登山者情報493号

【2000年08月05〜06日/石転ビ沢〜梶川尾根/菅野享一調査】

08月05日
朝7:00飯豊に初めて登るという4名を含め総勢6名パーティで小国を出発。07:30飯豊山荘駐車場到着。武田前会長と玉川駐在所が登山者指導にあたっていた。明日は高橋会長が来るとのことで、早朝からの登山者指導に頭が下がる。
朝食をとりパッキングし、08:30ゲート出発。天候はそれほど暑くなく、歩くには最適である。温身平砂防ダム9:00〜9:15いよいよここから山道である、先月も通ってはいるのだが違う姿を見せている。季節の変わるのは早いそれぞれの時期を確認したかのように花が咲き、早いものは実をつけている。しばらく行くと一株の真っ白なガクアジサイに出会った。日陰では薄青い花を咲かせているのだが。始めて見るような気がする。
09:45下ツフテ石からわずか登り、通称「うまい水」という枯沢で休憩9:47〜10:05(潰透した地下水が下部で湧き出ているのだが、連日の猛暑で水量が少なくなっていたが、やはり冷たくて「うまい」通常はここで休憩をとることにしている。
梶川出合い手前は川沿いの登山道が崩落しているため、高巻の新迂回道を利用するが、結構急坂で、足場も悪く滑り易いので注意を要する。梶川出合10:55〜11:10。ここから雪渓に上がるが崩壊が進んでおり亀裂も多く見られることから、約100mほど登り夏道を利用する。
雪崩に遭ったのか白骨化したカモシカの亡骸に遭遇。対岸の斜面にニツコウキスゲがちらほら見られる(★結構雪渓の厚い部分にもクラックが多く見られることから、安易なコース判断は危険である。また赤滝の岩場も滑り易く通過時は要注意)。
ほどなく石転ビノ出合に到着11:50〜13:00。今年は春先に降雪が多かったせいか、まだ雪渓は利用できそうだ。出合右岸の大岩下で昼食(湧き水にビ−ルとトマトを冷やす)。まずは安全祈願の乾杯。雪解け水の音とウグイス囀り、早春の中でざる中華やいなり寿司を頬張る。
ここからアイゼンを装着、この日の為に準備した8本爪アイゼンである。(★今の時期の雪渓には初心者には6本爪程度が良いだろう。使い慣れないと先に出っ歯のあるアイゼン等は歩きつらく、落石発生時等引っかけての転倒の危険があります。又、4本爪や簡易アイゼン等は、氷状況下では気休め程度と考えるべきである。雪渓ではアイゼンは必需品ピッケル・ストック併用も有効です。)。
石転ビノ出合の上部約60m程度が陥没していることから、現在は大岩の本流側夏道を登り上部からアイゼンを装着したほうが良いだろう(数箇所降雨により土砂が流され雪面を川のように流れているので、降雨時は落石の危険もあるので注意。歩行時は下から登っている登山者もいるので、足元の浮き石等に十分注意しましょう。もし落石があったら、「ラクッ」と叫んでください)。
雪渓では対流現象で暖かい風と冷たい風が交互に吹いてきます。ガスもかかり易く、休む時には荷物を転がさないように注意し、小沢の合流点や凹部を避け、上部に注意してください。石の多く転んでいる所も落石が集まってくる個所なので要注意です(★雪面をよく見るとスプーンカットになっており、峰が土で黒くなっていますから、峰を踵で踏むような歩き方をすると比較的楽になります)。
14:00ホン石転ビ沢通過。まだ雪渓はついており、晴れていれば問題無いが、ガスられた時は間違って入って行き、やがて急になり疲労が増し事故につながるケースもある(★先行する登山者がいる場合も、先行者が間違ったコースをとっていることもあるので、地図の確認やガスられた時には無理せず、安全第一に考えることが必要です)。
北股沢出合付近15:30,、峰沿いの草木からパラパラという音が聞こえてきた。しばらくするとポツポツと雨が降ってきた。今回はやみそうもないようなので、急いで雨具を着用する。次第に雨足が強くなってくる。フードを開けて落石に耳を凄ましながら、ようやく黒滝上部より草付き(中ノ島)へ上がる。滝は開いてきているが、まだ雪渓は十分使える。
場所はあまり良くないがアイゼンを脱ぎ夏道を登る。近くでは雷も鳴り始めた、右手(北股岳寄り)と左手(梅花皮岳寄り)の沢は濁流となり、登山道も小川と化し土砂が流れる。アラレかと思われる程に素手に当たる雨が痛い。様子を見ながらゆっくり登る。本当に雷は恐い。雨に打たれた身に傍らに咲くミヤマキンポウゲやシナノキンパイが愛想をかける(★飯豊のような岩山では、降雨時は保水力がないため一気に増水してきます。降雨がなくても上流部で降っている可能性も考え、渡渉時や登山道での窪地等では十分留意が必要です。雪渓歩行時も増水が引き金となり崩壊する危険もあります)。
16:00梅皮花小屋の関管理人へ無線で連絡、16:20小屋直下の広場着。まだ残雪が多く冷蔵用の氷を採取する。雨も小降りとなり、30m程の雪渓を登りようやく小屋へ到着16:35。予定より35分遅れであった。
夕日が沈む頃には雨上がりの虹も架かり、雪解けが早い小屋の周囲はもう秋の装いが感じられた。ほろ酔いで仰ぐ空には満点の星が輝き魅了する。今日の反省と明日の無事を祈りつつ就寝となった。(山荘からの所用時間 8:35) (★山標語:朝晩早く無理な計画事故の元)
【温身平〜石転び沢付近】
ガクアジサイ・ヒメイチゲ・アマドコロ・オオバキスミレ・タカネニガナ・サンカヨウ・ミヤマキンポウゲ・シナノキンバイ・ニツコウキスゲ・他
【梅花皮小屋〜北股岳周辺】
タカネマツムシソウ・イイデリンドウ・イブキトラノオ・コバイケイソウ・チシマギキョウ・ミヤマトウキ・他 08月06日
起床4:00まだ薄暗い、日の出は4:30頃だとのこと。次第に周囲が明るさを増し梅花皮岳方向から赤い太陽が昇ってきた。眼下には雲海が広がり大日岳も朝焼けに照らされ雄大な眺望を堪能する。雲がかかって最高のご来光は見れなかったが、久々に清々しい山小屋の朝を迎えた。
昨日、足を負傷し歩けない人が居るとのことで、急遽防災ヘリ「もがみ」を要請。負傷者の連れが飯豊は初めてとのことで我々と同行することとなった。ヘリ到着まで連絡調整でしばし小屋へ留まることとし、8:20パーティには先行してもらうこととした。
9:00負傷者をヘリに乗せ梅花皮小屋を出発、北股岳で祠に安全祈願し、ギルダ原の涼風に揺れる草花を堪能しパーティの後を追う。門内岳のピークを経由し小屋に着くと、ちょうどパーティの出発するところに合流した。門内小屋 10:00〜10:15。
扇ノ地紙10:45〜10:50、雪渓がまだ残っている。いつもより2〜3週間くらい遅いようだ。ケルン11:15〜11:30、地紙から採ってきた雪渓で「かき氷」を食べる。うま〜い!(★イチゴミルクの材料は装備品です)。
チングルマやキンコウカの群落を眺めながら、11:40梶川峰通過(★数カ所降雨による侵食防止に土留めを施工しておりますが、まだまだ整備は必要です。泥炭層1cm積もるのに10年先の時が必要なので、植物保護の為に出来る限り草付き部の歩行は避けて下さい)。
掘れた登山道を下り、ようやく五郎清水到着12:15〜13:30。連日の暑さのせいか水量も少ないが、相変わらず冷た〜い。下り1分上り 3分、でも飯豊に来たら是非飲んでいただきたい水です。
腹ごしらえが済んだせいか先程よりは下りは楽になり、滝見場着14:00〜14:10。ガスで稜線は見えませんでしたが、梅花皮滝と昨日に苦労した石転ビ雪渓が眺望出来ました。大ドミの鞍部から唯一の坂を登り切ると、赤ハゲ1021mに到着14:45〜15:00。
湯沢峰15:20通過。ここから飯豊山荘までブナ林〜岩場〜松峰と景観が変わってくる。飯豊山荘が眼下に見える頃が足にくる区間である。「ピコタン、ピコタン」無言の行軍の未、ようやく梶川登山口に到着16:35(梅花皮小屋からの所要時間8:15)。予定より1:35遅れであった。
【ギルダ原付近】
タカネマツムシソウ・ハクサンフウロ・クルマユリ・ミヤマリンドウ・イイデリンドウ・コゴメグサ・他
【門内小屋付近】
ホソバトリカブト・アキノキリンソウ
【扇ノ地紳・梶川峰付近】
ヒメサユリ・コバイケイソウ・ニッコウキスゲ・ハクサンコザクラ・イワイチョウ・イワカガミ・チングルマ・キンコウカ・ヨツバシオガマ・アオノツガザクラ・ママハハコ・オヤマリンドウ・他
今年は残雪が多かったようで、今回は春から秋花まで幅広く見られました、まだ見所は沢山ありますので、安全登山で楽しんで来て下さい。今回も忘れてしまいましたが、万歩計でのコース案内などがあったら楽しめるのではと思っています、情報ありましたらご一報下さい。