登山者情報595号

【2001年11月04日/湯ノ平〜北股岳/井上邦彦調査】

早朝3時前に起床し、新発田市役所でゲートの鍵をお借りして加治川ダムに向かう。途中でヘッドライトに狸2匹、狐?1匹が道路を横切る。加治川治水ダムでゲートの鍵を開けて、駐車場に到着する。自宅から95.0km、加治川治水ダムからは8.9kmであった。
05:29スパッツを履き、ヘッドランプをつけて駐車場を出発する。湯ノ平までは標識が豊富である。掛留沢・曲リ沢・曲リ沢平・山ノ神沢・山ノ神平・岩越沢・岩越平(ちょうど駐車場から1.7km、湯ノ平まで1.7kmと表示)・北股平・北股登り・水天狗の標識がある。北股平から落ち葉で滑るジグザグの登山道を慎重にくだり、06:00北股沢の吊橋を渡る。12℃、ライトを消す。急登に備えてカッターシャツを脱ぐが、途中から雨が降ってきたので、段丘に出た所でカッパを着る。06:25〜34湯ノ平山荘に到着する。ここで玄関を借りてお握りを頬張る。建物は明日完成検査とのことで最後の仕上げ日である。今までと全く異なる近代的な雰囲気の建物で、すぐ脇には水洗便所が4穴並んでいた。ただ建材の臭いがきつかった。小屋の標高は520m、ここから梯子と鉄鎖の急登を登る。途中に梢の太い枝がボキボキと折られ萎れた葉のついた枝が幾つか引っ掛かっているミズナラの樹があった。明らかに熊がドングリを食べた跡であろう。ブナの林をトラバースして左隣の尾根に取り付くが、枯葉で足場が埋まっており歩きにくいことこの上ない。直上して、最小のピークが07:06(880m)鳥居峰、標識が岩の上に置いてある。このあたりから上部は、高木は全て落葉している。
07:34〜40(950m)再びお握りを頬張る。細かいアラレが降ってきた。気温8℃休むと寒い。高度が上がるにつれて、落ち葉の上に雪が次第に積もって行く。ストックを握る素手が冷たい。クリタケが雪の間から顔を出していた。雨用手袋を着用する。靴下がビショビショになってきた。軽登山靴が古くなりあちこち剥がれているので、前夜に施した防水スプレーが効かなくなっているようだ。08:00(1,050m)尾根から右に曲がり、水の流れている沢状の登山道を進む、気温は2℃。08:16(1,080m)滝見場通過、08:38(1,280m)寅清水を通過、雪は小降りになってきた、2cm程度の積雪。さらさらした雪で足場が判然とせず、歩きにくい。足が冷たくて痛い。寝不足のため食欲がなく、羊羹とウィダーインを食しながら登る。09:00(1,030m)中峰、標柱が斜めに倒れている。気温1℃、積雪3cm。
ここまでは比較的順調であったが、この先が予想外であった。潅木になると、若い鹿の角のように白く覆われた枝が登山道を閉ざす。さらに登ると、雪の積もった笹が登山道を覆う。次第に太くなるネマガリダケがびっしりと登山道を埋め、ついには、登山道が分からなくなる。両手で雪を押すと固まった雪面に亀裂が入り、ようやく1歩を踏み出す。ペースが大幅にダウンする。登山道が何処にあるか分からなくなり、下山が心配なので赤布(デフ)を取り出す。右手の急斜面(草地)との境を登ると、時折登山道らしきラインが出てくるが、すぐに分からなくなる。以前に登った記憶と照らし合わせながら登る。視界は数十m、アラレを含んだ風が頬を叩く。ぐしょ濡れの登山靴は冷たさが感じなくなったが、軍手の上に着用している雨手袋やザックカバーはバリバリに凍り付いている。カッパの風防を被る。11:05高度計は2,060m、傾斜がなくなり山頂(2,024m)はすぐそこにある筈なのだが、ネマガリダケとハイマツのため膝下のラッセル、とても進めたものではない。このままでは下山が心配である。山頂直前であるが、下山を決める。
12:27〜36休憩、気温0℃。12:57(1,050m)通過、13:43鳥居峰通過し、14:12〜15:11ようやく湯ノ平山荘到着し、梅花皮小屋で食べる予定であったラーメンを煮る。仕事をしている大工さんに聞くと、今回は小屋だけで風呂は手をつけていないとのことである。満腹になると他に人がいないのを良いことに女風呂に行き、カッパを脱いで湯船に身を沈める。痺れていた手と足に徐々に感覚が戻ってくる。対岸の紅葉は見事である。このまま何時までもお湯に浸っていたい感じである。
入浴の後の登りは何時もながらかったるい。のんびりと歩く。15:38北股沢吊橋を渡る。小屋が完成するとこの橋も撤去されるのだろう。ブナ林の黄葉に染まりながら歩いているとまた雨が降ってきたので傘をさして歩く。落ち葉に埋もれた木の根で滑り転んだ時、うっかり右手首をついてしまった。今回は始めに腰バンドをつけることを忘れ、寒さにまかせそのまま歩いたので、右手首と腰の調子が悪い。16:18駐車場に到着、市役所に鍵を返して帰宅した。

鳥居峰 鳥居峰からの登山道
鳥居峰を振り返る 細かい霰が道に積もり始めた
1,050から上部を仰ぐ 寅清水の分岐
中峰手前 中峰の標柱は倒れている
道刈りのされていない登山道 高山帯になってきた
最高到達点付近 1 最高到達地点付近 2
最高到達点から上部 ゴムタケモドキ
シロタモギタケ 実川山から伸びる1,551m峰
男湯を覗く
新しい湯ノ平山荘 小屋の便所(水洗)
新小屋を下方から見る 女湯分岐から見た登山道
女湯(湯気で曇る) 登山道から女湯を振り返る

【2001年11月05日/朝日連峰の初冠雪/井上邦彦調査】