登山者情報438号

【2000年02月12日/栂峰/吉田岳調査】

中津川地区の小屋集落から登り始める標高1,541mの栂峰。マイナーな裏山というイメージがあるが、これが山スキーとしてガイド本に最高値の滑り快適度で載っている。これは行かない手はないということで、実は昨日も着てみたのだが、30分も歩いた所で、大雪のため時間と読図と天気に不安を覚え、引き返してきたのであった。しかしそこで多摩からござった4人男組と出会う。「5回目だけど人と会うのは始めてですよ」と言う。彼らは途中でテントを張り2泊して行くとのこと。もし明日晴れれば彼らのトレースを辿ることが出きるだろうとにやり。
思わくどおり晴れ空のもと、朝7時20分小屋集落を出発。昨日の反省から、今日は長く平らな林道歩きのために、シールでなくクロスカントリー用の滑り止めワックスを使用。「ズボッズボッ」というシール歩きに比べ「スースー」と進むワックス使用は大成功であった。多摩組のトレースを、今朝歩いたのであろうカモシカがそっくり借用している。更にその上を私が使わせてもらった。8時40分大きなブナの下で林道は終わり、沢を渡って、スギ林のやや急な登りに入る。多摩組は重い荷物のせいであろうか、スキーで登ってあるが、自分はここでカンジキに履き替えたやはりトレースを辿って歩いたが、そこを外れて直登してみると腰までのラッセルとなる。連日の大雪のためだが、雪質はパウダー。このまま気温が上がらないことを望む。途中カモシカと出会った。さっきのトレース泥棒であろう。10時10分やっとスギ林を抜け、ミズナラ・ブナ林に入り斜度も緩やかになってきた。そこでシール歩行に切り換えた。多摩組のテントを通過。ルートには赤い布切れがたまについてある。登りは尾根を辿って行けばよいが、小さな尾根がたくさんあるため、くだりはやや迷い易いと思われた。夕方から崩れる という予報だったっが、山の天気は早まって昼前から悪くなり始めてきた。12時20分、1,402mのピークに到着。栂峰まではあと1時間かからずに行けそうだが、途中に潅木帯となっている鞍部がある。多摩組が山頂から滑ってくるのが見えるが、それを見ても行く価値はなさそうだ。ここからで十分と判断。ガイド本には山頂まで4時間とあるが、ここまでで5時間もかかってしまった。自分がサボったせいでなく、大雪のせいであろう。
12時40分滑降開始。まさにスキーヤーが憧れるふかふかのディープパウダー。私もカナダ以来、日本ではこれ程のは始めてである.20mも滑れば息が切れ休まなければいけない程だが、何とか満足の行く滑りが出来た。さすが5つ星スキールートである。しかし吹き始めた風のせいでトレースが埋まり、ルート探しのため滑りにばかり集中してもいられない。テントを見つけスギ林上部に着いた。満足満足である。しかし、もしかしたら、ここからが一番の核心部かもしれない。枝打ち除伐、間伐、何もしていないこのスギ林のしかも急な斜面でどうなるのか不安を感じた。しかし意外にもこのふわふわ雪のためスキーが言うことを聞き、かつ転んでも痛くないだろうという気持ちから、大胆なスキーを楽しむことができた。14時40分林道終点に到着。休憩の後、ビンディングを解放してゆっくりと下って行った。15時20分無事下山。また今度は春に来てみたい。