登山者情報614号

【2002年04月07日/西俣尾根〜頼母木小屋/井上邦彦調査】

起床してすぐコンビに弁当をレンジで温めたが、睡眠時間不足のため殆ど食べれず。湯を沸かしてテルモスに入れ、長者原に向かう。
04:41民宿奥川入発。小雨である。高度計を308mにセットする。例年ならば雪壁に囲まれている駐車場(個人の駐車場なので、利用する場合はあらかじめ許可が必要です)なのだが、さすがに雪は少ない。暗い中ライトも点けずスキーで進む。
雪が少ないためショートカットできず、珍しく末端から尾根に取り付く。イワウチワが満開になっている。今年始めて夏道を登るが、登山靴の感覚が狂っている。今まではストックの途中を持っていたが、坂の斜度に応じて長さを変更できるストックはやはり便利であるが、緩絞する時、回転部分に一工夫が必要だろう。
05:26主尾根上に出る。この付近はマルバマンサクが盛りである。550mより部分的に雪が出てくるが、殆どは夏道を登る。670mより雪上となり、急斜面をキックステップで登る。
寝不足のためか頭が重いので、ゆっくり登る。時折柴が跳ねる。05:58、710m池(埋まっている)を通過する。ブナ樹の枝コブが印象的である。06:30〜38、960m急な登りの途中、ブナ樹の根元で握り飯を頬張る。じっとしていると寒い。キックステップで越え、左からの尾根を合わせ赤布を付けると、左手に始めて県境尾根の視界が開けた。昨夜、奥川入から電話で聞いたとおり、ランタンと単独行者の足跡が散乱しているが、下降と登りでは歩幅が異なるため自由にルートを取る。
06:53〜07:00、西俣峰山頂にデフ棒を立て、スキーを履く。高度計を1,045mから1,023mに訂正し、緩めのビンディングを直す。雲に動きが出てきた。小ピークを過ぎた下りで藪のためスキーを担ぐ。07:50枯松峰山頂を通過する。右側斜面を下るが、藪のため途中からスキーを担ぎ、08:02〜16鞍部の風下側で食事を取る。ここは土の上で休むのにも良いところだ。
急斜面になった所で、ザックにスキーを括り付け、キックステップで登り続ける。所々の枝に赤布を付ける。この辺りまで来ると、昨日のトレースは消えている。09:04森林限界の枝に赤布を付け、真上の三角岩に向かって登ると、一面潅木が頭を出しているので、右手に進み、雪面と左手に点在する藪の境目を進むことにする。09:13左手に慰霊碑を確認すると、この先ダケカンバ林の右側は風で抉り取られていた。09:26〜32食事。テルモスの暖かいココアが嬉しい。今度はスープでも入れてこようかと思う。純白の新雪と黄砂雪が交互に続く。柔らかい新雪を選んでデフ棒を刺す。デフが見えるのは200歩が限界である。三匹穴の広大な雪面は、下降の時よほど注意しないと危ない。雪が堅くなってきたので、気を抜くと滑ることもあるが、ピッケルを抜くほどではない。アイゼンも用意はしてきたが、温度が高いので、結局は使用しなかった。ピークを勘違いし、赤布をつけなかった部分が生じてしまった。迷い峰(仮称1690m)で地図と磁石で方向を確認し、磁石をセットして進むことにした。山頂手前で隠れたクラックに落ち込む。ここまでデフ棒9本、赤布14枚を使用した。10:24頼母木山々頂に到着する。風が強く、写真を摂ってそうそうに夏道を右手に下る。山頂付近は風で雪が付かないため夏道が分かる。稜線上は体がぶれる程度の風で、新雪にクラックが隠れている熊かと思った足跡があったが、これは他の動物の足跡が雪解けで大きくなったものだろう。
10:37ようやく頼母木小屋に到着。何時ものとおり入口には雪がない。小屋の扉は上下に鍵があるので、捻って外してから開ける。昨年と異なり、今年は特に異常はない。
すぐに新雪を取りに行き、ストーブをつけて湯を沸かしている間に、タオルと手袋を絞り、カッターシャツを出して下着の下に着る(それまでは下着1枚にカッパを着て登ってきた)。コンビニ弁当を入れたラーメンを食べ、雪で冷やした缶ビールを飲む。冷え切った身体をラーメンで温めてビールで冷やす。晴天の山は楽しいが、荒天の山にもそれなりの楽しみはあるものだ。毛布があり、私一人ならこのまま泊まれそうだ。
11:48小屋を後にする。12:06〜12、頼母木山々頂を巻いた所でシールを外す。視界の殆どない中、スキーでの滑降はルート選択に緊張する。自分のトレースもよく確認できない。12:26森林限界を通過し、12:39〜44鞍部でスキーをザックにつける。スキーが枝に引っ掛かるので慣れるまでひと苦労である。12:56〜13:02枯松山々頂でスキーを履く。途中、雪洞を掘っている4人パーティに会う。聞けば森林限界まで登り無理をせずに下山してきたとの事である。踵を固定していても、登山靴による滑降は足に相当の負担がかかる。無理をせず、ポイント・ポイントで下方を確認かたがた足を休めながら滑る。登りになるとスキーを肩に担ぐ。下りでも一部スキーを担ぐ所があった。13:34〜50小ピークで休憩を取り、大渕から天狗平に至る林道を観察する。雪崩はかなり進んでいるようだ。西俣峰を通過して右手の尾根を下り、登る時に付けた赤布から左に折れるが、結構級なので、右手の斜面も使いながら下り,13:54〜58池でスキーをザックに付ける。14:07〜20主尾根と枝尾根の分岐でカッパを脱ぐ。急な夏道の下りなので、スキーのテールが岩にぶつかり転びそうになる。雪崩の危険性がないことを確認して、左の小沢の雪渓に入り、快適に下る。平坦部になると、朝は気がつかなかったが、右下の湿地に小さなミズバショウ達が咲いていた。14:37奥川入に到着、無事下山の挨拶をして帰宅。

西俣峰山頂直下で県境尾根が見えた
西俣峰から先を望む 枯松峰を振り返る
平坦な尾根が続く
三匹穴に付けた赤布 頼母木山々頂にて
頼母木小屋周辺は相変わらず雪がない 滑降には最高の斜面だ
振り返ると新潟楽山会のメンバーが見えた
大淵から天狗平の状況、左端は西俣峰山頂
倉手山を見下ろす 西俣峰山頂に立てたデフ棒
満開のマルバマンサク 主尾根分岐より上方を振り返る