登山者情報504号

2000年10月04日/大日杉〜地蔵岳〜切合〜飯豊山〜切合〜三国岳〜五段山〜大日杉/井上邦彦調査】

(概略)地蔵岳までは紅葉はかけらもなし。御坪付近からカエデ類やミネザクラ等の色がついてくる。切合小屋からは紅葉が始まったといってよいと思う。飯豊山周辺のウラシマツツジやチングルマの紅葉が素敵。切合小屋から三国岳の紅葉はまばら。地蔵山から下部は、紅葉はなし。
夜の中津川街道を走っていると、車のライトに車道を横断している動物が見えた。残念ながら顔は確認できなかったが、体の大きさや毛の色や雰囲気からタヌキかアナグマのどちらかだろう。
スタートして暫くは朝露が気になったが、ザンゲ坂を登り始めると草はなく、快適であった。ブナが続く尾根道には純白のシロタマゴタケ(猛毒)がヘッドランプに浮かび上がる。月は出ておらず、大熊座の星がやけに輝いていた。ライトを消すと、星以外は全く何も見えない暗闇の世界である。
滝切合を過ぎると、ようやく空が白み始め、あれほど夜空を埋め尽くしていた星も数個を残すのみとなってきた。立ち止まっていると寒くなってきたのでカッパを来て食事を摂る。歩き始める、ストックを握る手が凍える、軍手をつける。振り向くと吾妻連峰の左肩が火炎のように朱色の雲が模様をなしている。地蔵岳を過ぎた05:37丸い太陽が光を放ち、まもなく上層の雲に吸い込まれて行った。
私は二本のストックを使っているが、以前の短いストック(妻が高校時代に使用していたもの)を冬山用に改造したので、ゲレンデスキー用を使用している。これが長くて不便である。そもそもゲレンデスキーでは下降に合わせた長さなのに対し、山では登りにも使うので必然的に短いほうが便利である。また、登山道では急斜面や掘れた道を歩くことも多く、頻繁にストックの柄を握ることになる。さらに両手でストックを握り、左右の斜面に押し付けることも少なくない。だから柄は太いほうが良い。登山用品店で売っている折畳式のストックは、薮漕ぎのためにザックに収納するために選択するのは良いが、歩いている途中でいちいち長さを換える暇はないから、むしろ自分の体型や使用方法に合ったスキー用を購入したほうが良いと思う。話が脱線したが、軍手だとストックの柄が滑るので困る。
ようやく体が温まってきたので、カッパと手袋を脱ぐ。花は殆どなく、僅かにミヤマアキノキリンソウとウメバチソウを見る程度である。地蔵岳を過ぎた頃から、部分的に赤色や黄色に色づいた木々が出てきた。淡い秋色の世界とでも言ったところである。目洗清水には標柱(∩という記号で表している)が2本ある。先の標柱は広場への分岐で、誤って立てたものである。手前の標柱から左に踏み跡を下ると、水が湧いている。昨年11月に単独で登った方のザックが今春にこの付近で発見されているが、本人はまだ見つかっていない。吾妻方面は天候が良いのだが、右手の飯豊山側から黒い雲が広がってきた。早めにザックカバーを付け、カッパを着る。
ダケカンバが出てくると秋色が一段と濃くなってきた。ミネザクラ・ミヤマナラ・カエデ類・マルバマンサク・ナナカマド・サラサドウダン等が色づいている。御坪には標識はなく、祠と剣がそこを示している。
ダケカンバの林を過ぎてトラバースに移り小沢を渡る。イワイチョウや草紅葉が、稜線の秋を教えてくれた。二つ目の小沢は切合小屋の水源である。モミジカラマツ・ウサギキク・ハクサンボウフウがまだ咲いていた・稜線の裸地の小山の所々にケルンが詰まれている。思ったより風はない。切合小屋の前のホースから水が出ていた。外にある便所は2穴に鍵が掛けられ、1穴が開放されていた。
チングルマが鮮やかに色付いている中、草履塚に上る。小沢状に水が流れているが、これは涸れることもある。草履塚からの眺めもやはり駄目。かろうじて北峰がうっすらと見えるだけである。姥権現は新しい赤い帽子と前垂れを付けていた。御秘所も難なく通過し、御前坂をじぐざくに登り、一王子の標識に着く。目の前に羽の付いた立派な標柱が立っていた。水場への分岐である。本山小屋で休憩、御西小屋まで足を伸ばすか迷うが、ともかく飯豊山まで行く事にする。
山頂でODDと無線がつながる。「腰が悪いのだから無理するなよ」とODDから助言を受ける。切合小屋付近から右足腿に若干の張りが生じ、歩幅を小さくしている。恐らく歩数も何時もより増えているだろう。天候がなかなか回復しそうもないので、ここから下山とする。
御前坂を下る途中から僅かながらガスが切れ始める。切合小屋でレトルト中華丼入りのラーメンを作る。最高の贅沢だ。種蒔山の表中を過ぎて七森にかかる。七森は幾つピークがあるのだか数えたことはない。もしかしたら数が多いという意味かもしれない。小国町の中心部に十四ケ森という所があるが、これは多数の盛り、つまり小山があるところから生じたという説を呼んだことがある。七森ももしかすると、多くの小さなピークが連続しているところという意味かもしれない。そんなことを考えなら歩を進める。始めの下り途中、実川側が崩れておりルートのように見えるが、正しくは尾根上にある。よく確認しながら下る。
三国岳を過ぎると紅葉は終わりになる。剣ケ峰の水場も気付かずに通り過ぎてしまった。最低鞍部から登り直すと、「地蔵岳水場道」と書かれた標柱があったので、まっすぐに掘れた登山道を進んだが、すぐ上で下から来た刈り払い道と合流した。どうやら道が掘れ過ぎたため、標柱から水場へ行く途中より地蔵岳へ向かう刈り払い道を作ったものらしい。エゾオヤマリンドウとミヤマアキノキリンソウが咲いている地蔵山々頂の窪地から真っ直ぐに登り、小さな池の側に立つ地蔵尊付近がピークとなる。五枚山で食事を摂り、五段山に着くと、りっぱな標柱と標識が設置されていた。
ここから左に下りずんずんと高度を下げる。途中にナラタケが出ていたが、全体として茸の季節にはまだ早い。尾根を下りきって水平道を進み、吊り橋を渡って大日杉小屋に着く。駐車場で下山者カードに氏名と電話番号を記入する。この下山者カードは行方不明者の捜索に大変に役に立つ。例えば、今回は三国岳と大日杉の間で出会った登山者は単独行の男性2名であった。仮に女性の単独行者を探すとしたら、少なくとも私は会わなかったことが証明でき、捜索範囲を絞り込むことができるわけである。

自宅→59.1km大日杉03:24(0歩)→03:40◇ザンゲ坂→03:58◇長之助清水→04:05∩御田→04:36旧水場降り口→04:49∩滝切合→04:52食事05:15→05:34∩地蔵岳(8,332歩)→06:12∩目洗清水→06:42御坪→06:50∩御沢分レ→07:11小沢→07:18小沢→07:21∩種蒔山分レ→07:25切合小屋(17,939歩)07:38→08:00∩草履塚→∩姥権現→08:250∩御前坂→∩一王子→08:43∩水場分岐→08:50本山小屋(24,625歩)09:09→09:18飯豊山(25,947歩)09:25→09:38本山小屋→10:27草履塚→10:48切合小屋(32,893歩)11:30→11:47∩種蒔→12:01∩七森(トラバース途中)→12:16鎖場→12:26三国小屋(37,558歩)→12:51∩剣ケ峰→12:59∩地蔵水場道(40,114歩)→13:05広場∩血ノ池(40,489歩)→11:19◇御前山(41,769歩)→13:37◇五枚山13:46→14:50◇牛ケ岩山→14:13◇∩五段山(46,184歩)14:18→14:40コブ山14:50→15:52大日杉小屋(53,228歩)

朝日が昇る 飯豊山頂
一王子の水場分岐 姥権現
草履塚途中から御秘所方面 草履塚から切合小屋と種蒔山
至福の一瞬(切合小屋にて) 種蒔山から地蔵岳方面
七森方面から種蒔山方面 七森方面から三国岳
地蔵山頂の地蔵尊 五段山頂の分岐
ナラタケ(食用) タマゴタケ(猛毒)
新大日杉小屋 登山者カード記入所