登山者情報436号

【2000年02月05日/猿鼻山/井上邦彦調査】

先週の白倉山から帰って道具を乾かしていると、シールの継ぎ目が取れた。私の使用しているシールは本物のアザラシの毛皮で、今から25年も前に入手したものである。スキーはカナディアン、これは滑走面に鱗が付いているので、アプローチの林道ではシール不要である。しかし、最近エッジが丸くなり、一部剥がれてきた所もある。GZKから「・・・ならHZUでも曲がれる」と聞き、ついに新規購入を決心した。
まっさらの山スキーを携えて、自宅を出る。午後から子供を胎内スキー場に連れて行く約束をしているので、遅くとも昼までには自宅にか戻る必要がある。下山開始のリミットを10:00に設定する。
川原角集落まで行って、車を止める事のできるスペースをさがす。今日は天候が良いようだが,、除雪の邪魔にならないように車を駐車するのが、山を登らせていただく者としての必須条件である。
沢の袂から林道がある。川原角集落の観光蕨園へ向かうものらしい。林道の取付きに車を止め、山スキーにシールをつけて、7時3分出発。テンの足跡が林道伝いに続いている。今朝のものである。林道終点から上部は蕨園なので、広いゲレンデののうである。国土地理院2万5千図の490ポイントを通る。部分的に雪崩が出やすい地形である。尾根上に出ると目指す猿鼻山と掛摺山を望みながら高度を稼ぐ。

標高500m付近から猿鼻山を望む 猿鼻山への主稜

尾根上には僅かの雑木が残っている。下りは殆ど滑らない。テレマーク姿勢だと僅かに滑る。南側に雪庇が出てきた。550m付近からブナが出てくる。ルートを北側の急斜面に求めるが,クラストした部分は思うようにエッジが効かない。・・・スキーの欠点かもしれない。雪面が不安定で、雪崩た跡もあるので、弱層テストを行うが、問題なしと判断する。尾根上に出ると、結構痩せており雪庇が不気味だ。スキーではやや厳しいが、尾根上の樹木の枝を掴みながら通過する。小国町中心部がはっきりと見える。
小さな雪庇を越すと、北から大きく広い尾根が合流する。デフを括り付け、進路を南に変える。
目の前は素敵な斜面が登っており、下山の楽しみにワクワク。
できるだけ楽な部分を選び、もう一度雪庇を越えると、北西から大きな尾根が合流する。東に張り出している雪庇に注意しなければと思っている先に、隠れた亀裂に落ちる。ようやく脱出するが、風が強くなっている。カッターシャツ・オーバー手袋・冬帽子を付ける。どうも雪庇が気になるので、右の急斜面の雑木林にルートを取る。スキーのシールは真中のストレートで、全面ではない。そのためかうまく効かない。こんなことならスキーアイゼンが必要だなと呟きながら、エッジで登る。やがて広い雪面が風紋で波打ち、その上を粉雪が走る抜ける。枯れたブナの樹木に光が煌いている。
ようやく山頂に到着するが、雪庇が怖く最高点はパスする。飯豊連峰は残念ながら雲の中だが、夜蚊鳥屋山へと尾根が続いている。帰ろうとすると、KDGが付けたのだろう、「SARUPPANA」の板がブナの木に打ち付けられていた。

猿鼻山々頂から飯豊連峰を望む 猿鼻山々頂の標識板

さていよいよ下降に入るが,、ここで大変なことに気がついた。スキーと登山靴の固定の方法が分らないのである。様々な方法を試しながら下るが、やはり僅かのショックで外れる。さらに、生まれて初めての・・・スキーはどうにも勝手が違う。仕方なくキックターンを連発し、雪にまみれて下る。

枯松山と大境山を遠望する

直滑降で吹き溜まりに突っ込み前方に一回転した時、ザックの無線機のスイッチが入った。呼んでみるとLFDと繋がった。百石山から木内さんと下山してのんびりしているとのこと。
700mまで下ってようやく固定の方法を発見する。そうすると、何とかなるものである。結構曲がるのである。痩せ尾根は北側の急斜面を斜滑降で滑り、蕨園では大きなシュプールを描く。11時24分。車に到着。何とか子供との約束は果たせた。

07:03ツチハゲ沢〜07:24撮影07:27〜07:35分岐(450m)〜08:00ブナ出てくる(550m)〜08:16尾根上左雪庇〜08:21痩せ尾根終わり〜08:26小さな雪庇を越す(670m2,617歩)デフ設置〜8:40雪庇を越える(740m)〜09:05(830m)〜09:34猿鼻山々頂(982m)09:50〜10:44デフ回収〜11:24ツチハゲ沢