登山者情報604号

【2002年02月02日/鷹ノ巣山(敗退)/井上邦彦調査】

小国町と三面を結ぶ蕨峠を挟んで、登山者情報第515号に掲載した餓鬼山(741m)と相対しているのが今回の目標である鷹ノ巣山(910m)である。
小国町最奥の集落である入折戸(標高225m)の駐車場に車を止め、スキーを履いて08:00出発。橋を渡り右岸の林道を進み、次の橋の手前から左手の尾根に取り付く。杉の植えられた段丘を進み、雪に覆われた右手の小沢を渡ると雑木尾根の急登になる。ここでNo1赤布を付ける。シールに雪が張り付き大変重い。スキーは深く沈み爪先が上がらない。08:33、310m、スキーの先のカラビナにクライミングテープをセットし、引き上げながら登る。345m小ピークで右より尾根が合流する、No2赤布を付ける。ここから杉の植林地を登る。415m小ピーク通過、No3赤布を付ける。右手は若いブナ林、左手は杉植林地である。杉林を登ると、足元で嫌らしく雪のきしむ音がする。眼下には入折戸集落が広がり、私の車も見える。
09:20〜28、465m主尾根に出ると、太いブナが出てくる。僅か240mを登るのに80分も要したことになる。No4赤布を付け、ODDと交信する。この先、左手は広い雪のスロープとなっている。いかにも雪崩が出そうな斜面なので、ブナ林の尾根を忠実に登る。風がないのにブナの梢に積もった雪が爆弾のように次々と落ちてくる。
10:01、570mピークに到着する。この先は平坦な尾根が続いている。南方面(長沢付近か)の視界が出てきた。No5赤布を付ける。尾根の右手に雪庇が出始めているが、ルートは問題なく、ブナ林の緩い凹凸である。通常なら快適な歩行が楽しめる筈であるが、スキーが全く滑らない。とぼとぼと進む。
10:19、625m突然に前方に尾根がなくなった。視界は殆どない。磁石と地図を出して何度も睨むが、現在地が判然としない。想定した尾根を若干下り、視界を求めるが、異様な音が下部から聞こえる。始めはカモシカでも動いているのかなと考えていいたが、雪塊が落ちる音だと気がついた。山頂に登り直し、また地図と睨めっこしていると、餓鬼山が見えてきた。前方は深い谷になっているようだ。何処かでルートを誤ったという以外に考えられない、10:30トレースを戻ることとした。
先ほど右を巻いた小ピークを逆に巻いてみると、目の前に県境らしき大きな山が見えた。見ようによっては、この急な尾根を下った所から続いているようだ。急なので右斜面を下ることにする。前方で何かが動いている。無数の雪塊が転げ落ちているのだ。速度はないが、点発生表層雪崩である。扇形に広がって次第に速度を増している。1箇所ではない、周囲で雪が動き出しているのだ。この雪崩はブナ林の中で発生している。全く進まないこのスキーで雪崩を避けることは無理だろう。退却するしかあるまい。
登り直し、11:03帰る事とする。11:26ピークでシールを外しているとODDと無線が繋がった。下山の旨を伝える。今回は兼用靴ではなく登山靴を履いてきた。シールを外しても私の技術では颯爽たる滑降は望むべくもない。たまには大部分を斜滑降とキックターンの併用で、11:36No4赤布を通過し、12:04駐車場に到着した。

長沢集落付近から鷹ノ巣山、コースは右手の山(帰途撮影)
入折戸集落にて 入折戸の駐車場から570m峰を望む
入折戸集落全景、左端に私の車が見える
主尾根への最後の登り 主尾根にはブナが出てくる 主尾根の雪庇の様子
右手の高峰が餓鬼山
平坦な尾根が続く 結構良いブナ林だ マンサクが春の準備をしていた
ようやく鷹ノ巣山が見えた