登山者情報428号

【1999年10月23日/大日杉〜地蔵岳〜飯豊山/井上邦彦調査】

星が力強く輝いている九才峠を越えて大日杉小屋に入る。ヘッドランプを点けて歩き出すし、ザンゲ坂上でカッターシャツを脱ぐ。長之助清水で水を汲んでいると、やや空が白けてきた。ランプを消して御田を通過、徐々に山が赤くなるが、それが朝焼けによるものなのか紅葉によるものなのか、判然としない。滝切合手前にある昔の水場(今は使用できない)で食事、ヘッドライトをザックに収納する。虹が掛かって程なく雨が降り始め、カッパを切る。地蔵岳からの展望は無い。登山道は落ち葉に埋まっている。目洗清水を過ぎた頃から足が冷たさで痛くなってきた。何時ものズック靴はサイドが大きく切れており、薄い靴下が見えている。落ち葉を通して雨水が染み込んできた。御坪付近からは、葉を落としたダケカンバの白い幹と枝が渾然として異形を呈している。種蒔山のトラバースに入り、小沢で水を補給する。登山道の脇に雪が出てきた。分岐点手前の小沢(切合小屋の水源)は水が細くなっていた。切合小屋で大休止とし、ラーメンを煮る。UWS・ODDと交信する。かなり迷ったが、ここでプラスチックブーツに履き替える。やはり雪の無い登山道は歩きにくいが、足は暖かい。軍手の上に雨用手袋、 ロングスパッツ、更には耳宛て付きの冬帽子を被り、細かい霰を含んだ風の中で快適である。草履塚登りの清水は流れていた。草履塚を越えると、所々登山道が雪で埋もれている。御秘所で東京から来た9名パーテイとすれ違う。中高年の女性を交えている。ぬくぬくし過ぎのためか、御前坂で息が切れる。上部は雪が付き、やはりズック靴では厳しかった。ガスの中、本山神社に到着、「本山小屋」と書かれた待望の新小屋と対面する。私を途中で追い抜き、川入から4時間で登ってきたと言う方が一人休んでいた。
本山小屋については427号で木内茂雄氏が記載している。小屋の位置、入り口の位置は旧小屋と変わりない。風除室に入り右手が管理人室である。土間に入ると右手に二階に上がる階段(梯子でない)がある。板の間の左手に更衣室が2つある。混雑時はこの中にも寝ることができるように工夫されている。板の間の土間側に細長く床が開くようになっている。靴を置くことができるようにしたのかもしれない。床下に工夫がなされていると思った。ラーメンを煮ながら二階に上がってみる。1階・2階ともに番号が振ってある。恐らく宿泊者のスペースを示したものだろう、69番目まであった。新潟側に風除室があり、冬期出入り口となっていた。外に出てみてみると、風の吹き付ける場所が冬期出入口となっている。ガリガリに凍るので苦労するかもしれない。また、他の窓は外からは開かないような仕組みになっている。全体的にステキな小屋だが、この冬期出入口は床が腐りやすいかもしれない。ともあれ作るのは大変で、できたものに文句をつけるのは簡単である。素直に新小屋の完成を喜びたい。

本山小屋入口(東から) 本山小屋冬期出入口(西から)
本山小屋内部 本山小屋から一ノ王子に向かう

ODDと交信をして出発。御前坂辺りで、しだいに視界が開けてきた。風の塊がちぎれ雲のように笹原を波立たせ、散生している異形の岳樺林を抜けて行く。脱色された草紅葉、先程まで残雪があった窪地には岩公孫樹達が緑・黄色を残している。

御前坂から御秘所と草履塚 草履塚から御秘所と飯豊山(一ノ王子)
駒形山から御西岳に向かう稜線 横断道水場から御坪・地蔵岳

草履塚の草地でカッパを脱ぎズック靴に履き替え身軽になる。ポツリポツリと登山者が登ってきた。視界はしだいに広がるが、大日岳だけは姿を見せてくれなかった。切合小屋を過ぎトラバース道に入ると、鮮やかな山肌が姿を現し、本山に至る稜線を眺めながら歩く。地蔵岳から下部が紅葉となるのだが、いまひとつ物足りない感じである。大日杉小屋は、旧小屋と道路を挟んで新小屋の建設が進んでいた。

駐車場04:40〜05:13長之助清水05:19〜05:45昔の水場05:52〜06:24地蔵岳(7,691歩)〜06:52目洗清水〜07:00食事07:08〜07:22御坪〜07:35食事07:36〜07:46水場(15,330歩)07:49〜08:00切合小屋(16,553歩)08:42〜09:06草履塚〜09:57本山小屋(22,546歩)10:30〜11:12草履塚〜11:17休憩11:26〜11:35切合小屋(27,963歩)〜12:05御坪〜12:21目洗清水〜12:43休憩13:01〜13:13地蔵岳13:20〜13:54休憩13:59〜14:33大日杉小屋(44,090歩)