登山者情報513号

【2001年03月03日/大平〜風倉山/井上邦彦調査】

前回は山頂まで行けなかったので、今度こそはと余裕を持って自宅を出発した。小玉川で高度計を300mに設定する。やはり工事のための除雪がしてあり、今回は標高350mのプレハブまで車を上げ、現場の方にお願いして車を置かせていただいた。シールが外れないようにスキー先端にカラビナをつけ、08:51発。
ケラのドラミングを聞きながら、尾根沿いに高度を稼ぐ。雪原に丸太が何本か見えた所が展望台である、09:14通過(510m970歩)。杉林の林道に入るとウサギの止め足にぶつかった。食事の後も鮮明である。カケスが鳴いて飛んでいった。雪虫を今年初めて見つけた。09:28(510m1,761歩)樽口峠を通過。峠の標識の頭が露出していた。
左手の杉林の中に入り、雑木林を尾根沿いに進む。尾根は次第に狭くなっていく。やたらと兎の足跡が多い。前回の苦労とは打って変わって、時間的にも天候的にも余裕がある。足首までしか抜からないし、前回の山行で先の見当がつくので快適である。
9:46(620m)で右からブナ林の尾根が合流してピークとなる。シールを着けたままテレマークの要領で滑る。ついつい平坦な右斜面に入ってしまうが、雪質が良くないため歩きにくいので、尾根を忠実に登る。朝日連峰は見えているような見えないような微妙が天候である。670mで雪庇は左側に変わる。10:03(680m)前回引き返した辺りを通過する。弱層テストを行うと、粗目層と新雪の密着度はある。しかし、踵を高くセットしているので、20cm程の新雪と粗目層の間でスキーがずれを起こして神経を使う。
12:14(750m3,368歩)第1のピークに立つ。素晴らしい景観である。このまま尾根を下降するのは危険と判断、右斜面を一歩一歩階段状に若干下り、斜滑降で鞍部を目指すが、湿り始めた雪が重く、スキーの先端を浮かせるのに苦労し、最後は直滑降で頭から雪面に突っ込む。今日始めての転倒である。
右側に出ている雪庇の大きさはさほどではないが、尾根との境に亀裂が入っているようだ。スキーが二段階に嫌らしく沈み込む。スキーの先端が雪に潜り込まないように注意して登る。シールに雪が張り付いてすべりが悪くなり、足が重くなる。山頂の一角に出ると傾斜が落ちて広いブナ林となった。左手から急斜面を巻いて、最後の緩いのぼりを進むと、いきなり目の前に大花山が出現し、10:40(790m4,260歩)風倉山となる。
大花山の屏風状岸壁が見える。昔、この壁を登ろうと一人で取り付いたが、堆積岩のため適当な支点が取れず諦めた時、ヒメサユリと飯豊連峰と山麓の集落があいまって、やたらと景色にうっとりしたことが思い出された。
山頂からは梅花皮荘や梶川尾根下部が見え、稜線は残念ながら雲に覆われているものの、なかなかの景観である。握り飯を頬張り、シールを外し、靴紐を締め直して踝をバンドで固定し、11:00下山を開始する。
快適に左斜面と尾根を滑り、鞍部でスキーにカラビナをつけて坪足で引く。一転、腰まで亀裂に潜り、膝を越えるラッセルとなる。我慢できずにワカンを履くがそれでも膝までのラッセル。膝と両手を使って蟹のように急斜面を強引にトラバースし、11:25何とか1番目のピークを巻き終える。さらに、左右の斜面を使い斜滑降を繰り返すが、すきーが停止した瞬間、スキーから下部の新雪が一斉に雪崩れる。腕を深く粗目層に突き刺して体を確保し、落ちていく雪崩れを観察する。結構な規模になって視界から消えていく。この下は岸壁になっている筈であるから、巻き込まれたらひとたまりもあるまい。
登りになると、再びスキーを引いて坪足で膝までのラッセル。11:42小ピークに到着。後は快適に尾根上を滑降し、11:48(6,116歩)樽口峠に到着する。踵を開放して林道を進み、12:03展望台を通過。再度踵を固定し、尾根筋を滑降する。傾斜が緩い上に重い雪質だが、何とかターンを楽しみながら、12:10(7,105歩)プレバブに到着し、昼休み中の工事関係者に礼を言って車に乗る。小玉川で高度計を確認すると320mであった。山行中に20m分気圧が下がった計算になる。

笊淵端から風倉山 大平(小玉川蕨園)
展望台から飯豊連峰 兎の彩餌跡
樽口峠の標識 雪崩れが始まった
右斜面ののブナ林 尾根上を行く
枯松峰 雪虫
山頂付近のブナ林 風倉山山頂にて
山頂より大花山 山頂よりダイグラ尾根