登山者情報538号

【2001年06月03日/針生平〜大朝日岳/木内茂雄調査】

針生平車道終点4:00〜4:40角楢小屋〜5:15大玉沢出合5:30〜6:40蛇引ノ清水〜7:10森林限界〜7:35北大玉分岐〜8:40平岩山〜9:40大朝日岳〜【帰りは別パ−テ−と合流ユックリ写真撮りながら】〜4:20針生平

二日前の週間天気予報で今日は快晴の情報を得ていた。本来は小屋泊まりで行きたいところであったが、仕事の都合上日帰りを計画した。今シ−ズン初めての山行で勇躍として実行に移した。朝3時前にセットした目覚ましに起こされ、直ぐに身支度してまだ暗い星空の中を出発した。予定通り針生平で車を降り、登山靴を履き、歩き始めたのは4時であった。漸く明るくなった頃で、視界は良好である。直ぐに荒川を左岸に移る吊り橋を渡る、昨年の山開きの時は3〜4枚の板を渡してあったが、今日は1枚である。少し不安であったが慎重に渡る、そして、直ぐに針生小屋前を通過する。それから、次第に新緑のブナ林の中にと我が身は溶け込んでいく。足下には時々チゴユリ、ユキザサを見かける。道なりに迷うことなく祝瓶山分岐点に着く。右直角に折れて上がる祝瓶山方面を見ながら、数メ−タ−前に進み同じ様に、右直角に折れて2〜3m上がり、道は直ぐに左に曲がる。『此処で注意であるが、道は曲がらず真っ直ぐ行く方が鮮明であるが少し先で、崩れた道をかなり慎重にトラバ−スする技術を必要とする。』....無難な道をとった方が良い。そして、分岐から間もなく吊り橋(白布橋)を渡る。この辺りから、大玉沢出合までのブナの原生林は見事な新緑で一本、一本眺めながら歩いても退屈しない。やがて、また吊り橋を渡る、これはV字型した一本吊り橋で足を一歩、一歩慎重に乗せて進む。この角楢橋を渡り間もなく角楢小屋に着く。小屋の中には誰か居る様であったがそのまま先を急ぐ。そして、大玉沢出合まで1ピッチで来た。腹も空いたので朝食とする。食後、4つ目の吊り橋を渡る、昨年は沢底に近い処に心細い吊り橋が掛かっていたが、今は少し高い位置に立派なV字型一本吊り橋となっている。
そして、吊り橋を渡るといよいよ沢から別れ、蛇引尾根の急登となる。目の前には昨年同様ヒメシャガが咲いていて心を和ませてくれる。続いてウコヌツギが黄色の花をさかせており、少し目線を上げるとムシカリが白い清らかな花を咲かせていた。ヤマツツジもチラホラ見かける。毎年同じ処に同じ花が間違いなく咲いている。さて、この急登は張り合いがある、高度を稼ぐに従い左手に大朝日岳から伸びて来ている稜線が次第に見える様になる事だ。そして、その山肌には斑に残雪が付いている。蛇引の清水まで1ピッチ、小休止後30分で森林限界に出た。この辺りになるとマイズルソウ、カタクリ、イワカガミ、イワナシ、ムラサキヤシオツツジ、ミヤマキスミレ、エチゴキジムシロ、ツバメオモト、ショウジョウバカマ、ミツバオウレン、等が目立ちはじめた。森林限界では文字通り視界が広がり右後方には祝瓶山、そして更にその遠く向こうには葡萄色した空の中に、残雪をタップリ付けた雄大な飯豊連峰が浮かんでいた。そして、これから向かう大朝日岳の頂上辺りは残念ながら霧の中であった。天気予報を信じて先に進む、道は緩やかになり景色や道端の花を眺めながら、稜線漫歩を決め込む。
北大玉分岐辺りで飯豊方面を眺めると、左遠くに特徴有る“磐梯山”が見えた。平岩山までの間ではハクサンチドリ、シラネアオイ、アズマシャクナゲ、が咲いていた。後で聞いたところではミネズオウも咲いていたとのことであったが、私は見つけられなかった。この頃には大朝日岳もクッキリ見えて快晴であったが、風が強くなってきた。平岩山頂上を下り平らになった辺りにはミヤマキンバイ、白く鮮やかなハクサンイチゲ、ウスユキソウ、そしてこれからのチングルマが咲いていたが風が強く写真が撮れない。それどころでなく、帽子が飛ばされないよう押さえている手が悴んでくる。風の当たらない小藪の陰に入り、ナイロン紐で帽子を顎に縛り付けた。今回は油断した、夏場でも手袋が必要ということを....。後はポケットに手を突っ込んで歩いた。風はますます強くなり時々よろめく、そして、道は既に大朝日の草木の無い岩だらけのジグザグ登りになっていた。更に風は強くジグザグの道が風上に面する時は息が出来ない程だった。『昔、冬山はこんなものでなかった』と、自分に言い聞かせ、風下に面した時に思いっきり息をする。このガレ場の登りは霧や雨の時道を間違いやすい様だ、所々に鉄柱が立っていたりこの冬の雪に倒されたりしている。“騙しピ−ク”を登り大朝日岳最後の登り中腹でJM7-ODD他三人の仲間とすれ違った。“頂上に行ってから追いつく”と二言三言話し、私はピ−クを目指す。“マッキンレイの風はこの比ではないだろう”と下を向きながら考えて居る内に頂上に着いた。
向こうには葡萄色に浮かぶ月山が見えた。そして左直ぐ下方には大朝日小屋が見える。折角来たので360度眺めながらデジカメに収める。今来た道を振り返ると直ぐ下に平岩山、その向こう下には北大玉分岐、そして遙か遠く向こう下には森林限界まで見られる。“あんな遠くから良く此処まで来たものだ、文明社会と言えども車、バイクではとても此処には来れない。つくづく親から貰った足に感謝する。”6年前に来たとき同様に有ったミネザクラを横目に、今すれ違った4人を追いかけ今来た道を下る。相変わらず風が強く、素手を出していられない。ポケットに両手を突っ込んで下る。まだ若い時の様に下りには自信が有るが、これは人には勧められない。
先刻、風除けした小藪の処で4人に追いついた。この後は言うまでもないが“大のアルコ−ル嫌いのODDと一緒になれば言わずもがな”である。写真を撮りながら、また好きなことをしながらノンビリと下ったので登りより余計時間を要し帰路についた。後、付け加えるならばODDの良いところで、山の帰りには率先して落ちているゴミを拾い集めて持ち帰る事だ。『一部のマナ−の悪い人によって、山が汚される事に憤りを禁じ得ない』もう一つ、帰路気が付いたが、来週“朝日の山開き”なので下の五味沢部落の人達によって途中の危なかっしいハシゴも修復され、大石橋の吊り橋も板が2本に増やされ安心して渡れる様に整備されていた。                  

角楢の吊橋を渡る ムラサキヤシオと祝瓶山
シラネアオイ 祝瓶山と飯豊連峰を背景にして
平岩山分岐手前から飯豊連峰 平岩山分岐手前から大朝日岳
平岩山から大朝日岳と中岳 ミヤマキンバイ
大朝日岳山頂から月山 JO7-AQL 記