登山者情報511号

【2001年01月24日/風倉山/井上邦彦調査】

仕事の都合で自宅を出たのが10時を過ぎていた。次第に雪の壁が高くなり、人家の2階は見えるものの、平屋の車庫などは雪よりも低い有様であった。雪壁は除雪の目印ポールよりも高く、ポールを除雪していた。

泉岡地内の県道 ザル淵橋から風倉山
小玉川集落を過ぎて樽口峠の分岐まで行くと、予想外に林道が除雪されていた。愛車のスペースギアより遥かに高い雪の壁の間を登っていくと重機が除雪の最中であった。聞くとこの先で工事を行うために除雪をしているとのことである。邪魔にならない駐車場所を指示してもらう。林道分岐の標高が300m、車を留めたのが315mだから、15m得したことになる。
10:42出発。スキーを履いても40cm程度潜る。一帯は蕨園なので一面の雪原である。遠目には比較的穏やかな斜面に見えるが、実際に歩いてみると結構な急斜面もある。弱層テストの結果、雪は安定しているが、柔らかい雪が深いので、風が強く雪が締まっている尾根部を選んで登る。
風倉山を仰ぐ 樽口峠の看板は頭だけが出ていた

10:20(標高495m)展望台に着く。全て埋まっているが広い雪原なのですぐにそれと分かる。ここから杉林に囲まれた平坦な林道を進み、11:33(標高500m)樽口峠に到着する。大きなナラの根元に「樽口峠」と書かれた看板の「樽」の文字だけが確認できる。薄陽がさし期待を持たせる。ここまで全く動物の足跡を見なかった。
峠から北北西の尾根に取り付く。すぐに杉林を抜けてナラの薪炭林となるが、途中途中に驚くほど大きなナラが残っている。雪庇は北東に出ているが、雪庇というほどには発達しておらず、雪稜といった感じである。ところがこれが結構厄介で、風下側に出れば足元が崩れて登れないし、風上に出れば雪の上に出たナラの枝が邪魔をする。やむなく風上側の急な斜面をジグザグに登っていると、突然目の前5mの雪面から兎が飛び出した。兎も必死に斜面を登って逃げようとしているのだが、深雪に足を取られてモッコモッコとユーモラスに腰を持ち上げながら跳ねて、尾根を越えて行った。

いきなりウサギが飛び出してきた やっかいな雪稜が続く

雪稜を進んでいると、いきなり左のスキーに力がかからなくなった。スキーを調べてみるとシールがない。両手で周囲の雪を掘り下げ、シールを見つけた。どうやら右のスキーの先端で左のスキーの先端に取り付けてあるシールの金具を外してしまったものらしい。
雪を払ってシールをスキーに取り付け直すが、しばらく進むとまたシールが外れた。深雪のためもう片方のスキーをなぞるようにしてスキーを進めているためのようだ。そこでスキーの先端の穴にカラビナをかけたら、これが効をそうしたようで以後は外れなくなった。12:08(605m)ピークで右手からブナの尾根が合流する。
スキーの先端が雪から出てこないので爪先を上げようとしてもがくが、このままでは疲れるだけである。2本のスキーの先端にカラビナをつけ、それに5mのクライミングテープを縛り、一歩一歩先端を持ち上げてスキーを前進させることとした。ストックとテープの両方を一度に操作することはわずらわしいが止むを得ない。
14:30からの職場の会議の時間が刻一刻と迫ってくる。下山開始のリミットは12:40と決めているが、山頂まで行きたい気持ちが先に立ち、昼食は取らないことにした。地図と光度計で現在位置を推し量り、下山のタイミングをうかがいながら登る。12:41(675m)タイムアップで下山を決定する。

最高到達点から樽口峠を振り返る

シールを外し、13:44下山を開始する。急斜面の雪面を斜滑降する。足元から雪が崩れるが雪崩にはならない。できるだけ尾根上を下ろうとするが、僅かな傾斜でも登るのに苦労する。尾根上を強引に直滑降で下る。
13:20樽口峠を通過、13:35展望台を通過する。あとはひたすら滑降するだけなのだが、膝を越える雪がスピードを殺してしまい、思うように下れない。
13:49ようやく車まで戻り、急いで帰宅する。会議は・・・もちろん無事に間に合いました。