登山者情報516号

【2001年03月24日/西俣尾根〜頼母木山〜頼母木小屋/井上邦彦調査】

前夜は山岳救助隊の反省会は民宿奥川入で開催された。そこで翌日は頼母木小屋まで登って見る事にした。早く寝るつもりが結局24時を過ぎて布団に潜り込む。外の明るさで起き、水を1杯飲む。昨夜の晴天から放射冷却現象でガリガリ雪になっていることだろう、スキーは最初から担ぐことにした。
05:38(標高300m)雪の壁を登り、上半身は下着1枚で出発する。尾根には末端からではなく、できるだけ雪の斜面を詰めて取り付く。やはり二日酔いと寝不足がボデイブローとなって、息が切れる。数日前から調子の悪い右膝が痛い。06:30〜06(400m)休憩を取る。前日、イリタイラノ峰から杁差岳を目指して入山した下越山岳会一行のトレースが残っており助かる。06:23(510m)主尾根に出ると僅かの間であるが夏道が出ていた。飯豊本山が見える。06:45斜度が急になってきたので、ピッケルを何時でも使えるよう腰バンドに刺す。06:55池(勿論雪の下)を通過し、07:03〜13休憩。二日酔いも次第に直ってきた。
07:46〜56(1023m6,498歩)西俣ノ峰に到着する。先人の足跡もこの僅か先でなくなる筈である。食欲が全くないので、ウイダーを1袋飲んで、日焼け止めを鼻の先と唇に塗る。いよいよスキーを履いて出発する。雪面のクラストがきつく、スキーのシールは効かないのでスキーアイゼンを着けて登る。杁差岳イリタイラノ峰を登っている登山者が見える。森林限界付近に幕営した跡が確認できる。彼らは最後の登りに差し掛かっているようだ。傾斜がきつくなってきたので、スキーを引いて登るが、キックステップでもきつめだ。
08:39〜46枯松峰でスキーブナの木に縛りつけてデポし、アイゼンを履く。枯松峰からの下りは、雪庇の崩壊が始まっており、やむなく尾根を歩くが、柴が出ており歩きにくい。5月の連休時には苦労するだろう。08:54〜09:06(1,130m)最低鞍部の露出している夏道で大休憩とし、食事を取る。全コースを通して柴が出ているのは枯松峰から鞍部までの間だけであった。09:29(1,300m)ダケカンバがブナ林に混じり始める。1,410mで森林限界を通過する。09:47(1,450m)三匹穴に出る。左端の慰霊碑が露出している。下降時におけるルート選択際難関である。赤布を3箇所ダケカンバの枝に結び、下山ルートを確保する。ふと気づくと、信じられないことに右手の尾根に向かうべくデフ棒が立っている。万一それを信じたら、とんでもないルートに入ってしまうだろう。
三匹穴から真っ直ぐに登り10:22ダマシ峰(仮称)に着く。ここでルートを真南に変更し、10:30 (1,750m15,221歩)頼母木山々頂に到着する。石柱は比較的遠くからも目立つ。地蔵尊は海老の尻尾に覆われていた。風も殆どない。日本海から朝日連峰で、大展望が広がっている。頼母木小屋に向かうと、二ツ峰の奥に越後三山であろうか、真っ白な連山が浮かんでいた。
10:34(16,222歩)頼母木小屋に到着する。例によって入口には雪がない。2ヶ所の固定具を外し外扉を開ける。しかし、何としても中扉がびくともしないのである。驚いて、大石山側にある2階冬期出入口に向かう。アイゼンを脱いで窓から覗き込もうとすらが、足場が氷になっており岩登りもどきのトラバースが要求された。何とかして覗き込んでびっくり、1階からの階段部分から雪が柱のように噴出している。それでも中にツエルトを張れば、何とか使えそうである。いったん降りて、小屋の周囲を回ってみると、新潟県側の窓ガラスが1枚破損しており、そこから雪が入ったものらしく、天井から数10cmの空間があるだけで、1階は全て雪でびっしりであった。私は入口でストーブを出し、例によってラーメンを煮る。下越山岳会一行は杁差岳からこちらを目指しているようだが、なかなか到着しない。無線でとTOJと繋がった。
11:32(17,383歩)、小屋を後にする。山頂を巻き、ダマシ峰(仮称)手前から旧道(勿論跡形もない)沿いに、一気に三匹穴を目指して下る。三匹穴で自分が設置した赤布を回収し、ついでに方角が誤っているデフ棒まで行って抜いてみると、雪に埋まっている部分だけが青い。かなり時間が経ったデフであろうと判断し、正規のルートに刺し直した。12:10森林限界を通過する。雪が腐り始め、所によっては膝まで潜る。12:25最低鞍部を通過して登りにかかると、本日始めて汗が出てきた。
12:38〜57(22,254歩)枯松峰でスキーを回収し、ここから楽しいスキー滑降が始まる。一部の登りはスキーを引くが、快適に進み、13:25〜13:38西俣ノ峰に到着。雪崩の音が聞こえ始めた。14:04〜07、620mまで下った所で、夏道に阻まれスキーを担ぐ。今しがた駆け下ったカモシカの足跡沿いに下り、14:13夏道になると分岐である。ここから急な尾根の不安定な雪道を下るが、背中のスキーがどうにも邪魔である。業を煮やし、ブロック雪崩のコースを見極めながら左の沢を下ることとした。とてもスキーで下る気はしない、雪崩コースによりルートを変えながら、最後はスキーに変えて直滑降で下の杉林まで下る。14:35(26,275歩)民宿奥川入に下山の報告をして帰宅。
なお、関英俊さんが先日、角楢小屋まで行って入り口を掘り出したので、使用できる。雪崩についてはさほどの危険は感じなかった旨、ODDより連絡がありました。

西俣ノ峰を仰ぐ 飯豊林道吹き付け〜温身平
西俣ノ峰から頼母木山 下越山岳会が登行中の杁差岳
雪庇の亀裂が待ち構えていた 枯松峰からダマシ峰
枯松峰を振り返る、この部分が藪化している ダマシ峰直下から三匹穴
頼母木山山頂、背後は地神山 頼母木小屋から大石山への稜線
頼母木小屋 左端が破損している窓
2階の状況、左手が盛り上がった雪の柱 1階の状況、中央部に2階への雪柱が見える