登山者情報603号

【2002年01月26日/掛摺山(滝の丸山927m)/吉田岳調査】

 快晴。外泊プラス除雪の朝仕事を終え、自宅に戻った時にはすでに10時を過ぎていた。しかし、このめったにない晴天を見逃すわけにはいかず、すぐ計画書を送り家を出発。小国町河原角地区の除雪止まりの待避所に駐車。ここから掛摺山へ向かう。掛摺山と言ってもほとんどの人は分からないだろうが、滝の丸山と言えば知っている人も多い。独特な形のその山を、小国の町中からきれいに見ることができる。また冬の始め頃には、その山が3回白くなると町にも雪が降ってくると言われている。なかなか神秘的な魅力のある山である。しかし丸山と言われてはいても、その形はいわばモンゴル式移動テントのパオのようなもので、上部は確かに丸いが、そこに行き着くには急峻な斜面や尾根を昇って行かなければならない。前もって地図とにらめっこし、麓からも山容を眺め、おおよそのコースを設定してはいた。しかし、あとは本番の判断である。そして今日は時間の問題もあるが、とりあえず行ける所まで行くことにした。
 11時、山スキーにシールを着けて出発。まずは冬は廃村となる滝地区への林道を歩く。3日間降り続いた雪は、今日の陽気でいつ雪崩になってもおかしくない。と注意していたその時、後方15mの対岸より突然斜面の雪が崩落して雪崩が発生。ものすごい音を立て、みるみる枝沢が埋まり、そのはね返った雪がこちら側までも飛んできた。恐怖感を覚えたが、こちら側の斜面では、その様な雪崩は起こらないだろうと判断し、そのまま登山を続行する。
 2つ目の橋を渡り、旧西滝地区の所で林道を離れ、西へ向かう。桂沢とから沢の間にある尾根の取っ付きでスキーを外し、かんじきに履き替える。ここまで1時間のアプローチである。取っ付きは急傾斜となっており、苦労してラッセルを行う。スノーシューという手もあったのだが、急斜面歩きに自信がなく、かんじきを持ってきたのだった。はたして効いているのか、とにかく腰までぬかった。傾斜が緩くなった所でスキーに履き替える。なるべくスキーで歩きたいが、履き替えながら登らなければならないようだ。
 13時30分樹林帯を抜け、核心部とも言うべき稜線直下の急斜面の取っ付きに到着。しばし作戦会議(?)。前方の稜線には2m程の雪庇が走っているため、それを乗り越えることは不可能である。そのため少し恐いが左手のコルをトラバースして一つ南の尾根に取っ付き、そこから上部をうかがってみることとする。もしそこでコースを見つけられなければあきらめて下山するしかないだろう。コースが決まり、まずトラバースを始めようとしたところ、下に亀裂が走っていることに気づいた。そのため少し直登を行う。かん木につかまりながら10m程登ってからトラバースし、尾根に出た。すると、その上には雪庇がなく、そのまま直登して稜線に出られそうだ。何とか稜線に出て、15時標高870mの前山に到着した。そこからは緩やかな斜面を30分程歩けば山頂に着けそうだったが、時間が時間なので、ここまでということにした。山頂からの飯豊連峰のパノラマを見渡せないのは残念だったが、核心部をクリアできたし、ここからでも十分高感度を味わえる。それに下りで万が一ということを考えればもうタイムリミットであった。しばし食事と風景を楽しみ、滑降の準備にとりかかる。
 15時30分スキー滑降開始。上部の急傾斜、コル、亀裂付近を無事通過。雪質は一応パウダーであったため、思ったより滑降を楽しむことができた。後は狭い尾根を立木を避けながら滑り、16時林道へ出た。ビンディングを解放し、スケーティングで1時間程林道を歩き、17時何とか暗くなる前に駐車場に到着した。

左手が滝の丸山、右手が猿鼻山 麓の林道より望む
手前が茂松山、後方は蔵王連峰 手前が河原角集落、後方は朝日連峰
核心部スキー滑降クリア 雪崩跡