登山者情報517号

【2001年03月25日/茂松山の山スキー/吉田岳調査】

快晴。小国町大石沢樺沢の蕨野より上り始める、標高767mの茂松山。夏の間は地元の高校生や地域の人達がたまに登ったりしているが、私自身は近くに住んでいながら、今まで登ったことがなかった。この山を登ろうと決めたのは、その日の早朝である。朝6時、日が差していることに気づいて目を覚ました。今日の部落総会は昼の11時からである。何とか行って帰ってこれるだろう。布団から跳ね起き、朝食を済まし、何時買ったか記憶にないお菓子とジュースを棚の中から発掘してリュックに入れ、そして山岳会の事務局長に計画書をFAXし、家を出た。
除雪止まりの武宅前に車を置かせて貰い、準備をしていると近くのお婆さんがやって来た。彼女に夏道のコースを確認する。8時20分、スキーにシールを着けて出発。気温はおそらく2度、積雪は2m30cm位だろうか。雪面はやや固くなってきたが、時期の割にはまだ軟らかい気がする。樺沢川に流れ込む支流は全て雪に埋まっており歩きやすい。茂松山への直登コースは雪崩の危険性からも体力的な面からみても、止めたほうが良さそうだ。お婆さんに言われた夏道を登って行くことにする。しかし下りは正面の斜面をダイレクトに滑って来れそうに思われた。蕨野の最上部まで行き、そこから北側に回り込んで山頂より北へ伸びる尾根へ向かう。しかし尾根の直下は雪が下に引っ張られたために断層になっており、小さなクレバスも走っている。さらに尾根からは2m程の垂直な雪庇ができていた。スキーを担ぎ、安全そうな所を探し雪を崩しながら慎重に登って行く。尾根は所々夏道が出ている。そのためにスキーを外したり付けたりしなければならなかった。9時30分、茂松山手前の北峰近くまで登って来た。だいぶ見晴らしが良くなってきた。北側の林にはブナの巨木も所々に生き残っている。10時まであと30分、それまでに何とか登頂しなければならない。北峰と山頂の間にも雪の断層と巨大な雪庇が走っていた。樹木の生え具合、クレバスの走る方向、デブリやスノーボール、更に雪崩や亀裂の音にも注意しながら慎重に雪庇の上を歩いていく。9時55分、山頂登頂。感動が大きいのは意外とてこずらされたためであろうか。飯豊・朝日連峰がやや霞みながらも見渡せる。そして自分の住む地域・集落。西側の沢向かいには、ここより200mほど高い猿鼻山が見えた。
10時15分、いよいよスキー滑降開始である。やや緊張を感じながらも、先ずは北峰近くまでの稜線は来た道の雪庇の上を滑る。そして、そこからは一気に沢に向かって滑り降りることとした。先ず出だしの断層をクリア。次の急な斜面はもたもたしていれば雪崩の餌食となる。こういう時は雪面に優しいスキーをしたいところだが、何せ雪が重いためジャンプターンで滑り降りて行かざるを得ない。斜面の雪が集まってくる沢に入る手前で、左岸の林の中へ逃げ込んだ。とりあえず安心である。斜度が緩くなるまで林の中を滑って行き、そして登りの道と合流した。その近くでフキノトウを発見、お土産に持ち帰る。最後は蕨野と畑の上をスケーティングで下り、10時50分無事、車の所に到着した。気分爽快。僅か朝の3時間弱でかなり面白い山スキーを楽しめた。これから総会へ。そして同道と昼間から酒を飲むことができる。
PS 今年の里山は間違いなく豪雪であるが、3月14日からの連日の高温のため、尾根線は結構土が出ている。そのため雪庇や断層、クレバスそしてそれらの崩壊による雪崩には注意が必要と思われる。また硬雪になるのも遅れているようである。