登山者情報605号

【2002年02月04日/長井葉山(1230m)/吉田岳調査】

朝日連峰の南東に位置するこの山は、長井市では市民の山として親しまれており、また中学・高校の学校登山としても利用されている。山頂手前には山小屋もあるが夏場は適度な日帰りコースとして人気のある山である。そんな葉山を長井在住の小国山岳会員IBYを誘い山スキーで行ってみることとした。
7時に小国の自宅を出発。8時IBY宅着。そして荷物分け。コンビニで食料や荷物を調達し、登山口となる白兎地区の除雪止まりに車を止める。ここはあらかじめIBYが駐車スペースを探してくれていたのだった。9時10分、スキーにシールをつけ出発。しばらくは炭焼き小屋に通っているおじさんの足跡をトレースする。天気は快晴。そのため放射冷却で最低気温−6℃まで下がったが、今はヤッケ(上着)なしで歩ける程度。そして結局一日中ヤッケを着ずに山行を終えることになる。キツネの足跡がずいぶん多いなと思っていたところ、遠くにキツネを発見した。
森林公園を抜け鳥居をくぐった所から尾根への登りが始まる。こまで30分程度。昨日登ったらしいプラブーツに輪かんの足跡が続いていたが、標高で200m程登った辺りで引き返していた。50分歩いて一本というペースで登っていく。IBYは早くも汗だくになり既に下着一枚姿になっている。私も照りつける太陽の光で顔面がヒリヒリとほてり、何度も雪の中に顔を埋めた。こうするとスーッと顔の汗が引き気持ちがいい。標高が上がるにつれ長井市と飯豊町の雪に覆われた屋敷林と散村形態の田園風景が見えてきた。「日本の美しい里山風景」だかに選ばれた景色である。さっそくIBYは自宅を探している。
このコースは1本の尾根道であるため迷う心配も少なく、また雪崩や滑落の危険性も少ない。冬山入門としてはもってこいの山であろうが、山スキーとしてはちょっと柴等の障害物が多い。「帰りはプロテクターが必要だな」等と話しながら登っていく。しかし上に行くにつれ柴も少なくなり、そしてブナ帯に入っていった。そんな中、私のスキーシールにべったりと"ぼっこ"(標準語では雪団子とでも言うのであろうか)が付くようになり、重くてかなり体力が必要になってきた。後ろを歩いていたIBYの息遣いの方が楽そうであったため、ここでトップを交替してもらう。IBYのシールには全然ぼっこができない。聞いてみるときちんと防水処理のワックスがけをしてきたとのこと。さすがである。そのスキンワックスなる物を使わせてもらう。これで少しは良くなったがそれでもすぐぼっこができる。やはり普段からの道具の手入れは大切であるようだ。
山頂までもう少しという所で今度はテンを発見した。淡い茶色のきれいなテンである。さらにはウサギの白い毛と、隠れていたらしい穴、そしてテンの返し(ふん)と食べ残しが散乱している場所も発見。ここでウサギを捕らえて食べたのであろう。二人ともしばし呆然と立ちつくしてしまった。
13時55分、葉山神社手前の山小屋に到着。ここで我々は昼飯のラーメンのための鍋を持ってこなかったことに気づく。小屋の中に入ってやかんを発掘し、それを使わせてもらうことにした。そして、さらに展望のいい奥の院に向かった。
14時10分奥の院到着。ものすごい色をした青空のもとで風も無く、目の前に大朝日岳の雄姿と、遠くに飯豊、吾妻連峰。これこそ地上の楽園という感じである。まずビールを冷やし、かんじきとスコップでランチ会場を造り、記念撮影をして、昼食の準備にかかる。とその時「このやかん穴が開いてるよ」とIBY。まさに非常事態。しかしこんな時のためにピンチカンがある。中身を出し、その缶でお湯を沸かすこととした。私の持ってきた化繊軍手ではそれを押さえておくことができず、ラジオペンチで取っ手代わり。少々衛生的に問題はあるが、非常時なので仕方がない。そして、きちんとお湯は沸いた。一時間程至福の時を過ごす。
15時40分ランチ会場を撤収し、スキーのシールを外し、穴開きやかんを小屋に返し、いよいよ滑降開始。木々の霧氷が解けていないから気温は氷点下である。雲がかかっていた蔵王連峰も夕日が当たり、きれいに浮き上がってきた。山頂直下だけはパウダーだが、すぐに表面だけが固いモニカ雪や、重い湿雪に変わっていく。そんな雪を相手にしながら立木や柴をかわし、尾根を滑り降りなければならない。IBYはプロテクター代わりにゴーグルをかけた。そして前回の山行でケガをした経験から、ゆっくりではあるが確実なスキーをやる。私の方は突っ込み隊長のごとく、奇声をあげながら切り込んでいった。おかげで5,6回は転んだだろうか。しかし、これは相棒がいることの甘えなのか、果たして一人の時はこのような滑り方をするだろうかと、ふと考えた。一方IBYは一度も転ばず滑ってきたようだ。いわゆるリベンジ成功であろう。特に大休止はとらず時々止まりながら滑り降り、17時10分無事駐車場に到着した。そのまま「あやめ温泉」へ行き、ぱんぱんとなった筋肉をほぐす。
補足:このコースはアプローチが短く、登り返しも少なく、適度な傾斜が続くため、十分山スキーコースとなり得るだろう。もちろん、やぶスキーの嫌いな方にはお勧めできませんが。しかし、やや南向きの斜面であるため3月後半には地面が現れると思われる。真冬でもやはり雪の多い時を狙った方がいいだろう。今回のコース所要時間、登り5時間、下り1時間半。

狐 発見! (手前は狐独特の直線状の足跡)
白兎登山口案内看板前にて マンサク開花、一ケ月以上早い
700m付近、尾根上には兎のトレース跡 気温上昇、シールにボッコが着きながらも
1,100m付近、動物達の活動跡がいっぱい テン発見!撮影は失敗、兎を食べていた跡
兎が捕まってしまった穴、白い毛が・・・ 1,200m付近
長井市と飯豊町が眼下に広がる 1,200m付近から、吾妻連峰
山頂付近、キラキラの銀世界 山頂付近、テンの足跡
山頂の山小屋 葉山神社と大朝日岳
奥の院 大朝日岳をバックに 奥の院の雪座敷にて
大朝日岳の雄姿 下山を開始する
吉田君の滑走 悪雪の中 最後の急斜面

撮影:JM7IBY