登山者情報645号

【2002年07月20〜21日/梶川尾根〜石転ビ沢/井上邦彦調査】

天狗平で前夜ロッジに泊まったメンバーと合流する。登山者カード記載所ではLFDと小国警察署員が登山者の指導を行っていた。05:55天狗平発、荷上げ隊は石転ビ沢に向かい、我々作業隊は梶川尾根に取り付いた。湯沢峰から下ったブナ林鞍部の湿地が第1の現場である。これまで足場としてきた枝が沢山埋まっており水捌けを阻害している。泥だらけになって枝を一本一本取り除き、水が流れるように溝を掘り、50cm程度に切り揃えた枝を並べていった。滝見場と五郎清水の間で数年前に登山道が抜けた場所が第2の現場である。下部だけ巻き道としていたが、上部に移る部分の崩壊が激しくなったので、上部にも巻き道を作ることとした。さらに上部に2箇所ほど水抜きの溝を掘って作業を終える。暑さにうだりながら登り、第3の現場は五郎清水である。五郎清水には、下りきった所とその先、さらに岩を越えた所の3箇所から水が湧いている。最奥の水場が水量・温度とも最高であるが、足場が悪いので最も手前の水場から汲めるように細工を行った。なお翌日に確認したことろ、若干手直しが必要のようだ。また数年前の土砂崩れで登山道が迷いやすくなっていたので、ロープを設置した。五郎清水から登り、途中数箇所に水抜きの溝を作り、13:56扇ノ地紙に到着した。
門内小屋に着くと、石転ビ沢を登った前田君達が缶ビールを持って出迎えてくれた。喉を潤し、管理棟に挨拶をする。門内小屋と頼母木小屋は18日から管理人が入った。宿泊は1,500円、テント(単独)300円、テント(1張)500円、9時・13時・17時に黒川村役場と定時交信をしているとのことである。ガスの中、ニッコウキスゲの咲き乱れる稜線を梅花皮小屋に向かう。15:37北股岳通過、15:55梅花皮小屋に到着する。
翌日は、天狗ノ庭に向かう。烏帽子岳から下りきった鞍部で残雪を踏み亮平ノ池に上がる。部分的にまだ残雪があり、1箇所は急斜面でピッケルなしでは危ない部分もあったが、良く見ると脇に踏み跡があり残雪に登り降りできる。ここには黄旗を設置した。御手洗ノ池に天幕が2張り、怒りが込み上げてくるが、ぐっと我慢して今後は控えるように指導する。その後も、残雪の上を行く所がある。なお昨年まで最大の関門であった天狗ノ庭から天狗岳の間は、新道により解決している。
天狗ノ庭で確認すると、これまでの作業が確実に効果を上げている。侵食は止まり、土砂が積み重なった所に草が生育を始めている。更に土嚢を積む。これで破壊が続いてきた天狗ノ庭は、一応治まったと言える。今後は植生の回復が課題になるだろう。
【石転ビ沢】
作業の後、梅花皮小屋に戻り昼食、13:11小屋を出発し,15:27梶川出合通過、16:37上の砂防ダムに到着。石転ビ沢については、登りを想定して記載する。
上ノ砂防ダムから登山道に入り、ウマイ水・婆マクレを過ぎ、地竹沢から地竹原の台地に上がり、近大慰霊碑を過ぎると湿地に降りる。ここで始めて雪を踏む。すぐ先で本流沿いの登山道が崩壊しているので右からの巻き道で越え、再び残雪の上を歩き、右手の目印(黄旗と赤布)から夏道を登る。梶川出合付近の雪渓は現在崩壊中である。21日は梶川に架かるスノーブリッジを通れたが、27日には危なくなるだろう。その場合は梶川の上流部で飛び石伝いに渡渉する。大雨で増水した場合は渡れなくなるので注意が必要である。梶川を渡り暫くは雪渓の上を歩くが、左岸側の大石付近が崩壊しているので右岸側から通る。赤滝が近くなると本流が大きく崩壊し、周辺に亀裂が多数入っている。21日は一部メンバーが右岸ギリギリの雪渓を渡ったが、夏道から見ていると冷や汗ものであった。本流崩壊の暫く手前、右手の目印(黄旗と赤布)から早々に夏道を登り、石転ビノ出合で雪渓に出る。下山の場合はそのまま雪渓を下りたくなるが、石転ビノ出合から夏道に入るべきである。
石転ビノ出合は、門内沢に雪渓が続いているので入り込まないこと。石転ビ沢に入って、すぐ右岸で水場が使用できる。大岩の側を登ると、左岸側の雪渓が崩壊しているので近づかないこと。これより上の雪渓はまだ安定しているが、右岸から来る枝沢付近がかなり薄くなってきている。ホン石転ビ沢は若干入った所で雪渓の崩壊が始まった。ホン石転ビ沢対岸枝沢のすぐ上流の水場は使用できるが、枝沢によっては付近が薄くなっているので注意する。北股沢はまだ雪が着いているので迷い込まないこと。北股沢出合の清水も使用できる。黒滝付近は雪渓が崩壊の最中である。黒滝手前から左岸の踏み跡に取り付き、アイゼンを脱いで、そのまま黒滝上左岸の踏み跡を登り、右から入ってくる枝沢を横切って小尾根の登山道を直登する。草付キ(中ノ島)の間にある雪渓には上がらないこと。小尾根を登りきると左手の小沢にある大きな岩の上部で、小沢を渡って草付キ(中ノ島)に合流する。下山する時はここの分岐点を通り過ぎないように注意すること。後は、草付キ(中ノ島)を詰め、左の小沢を渡り、水の流れる登山道を登ると草付キノ広場となり、残雪脇の登山道を登って梅花皮小屋に到着する。
【咲いていた花】
天狗平〜:オオコメツツジ・ツルアリドウシ・ヤマトウバナ
梶川峰〜:タカネニガナ・コバイケイソウ・シロバナクモマガナ
ケルン〜:クルマユリ・チシマギキョウ・ハクサンフウロ・マツムシソウ(1輪)・ニッコウキスゲ・ヨツバシオガマ・ヒメサユリ・ガクウラジロヨウラク・ゴゼンタチバナ・タニウツギ・ミヤマアキノキリンソウ(始)・ミヤマリンドウ・ミヤマコウゾリナ・オトギリソウ・コゴメグサ・トキソウ・タカネサギソウ・キンコウカ・チングルマ(盛)・イワカガミ・アカモノ・ハクサンシャクナゲ・タカネヨモギ
扇ノ地紙〜:アオノツガザクラ・コバイケイソウ・ニッコウキスゲ(盛)・ヨツバシオガマ・シロバナクモマガナ・ミヤマコウゾリナ・シラネニンジン・ミヤマアキノキリンソウ(始)・マルバシモツケ・オトギリソウ・ゴゼンタチバナ・ハクサンボウフウ・ハクサンシャクナゲ・ヤマトウバナ・ハハコグサ・クルマユリ・ミヤマキンポウゲ・ムカゴトラノオ・タカネアオヤギソウ・ハクサンフウロ・ミヤマホツツジ
門内小屋〜:ニッコウキスゲ(盛)・ホソバヒナウスユキソウ・ミヤマリンドウ・チシマギキョウ・マルバシモツケ(盛)・キナナコマノツメ・ハクサンシャクナゲ・ハクサンフウロ・オノエラン・ハリブキ・ミヤマキタアザミ・ヨツバシオガマ・タカネツリガネニンジン(数輪)・エゾイブキトラノオ・シロウマアサツキ・ミヤマキヌタソウ・タカネヨモギ・イイデリンドウ・ガクウラジロヨウラク・オトギリソウ・クルマユリ・ミヤマコウゾリナ・ハクセンナズナ・シナノキンバイ・オタカラコウ
北股岳〜:ニッコウキスゲ・ヤマハハコ・ヤマトウバナ・ヨツバシオガマ・ハクサンボウフウ・オトギリソウ・ミヤマコウゾリナ・タカネヨモギ・コバイケイソウ・ゴゼンタチバナ・アカモノ・イワオウギ・エゾイブキトラノオ・タカネアオヤギソウ・シラネニンジン・ムカゴトラノオ・イワテトウキ・タカネスイバ・ハクサンフウロ・ホソバヒナウスユキソウ・クルマユリ・ホツツジ・チシマギキョウ(盛)・ミヤマダイコンソウ(終)・タカネサギソウ・オヤマノエンドウ(終)
天狗ノ庭〜:ウサギキク(1輪)・シラネアオイ・ニッコウキスゲ(盛)・シナノキンバイ・ミヤマキンポウゲ・ハクサンコザクラ・コバイケイソウ・イワイチョウ・ショウジョウバカマ
御手洗ノ池〜:ヤマハハコ・ヤマトウバナ・タニウツギ・カラマツソウ・ガクウラジロヨウラク
亮平ノ池〜:マイヅルソウ・アカモノ・ニッコウキスゲ(盛)・タカネアオヤギソウ・ヨツバシオガマ・タカネヨモギ・クルマユリ・エゾイブキトラノオ・ミヤマアキノキリンソウ(始)・イワテトウキ・ミヤマホツツジ・ホソバヒナウスユキソウ・イワオウギ・タカネサギソウ・ミヤマコウゾリナ・ムカゴトラノオ
稜線東〜:チングル・アオノツガザクラ・ハクサンイチゲ・ショウジョウバカマ・ハクサンコザクラ
クサイグラ尾根分岐〜:コバイケイソウ・シナノキンバイ(盛)・ミヤマキンポウゲ・カラマツソウ・ハクサンボウフウ・ヨツバシオガマ・マイヅルソウ
烏帽子岳〜:ハクサンシャクナゲ(盛)・ミヤマホツツジ・シラネニンジン・イイデリンドウ・マルバシモツケ・ヨツバシオガマ・ミヤマキンポウゲ・ヤマハハコ・イワテトウキ・ホソバヒナウスユキソウ・チシマギキョウ(盛)・イワオウギ・ムカゴトラノオ・ハクサンフウロ・ゴゼンタチバナ・ハクセンナズナ・クルマユリ・マルバシモツケ
石転ビ沢:ニッコウキスゲ・オオバギボウシ・アカバナシモツケ
石転ビノ出合〜:タマガワホトトギス・エゾアジサイ・ニリンソウ・サンカヨウ・キクザキイチリンソウ・ニリンソウ・サンカヨウ・ヤマブキショウマ・ヨツバヒヨドリ

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