登山者情報448号

【2000年04月02日/西俣ノ峰〜頼母木小屋/井上邦彦調査】

高度計308m、06:15川入荘発。06:21奥川入荘発、今度は事前にシールを貼ってきたのでスムーズに雪の上に出る。06:32堅雪なのでスキーアイゼンを付けてシモカバタ沢手前の尾根斜面に取り付く。尾根上に出るとスキーは使えそうもないので縦にザックに固定し、キックステップで登る。所々つぼ足である。ここで今年初めてマルバマンサクの綻びかけを見つける。豪雪年であるが、着実に春は近づいている。
07:12トラバースをして主尾根にでる。僅かだが松ノ木の根元に雪がない所もあり、部分的に夏道を踏みしめる。前回スキーで越えるのに苦労した部分を越えてから、07:20スキーを履く。当然、スキーアイゼンを着用する。07:42池ノ平(標高730m)でスキーアイゼンを外す。08:15〜21、急斜面になってきたので、ピッケルを出し、スキーを脱ぎ、スキーの先端に5mテープを取り付けザックに縛り引き
ずることとした。キックステップで登るが、乗り越え部分で雪が柔らかく、キックステップと膝を併用するテクニックで誤魔化し、尾根を越えるとクラストした斜面になる。08:36〜44、西俣ノ峰山頂(高度計1,060m、3,939歩)で始めての休憩。

西俣ノ峰直下から枯松峰と頼母木山 西俣ノ峰から枯松山

山頂でスキーを履く。西俣ノ峰を過ぎると風が強くなってきた。帽子を被りカッターシャツを着(それまでは下着だけで登っていた)、オーバー手袋をつける。下りはスキーアイゼンをつけたまま滑る。当然ながら全く曲がれない。09:31〜41、枯松峰山頂で、これからの上りに備えてお握りを頬張る。横滑りを多用して鞍部に付き、スキーを引きずることとしてスキーのトップをザックのサイドに固定し、キ
ックステップで登る。しかしこれはザックが後ろに引かれるようでうまくない。大ドミ(標高1,240m)でアイゼンを履き、スキーは完全に引きずる形とした。

登高途中から鉾立峰と杁差岳 枯松峰から西俣ノ峰と大境山

ブナ林を抜け、10:51に三匹穴の慰霊碑通過。この辺りから雪面は大根おろしのような氷の凹凸が一面覆っている。新雪が雪板層に波をうっている部分もある。アイゼンの調子が悪く数分毎に外れる。買い替えの必要があるだろう。だましピークをうまく巻いて山頂
直下の平坦部に出ると、風が凄まじい。ザックを置く余裕もなくそのまま直登して、11:46頼母木山山頂着。

大ドミから三匹穴 頼母木山頂の標識と地蔵尊
頼母木山頂から地神山 頼母木山頂から杁差岳

積雪はないが標識と地蔵尊は海老の尻尾に厚く覆われていた。ここでスキーを履いて小屋に向かう。風のためストックが浮いてしまう。斜面に関係なくスキーが風に流される。風紋で凹凸が激しく転倒、氷状の雪面に腰を打ちつける、痛いことこの上ない。途中からスキーを脱いで、12:08何とか頼母木小屋に辿りつく。
例年なら小屋の入口に雪はないのだが、今回は入口が3分の2ほど雪に埋もれており、入口が半分開いている。なぜか入口上部の窓が開いている。スキーとザックを投げ込み足から小屋の内部に入る。小屋の中は一面雪で真っ白、こんな経験は始めてである。二階に行って驚いた。冬期出入口の大石山側の窓が開いている。そもそも小屋の設計ミスで、風上に冬期出入口を作ってしまったものであるが、通常この窓は凍り付いて開かないはずだし、仮にあけたら閉じることが出来なくなる。それを何とかして開けた登山者がいたのだろう。結果、窓はガリガリに凍り付いてとても閉めることが出来なくなっていた。とりあえず管理棟側の窓を閉め、1階でラーメンを煮ることにした。秀の墓前に供えた酒を小分けにしてきたので、秀と喜美と3人で乾杯。

頼母木小屋 頼母木小屋内部

寒さのため両手が痺れて痛い。身体の震えも止まらないのでカッパを着込む。無線機でODDを呼ぶが反応がない。携帯電話はフル充電してきたにも関わらず、バッテリーがなくなっている。以後、いくら暖めてもバッテリーは回復しなかった。下山後、低温下ではすぐに消耗してしまうことが判明した。
13:36アイゼンもスキーも付けずに小屋発。頼母木山は旧道沿いに巻き、14:00ピッケルを抜いて鞍部からキックステップで三匹穴沢側に下る。若干下ってスキーに履き替える。鱗のような氷斜面を斜滑降し、新雪層でキックターンを繰り返す。2度ほど滑降しながらのターンを試みたが失敗し数m滑落、何とか雪面にしがみついて難を逃れる。三匹穴が近づいてくると快適なターンで滑降できるようになった。14:30慰霊碑でスキーを脱ぎ、再びキックステップで下る。氷面が雪面になった時点でスキーを履く。最低鞍部に赤旗のついたデフ棒が大量に放置されていた。
柴があるのでスキーの先端を持ち上げるようにして、スキーを引いて枯松峰に登る。15:16枯松峰通過。スキーを履き、何個所か風で抉られたような地形があるので、ルートに気を付けながら、大いに滑降を楽しむ。16:00〜06西俣ノ峰で休憩。ODDと無線が繋がる。下るに従って雪質が悪くなり、斜滑降とキックターンが中心になる。727m地点に着いた頃は、いい加減に疲れが出てきた。650mでスキーを諦め、担いで坪足で下る。
枝尾根に入り半分も下っただろうか。痩せた尾根に乗っかった2m程の雪の上から、下の露出した斜面に前向きのまま下ろうとした時、足元の雪が崩れ、さらにザックに縦につけていたスキーが雪に刺さって頭から落下した。たまたま雪のために折れた直径約30cmのキタゴヨウマツのささくれ立った切断面に顔面から突っ込んでしまった。顔をオーバー手袋で拭うと赤茶けた色がこびりついている。幸いに目はやられていないようだ。ザックを背負っているため立ち上がれない。オーバー手袋を外し、白い手袋を顔にそっとあててみると僅かの血液が数カ所ついているだけだ。どうやらオーバー手袋についていたのは、落ちた瞬間に身体を守ろうとして土がついたものらしい。あせらずゆっくりとザックやスキーをチェックし、タオルを鉢巻のように縛って止血とした。
かなり疲れている様だ。嫌らしい急斜面の茸雪を慎重に下り、途中から藪を下り、そこからスキーで斜滑降する。奥川入に挨拶し、17:50川入荘の駐車場に到着した。