登山者情報387号

【1999年02月28日/棚橋山/吉田明弘調査】

コースタイム6:20 豊栄発=7:03 上赤谷郵便局前着(鈴木さんと待ち合わせ)7:12発=7:20東赤谷着7:35発−7:55 230m地点着 8:00発−9:20 474mピーク着9:25発−10:40山頂(三角点ピーク)着 10:50発−11:00 600m付近着(昼食)11:43発−13:37 林道着−13:45東赤谷駐車地点着=月岡温泉美人の泉=豊栄着
飯豊連峰の最高峰大日岳より西に派生している尾根は、烏帽子山、蒜場山、俎倉山、馬の髪山と個性的な山々を従えて西に向かうに連れ高度を下げていく、その先端にある山が棚橋山である。棚橋山は一般的な登山道が無い。 この山に雪の締まり出す2月の下旬に登ろうと昨年秋に岡本さんと鈴木さんと約束していた。最初2月21日に登る予定だったが、私の都合で2月28日に伸ばしてもらい、結局岡本さんは都合が合わずに私と鈴木さんの二人で行く事になった。事前の調査の結果、東赤谷の部落跡の手前にある発電所のある尾根の一本東側の尾根に取り付き、474mピークを経由して棚橋山を目指すルートで行く事に決められていた。 6時20分、豊栄の自宅を出発。前日午後からの冬型の気圧配置の為寒い朝となった。路面にはうっすらと雪が積もっていて、道路は完全に凍結していた。ゆっくりと慎重に運転した。しかし、天気の方は心配していた雪も降っておらず、上空の雲の流れは速いが平野部では昨夜の強風はすっかり収まったようだ。上赤谷の郵便局前で鈴木さんの来るのを待つ。しばらくして新車に乗った鈴木さんが現れた。挨拶もそこそこに東赤谷に向かった。東赤谷はかつては鉱山で栄えた町だったが、鉱山が閉山した今は廃村となっている。部落跡の中央部分の路肩に車を止めた。 私はスパイク長靴にわかんを付けて、雨具のズボンを履いて、スキーセーターを着るといういつもの冬山スタイル、それに今回は藪山という事もあってピッケルを片手に持っていた。鈴木さんはニッカボッカに皮の登山靴にスパッツ、手には二本のストックという何処にでもいる冬山登山家のスタイルだ。このスタイルの差がいろいろな場面で現れる事になる。部落跡の平原を尾根の取り付き地点目指して歩き出した。鈴木さんは最初わかんを付けていなかったが、すぐに付ける事になった。尾根の取り付きはなかなかの急登でおまけに薮が邪魔していたが、私はピッケルを雪に深く刺し込んで支点の確保をして登ったが、鈴木さんはストッが深く刺さらない為ストックを逆さに持って深く刺し込んで支点の確保をして登った。雪は下の方は締まっているが上に新雪が積もっている状態だった。 尾根上に出たところで最初の休憩。風は微風程度だ。尾根上には所々鉈目がありうるさい薮も少なくしばらくは歩きやすかった。鈴木さんはダブルストックの為潜りかたが少なくバランスも取りやすそうだったので歩きやすそうだったが、私のピッケルは雪に刺してももぐる為この場面ではあまり有効ではない。左側に所々雪庇が出来ている為近ずかない様に注意して登っていった。 474mピーク手前はこのコース最高の急登で、雪庇も発達していたので右手の薮の中を登る事にした。藪の急登では鈴木さんはストックが邪魔そうだったが、私はピッケルの頭の部分を雪に刺したり、薮に引っかけたり、有効に支点確保しながら登っていった。標高380m付近から始まるこの急登にかなりてこずり、この標高差にして100m足らずの登りに30分以上費やしてしまった。474mピークに着いたときは、スタートから1時間45分が経過していた。この地点で初めて棚橋山の山頂が顔を出した。風も少し強くなったが、こんな程度の風は山ではそよ風だ。しかし、難所を通過したとは言え距離的には3分の1程度しか進んでおらず、思った異常に手ごわい山だと思ってしまった。そこから先は登りは緩くなり、雪庇の踏み抜きに注意しながら進んだが、快調なペースで登っていった。580mピークで下山予定の鉱石工場から伸びる尾根を合流し、山頂は目前に迫ってきた。 10時40分、棚橋山の668mの三角点のある山頂に着いた。三角点は無論雪の下で見えるはずもない。山の最高点はその先の674m地点だが、途中まで行ったが雪庇が右左両方向に不規則に伸びており、危険と判断しそこまで行く事は取り止めにした。山頂からは二王子岳、焼峰、五頭連峰、東蒲原の山々が望めたが、飯豊山は残念ながら雲に隠れて見えなかった。記念写真を撮って10分間景色を眺めて、風のないところで休憩する事にして一旦下り始めた。標高600m付近が窪地になっており、風にあたらないのでここで休憩する事にした。気温は0℃、今の時期にしては暖かく感じる。 ビールで乾杯し、ラーメンを食べた。下山は580mピークより東赤谷の鉱石工場付近に一気に下る尾根を取った。鈴木さんは以前岡本さんと2人でこの尾根より登ろうとしてあまり急な為に途中で断念したそうだ。岡本さんはその後三川側より登っているが、鈴木さんはそれ以来宿題の山になっていた。尾根はなかなか急で登りではとても無理だと思われた。その上登りに使った尾根に比べて薮がうるさく下りの割になかなか進まない。そして、最後近くにかなりの急斜面が待っていた。 鈴木さんはロープを取り出して、ロープに頼って下る事にした。私もそれに従おうとしたが、途中で面倒になってしまい。ピッケルを有効に活用して支点を確保しながら四つん這いで下っていった。そして、午後1時37分、下山に2時間近く費やしてようやく鉱石工場近くの林道に出た。道路に座り込んでわかんをはずし、1時45分、出発地点に戻ってきた。 鈴木さんとはそこで別れ、月岡温泉美人の泉で温泉に浸かって、豊栄に帰ってきた。とにかく低山といえども今回の山行はなかなか他では味わえない雪の藪山の楽しさを充分に味わった楽しい山行だった。