登山者情報556号

【2001年7月07〜08日/五段山〜飯豊本山〜大日杉/木内茂雄調査】

メンバ−:JM7ODD,JO7AQL,新潟女性二人/計4名、帰りいわき市吉田氏合流
タイム:(7/7)川入切合登口5:55→6:25岳谷ブドウ沢口→7:30五段山7:40→8:20牛ケ首山→8:27五枚山→8:50御前山→9:15地蔵山→9:22水場道入口9:30→10:20三国小屋11:05→11:45七森→12:12種蒔山12:20→12:42切合小屋→13:07雪渓13:40→13:52草履塚→姥権現→14:20御秘所→御前坂→15:25一王子(水場への分岐)→15:35本山小屋→飯豊本山をピストン(片道13分〜15) (7/8)本山小屋7:08→8:35草履塚→9:40切合小屋→10:45御沢入口→(黒井堰ピストン片道約5分)→10:45お坪12:00→13:20地蔵岳13:35→14:30長之助清水→15:10大日杉小屋  〔タイムは普通の中年女性が歩くペ−ス/後尾で写真を撮りながら追い付ける程度、450枚撮影〕
記  録
(7/7)1週間前の天気予報では曇と雨模様であったが、木曜日には晴れが出始め、前日の金曜日夕方には“夕焼け”となった。当日の朝、稜線を見上げると雲が切れハッキリと山が見え、前途良好に感謝する。民宿惣兵衛の所から右へ曲がり、大日杉小屋に車を一台置いてきた。そして、此の民宿の前から左に再度2車線道路を走り続ける。始めての道なので遠く感じたが、高度を稼ぎながら15分程度走りトンネル手前で通行止めとなる。此処に車を置き、トンネル直ぐ手前を右に入る。小沢を左に見ながら山道を数分進むと“川入切合登口”の標識が立っている。
此処から登りらしい登山道となる。ブナ林のジグザグ道で、尾根沿いを高度を稼ぐ、ギンリョウソウを見かけるだけでイワウチワははるか前に咲き終わっている。30分で急な登りが終わり平らな稜線に出る。“岳谷ブドウ沢口”の標識が立っていて、左、月夜岳1.1K、右、五段山1.4K とある。小休止して平らな道を右に進む、目立つ花は無く、終わったイワウチワ、マイヅルソウ、ツクバネソウ、赤い実がなり始めたツルアリドウシ等である。なだらかなブナ林を、快晴の空を見上げながらご機嫌で歩く。すると、トンボが多いのに気が付く、いつも思うのだが‘トンボはなんでこんな所まで来るのだろう?物好きに....。’と。トンボの方も‘人間は馬鹿だなあ、このクソ暑いのに物好きに!....。’と。そんな事を考えていると又、気が付いた、血を吸う虫の居ないことだ。先週まで襲われる如く刺されて閉口したが、今日は全く刺されないどうしてだろう?ことによるとあのトンボが虫を食べてくれたのかもしれない。
道は小さいピ−クを何回か登って、やがて平な道になると見覚えの有る五段山に着く。シッカリした丸木の標識に右、大日杉小屋、左、三国小屋方面を表示している。三国小屋方面に1m曲がり、直ぐ右に3m進むと小さな池が有り、今年もカエルの卵らしい白い塊が幾つも水の中に見えた。五段山の頂上らしくない頂上を数分下ると右に“水”という標識が有ったのだが見落とした。花はミツバオウレン、ショウジョウバカマ、ガクウラジロヨウラク、ツマトリソウ等を見かけ、その他花の終わったユキザサ、タケシマラン、チングルマ等が有る。牛ケ首山近く湿地帯でヒメシャガらしい葉を見つけた。昨年同様、その先の道脇に咲き終わったミズバショウが右の灌木帯の中にまで10数株も連なっていた。そして、日当たりの良い所にヒメサユリが数輪咲いていた。いよいよ花の始まりの様だ。そして、五枚山〜御前山〜地蔵山へとなだらかな起伏を通過した、途中ゴゼンタチバナ、モミジカラマツ、イワカガミ、シラネアオイ、ミヤマクルマバナ、ズダヤクシュ、そしてアカモノは所々に有った。これまで来る間の水たまりに直径15pもある岳樺を切って渡してあったが、何十年も風雪に耐えて育ってきたものを切るのは無造作過ぎないだろうか....?。
水場道入口も過ぎ“剣ケ峰”の辺りになると、ハクサンチドリ、シロバナタカネニガナ、タカネニガナ、ミヤマクルマバナ、が競い合う様になってきた。その他にもイワイチョウ、コメバツツジ、ミヤマキンポウゲが少し咲いていた。剣ケ峰の登りでは、岩肌にガクウラジロヨウラクが一株風情をもって咲いていたのでデジカメに収める。剣ケ峰の岩肌の距離はそんなに長く無いが、岩に慣れていない人は2ケ所緊張する部分が有る。それと素人の人は下りのル−トにしない様勧めたい。三国小屋で一休憩、快晴に感謝し麦の泡で自分に御神酒をあげる、そして生きている事実に“感無量!!”を一瞬に感じる時でもある。ノンビリと辺りを見回す、本山方面と言うよりは360度快晴で遮るものはない。
また、花を眺め眺め稜線漫歩と決め込み登り出す。途中で珍しい花を見つけた。葉はニッコウキスゲで花は薄紫で花の形はランみたいなものだが何だか判らない。勿論デジカメに収める。その他、ニッコウキスゲ、モミジカラマツ、ミヤマカラマツ、ハクサンチドリ、と至る所お花畑である。まだ忘れた花もあるだろう、とにかく書ききれない。お坪程ではないがヒメサユリも多い。けれど盛りは過ぎた様だ。そんな写真を撮りながら種蒔山に着いた。その直ぐ先にかなりの残雪が有り、水場になるほど融雪水が流れていた。その残雪をトラバ−ス気味に切合小屋に下る。右下は御沢の雪渓に繋がっていて滑落すれば、まず少なくとも重傷だろう。慣れない人はアイゼンにストックで確保しながら注意して通過すること。『そんな講釈を語る私が雪渓を渡りきろうとする時、見事に足を取られ2〜3m滑落して藪で止まった。こうも簡単に滑るとは思わなかった、油断は禁物である。』
この辺り、チングルマのお花畑なのだがまだ少しの花しか見られない。そして、切合小屋を過ぎてからだったろうか白のハクサンチドリを二株見つけた。その他ツマトリソウ、シロバナヘビイチゴ、小屋の辺りからヨツバシオガマも目立ち始めた。

草履塚を登り始めると間もなく残雪を少し登り雪の切れた所の岩道には水が川となっていた。そこを過ぎまた残雪の上を歩いた後、雨で抉れた登山道を歩く。雑木が頭の上を覆い鬱蒼としていてトンネルの中を行く様だ。それを過ぎると間もなく草履塚頂上である。見晴らし良く姥権現から御秘所、御前坂本山と手に取る様だと表現出来る。鞍部に有る姥権現まで、ベニバナイチヤクソウ、ミネウスユキソウ?、ムシトリスミレ、ダイモンジソウ、マルバシモツケ、オノエラン、まだ蕾をもたないクルマユリ、と飽きる程花がある。姥権現で同行のODDが面白いことを言ったのでそれを記す。『この権現様の由来は、昔飯豊山は信仰の山で女人禁制であった。ところが、ある時若い美人が変装して登って来たが此処で神に見つかり姥にされてしまったと、更にそれは顔だけで胸は豊満なバストで乳首もあると言う。嘘と思うなら胸に掛けて有るブラジャ−を上げてみろと相成った。そこで物好きにも誰かがそのブラジャ−なる涎掛けを丁寧に持ち上げた。成る程バストは有り乳首も有る、証拠の写真も撮った。....罰が当たるだろうか...?。』
そして、また歩き始める。関心を花に戻す、ミヤマダイコンソウ、コケモモ、ハンショウズル、コツマトリソウ、オヤマノエンドウ、白種も、イワウメハクサンフウロ、イワギキョウ、白種も、ミヤマキンバイ、キバナノコマノツメ、クチバシヨツバシオガマ、アオノツガザクラ、イブキトラノオ、ヤマハタザオ?、等記すのに疲れた。山の状況は、御秘所の一寸した岩場を登り、本日最後の御前坂のジグザグ道をユックリと登る。そして、これらの写真を撮りながら。坂を登りきると“一王子”の標識が有り右、水場と表示されている。ODDが今晩の料理水をと、直ぐ下に有る残雪を取ってきた。傍らのビニ−ル袋には抜かり無くビ−ルを冷やしている。
目と鼻の先の小屋まで数分である。少し前の情報では二階の窓が壊れていて、一階の床が水浸しと言われていたが、一階の西側の壁が濡れていて床は少し水気を含んでいた。翌日、もう一度見ると壁は乾いていたが、その上の梁には水滴が付いていた。恐らく冬に雪が吹き込み、その融けた水が今でも天井裏に残っているのだろう。そして床下に靴を入れる様にピットの蓋が何カ所も有るのだが、木の床は膨張してビクッとも動かない。一枚だけ辛うじて開いた。それから、二階の冬用引き戸を見てみた。内外ともピッケルで突っついた傷跡が生々しい。この戸は新潟県側に有るため冬は凍り付いてしまい、ピッケルでこじ開けるしかない筈だ。今はガラスでなくプラスチック製の透明な物がはめられているが、冬に開かなければたたき破られるだろう。避難小屋の意味を考えてこの構造にしたのは大いに疑問だ、早く反対側に冬用入口を付けなければ非常用に使えないし、小屋の寿命も短くしてしまう。当局の対策を是非いそがれたい。
さて、一服後本山まで足を伸ばす、頂上付近に咲き終わりのチングルマとハクサンイチゲが有り、綺麗なムシトリスミレが紫鮮やかに幾つも咲いていた。更に早くて驚いたのはイイデリンドウが咲いていた事だ。そして、今日一日、もの凄く恵まれた幸せに同行のお二人は行き帰りスキップを踏んでいた。いや、此の梅雨時に此の素晴らしい夕焼け、誰もがツイテいると思った事だろう。その夜は、気分も食事も豪華なデイナ−パ−テイ−で盛り上がったことは言うまでもない。
(7/8)夜中12時頃目が覚め外に出た。こうこうとした月夜で、大日岳も月明かりに浮かび上がっていた。夜明け前に早立ちのグル−プが起き始めた。外に出て日の出を待つ、やがて蔵王の上の方に太陽が“今日も快晴だよう”と約束するかの様に顔を出した。全く幸せの一瞬である。後は小屋に戻り、何となくまだ有った酒で今日一日の快晴に御神酒をあげること暫し。
帰路は切合小屋まで同じコ−スなので簡単に記す。
5人で花々を眺めながら、はてまた遠く磐梯山、吾妻連峰、蔵王、朝日連峰、鳥海山、月山、近くに飯豊の峰、峰を見渡しながらの大名旅行だ!!!二日間も快晴だなんて本当に信じられない、“心に曇り一点も無し”幸運に歓声をあげた。草履塚の下り、雪渓の切れた所にハクサンコザクラが二本咲き始めていた。此処で、快晴の空を見上げながら一回目の大休止。そばに流れている雪解けの冷たい水で、非常用のブランデ−を水割りしてしまった。
切合小屋の先で左に“お坪”方面へと雪渓をトラバ−スする。滑れば“御沢”に真っ直ぐ滑落してしまうので、本来、夏道に出るには左下斜めに下るのだが、敢えて向こうの笹藪目がけて斜め上へと、キックステップしながら慎重にトラバ−スした。その先もう一カ所神経を使うトラバ−スが有った。この時期安易な装備は危険である。後は、問題無く御沢分岐まで夏道である。この分岐にザックを置き、御沢に有る山形県文化財遺跡の黒井堰を見に5分程下った。“江戸時代、上杉藩の黒井何某が手堀で隧道を掘ったという遺跡である。”ザックに戻り、数分先の御坪で休憩とする。此処から飯豊本山を、岳樺の林の庭園越しに眺める景色もまた格別である。国立公園でなければ此処に家を建てて一生住みたいものだ。花はと見回せばコキンレイカが蕾を付けているし、まだまだのマツムシソウがそこかしこにある。それから、ここら一帯のヒメサユリ街道はまだその名残を楽しめる。その他は先週と同様なので省略する。地蔵岳を下っている時だったか?ウサギギクも咲き始めた。JO7AQL 記

花の頁