登山者情報597号

【2001年12月08日/針生平〜祝瓶山/井上邦彦調査】

天気予報はあまり良くないので、近くの山と考えてのんびり起床したが、青空が徐々に広がってきたので、急遽祝瓶山に行くこととして、関係者に登山計画書をFAXで送る。気楽に計画を変更できるのが単独行の良いところである。朝食を済ませ、コンビニでお握りを3個買って北に向かう。関さん宅で挨拶、先日登ったところ膝までのラッセルだったとのことである。
大石橋まで車で入り、長靴を履いて橋板1枚の大石橋を渡る。大石沢手前の分岐で今年設置した標柱を確認して左に曲がる。大石沢には足場板が1枚あるだけで、渡渉を余儀なくされるが、長靴なので平気でバシャバシャ渡り、杣小屋を右に見て進み、標柱で右に折れる。このあたりは以前は放牧場であった所だ。放牧を止めてから育った潅木林となっており、古い角材が当時の柵の名残である。
祝瓶山分岐には、以前からの標柱の先に新しい標柱が立てられている。潜橋の上に設けらた吊橋に行くルートは、この新しい標柱から右手の河岸段丘に上がるのことになる。私は祝瓶山に向かうので、古い標識から右手の段丘に上がる。軽く身体が温まる頃、左下に白布平から角楢小屋に至るブナ林が広がり、大朝日岳から西朝日岳までの展望が広がる。小動物の足跡が登山道を横切っている。水場には、新しく「鈴出の水」と書かれた大きな標識がゴヨウマツに括り付けられていた。水場へはここから右下のスズイデ沢に下ることになる。そのまま尾根を登りきった720mからは、817m峰とイチノトが見える。積雪は5cm程度しかない。さらにひと登りで右から来る尾根と合流するとやや雪が多くなる。平坦地を進み、817m峰に立つと、ブノグラノタルミ(鞍部)を挟んでイチノトが聳え立っている。これまで晴れていた大朝日岳方面が霞んできた。高度を上げるに従い、雪が次第に多くなり、ワカンジキを履く。気温は−2℃。足の先が冷たくなってくる。雪が膝下まで抜かり始めた段階で、プラスチックブーツに履き替え、先週購入したばかりのロングスパッツを付け、お握りを頬張る。ブナの林になると雪が膝を越え始め、潅木になると時折登山道を潅木が遮り背中に雪が落ちる。視界がなくなってくると、ようやく1,239m峰イチノトの岩に到着する。ここが森林限界である。サラサドウダン等の潅木は砂糖菓子のように白く覆われている。ここから先はルート選択に神経を使う。左斜面はすっぱりと切れて角楢沢に落ち込んでおり、右斜面は潅木が密生している。雪庇はまだ出ておらず、注意しながら夏道沿いにルートを取る。赤布を時折潅木に結んで、幾つかの小ピークを越える。前方に稜線との分岐標柱の頭が見えたが、そこまでのトラバースに不安を感じたので、1,350m峰の頭を越える。夏の状況を頭に描いて微かな視界と照らし合わせて進む。目の前に急斜面が聳えた所で、2個目のお握りを頬張る。先週購買したチタンのサーモスに入れた紅茶があり難い。手袋を換え(それまで軍手)、カッパの上を着る。登り始めると雪がウインドクラストしており、ワカンジキの爪では心もたない。ストックを背負いピッケルを抜き、一歩一歩慎重に登り、山頂に立つ。山頂はクラストしており、3本の標柱と三角点が露出していた。風はないが、視界もない。ODDと無線連絡をして、下降に入る。
赤布を回収しながら降り、イチノトでODDに危険地帯を突破したことを報告し、快調に降り、ワカンジキで歩きにくくなった時点で長靴に履き替え、最後のお握りを頬張り、そのまま駐車場まで戻った。

所要時刻
駐車場08:37→祝瓶山分岐08:54→鈴出の水分岐09:15→720m09:27→尾根分岐09:32→817m峰09:42→10:02ワカンジキを履く(890m)10:06→10:30靴を履き替える(1,060m)10:45→イチノト(1,239m)11:18→稜線分岐標柱11:53→12:00食事12:06→12:16祝瓶山々頂(1,417m)12:22→イチノト12:48→(1,060m)13:02→13:13長靴に履き替える(830m)13:25→817m峰13:35→鈴出の水分岐13:48→祝瓶山分岐14:00→14:13駐車場

針生平からイチノトと1,350m峰 大石橋手前の標柱
大石橋 大石沢手前の標識
放牧柵の名残 祝瓶山分岐(奥の標柱が白布平方面)
快晴の朝日連峰
小動物の足跡 角楢小屋周辺を見下ろす
「鈴出の水」標識 720mからイチノトを望む
天候の悪化が始まった
817m峰から イチノトイチノトを目指してブナ林を登る
久々の雪道は楽しい 潅木帯に入っても道は明瞭だった
イチノトに到着砂糖菓子のような潅木
(左)イチノトから登ってきた道を振り返る、(中)左の急斜面、(右)ルート選択に神経を使う
稜線分岐の標柱 視界のない中、山頂を目指す
山頂直下の登山道 祝瓶山々頂
山頂にて記念撮影 山頂の三角点