日の大晴天が嬉しそう。昨日はこちらの登りもガスの中で何も見えなかったとのこと。今晩は梅花皮泊で、明日は仙台に帰れると言っていた。我々は当初ダイグラ尾根下山の計画であったが、大日での雪の具合から、地蔵岳〜大日杉へと下山コースを変更していた。そのため東北学院大パーテイと出会ったのだが、その後の事故は実に悼ましいもの です。ご冥福をお祈りいたします。
今回の飯豊本山登山で、所沢の竹内さん60歳が百名山を完登されました。本人の気力体力技術そしてパーテイの皆のバックアップもさることながら、彼女を支えた岩崎元郎氏の適切な指導とアドバイスは重要なものだと思われます。