登山者情報654号

【2002年08月17日/石転ビ沢〜梶川尾根/井上邦彦調査】

天狗平で登山指導中のIIVに挨拶。AXLと伴場さんも石転ビ沢を登るという。虻は少なめである。標柱に従い梅花皮沢第4砂防ダム(通称:上ノ砂防ダム)の階段を登るとすぐに小沢を渡り、ブナ林の中を進む。ブナ林の中でも小沢を横切るが、この二つの沢は涸れていることも少なくない。坂を登りへつると、本流の真ん中に大きな岩を一個見下ろす。これが下ツブテ石である。下って崩壊地から流れる小沢を過ぎてすぐ、小沢の沢身を約4m登り、途中から左の山道に移るのだが、気付かずにそのまま沢を登ってしまう者もいるので注意を要する。平坦地を進むと涸れた沢に出る。右手に「うまい水」と書かれた標識が下がっており、登山道下1.5mに冷たくて美味しい水が湧いている。絶好の休憩地である。涸れた沢を進むと左手に山道があるので移る。ここも誤って真っ直ぐに沢を詰める者がいるので注意する。河岸段丘を進むと小沢を渡る。ここもよく涸れている。すぐ先に幕営跡のような広場があり、左手に「彦右衛門ノ平(ヒコエムノタイラ)」と書かれた標識が立っている。まもなく急な斜面をへつるようになるが、ここを「婆マクレ」と呼んでいる。足元に注意して進む。小沢に下ると川原に出る。川原を進んで小沢沿いに河岸段丘に上がるが、本流に入ってしまう者がいるので注意する。河岸段丘を進み近畿大学生の慰霊碑の脇を通る。この辺りを「地竹原」と称している。一段下って小沢の流れる窪地を進むと、正面の登山道が本流に削られ崩壊している。よく見ると、ここから右手に登山道が登っている。以前は崩壊地を巻いてすぐに下っていたが、現在は川原には下らないで梶川出合に繋がる道となっている。
永井・島倉さんに追いつく。梶川出合は合流点で飛び石伝いに渡渉し、雪渓に上がらず通過するルートをセットした。増水時は通行できなくなるので留意すること。踏み台となる石を運んでいる時、腰に異常を感じたが、ザックを背負うと治るのだから不思議なものである。大岩の間を抜けて登りへつり、数m雪渓を進んで右手の登山道に入り、足元に注意しながらそのまま赤滝ノヘツリを進み、石転ビノ出合に到着する。
門内沢から石転ビノ出合まで雪渓が続いており、石転ビ沢には雪渓がない(この部分はエアリア裏面8月上旬参考)。雪渓の下流側は崩壊中であり、亀裂も多い。あと数日で本流の雪渓をわたることはできなくなると思われる。その場合は、門内沢へ入り雪渓を渡り、門内沢の右岸から石転ビ沢の左岸に進んで、石転ビ沢を飛び石伝いに渡渉し、右岸の踏み跡に上がる。このルートに黄旗を立てて置いた。門内沢をそのまま詰めないこと。増水時は通行できない。踏み跡は石転ビ沢右岸の水場から続いているので、下山時は降り過ぎないように注意すること。
右岸の踏み跡を進み、雪渓に上がる。程なく右岸からの枝沢で右岸に降り、川原を進む。再び雪渓に上がる。大岩の頭があちことに露出しており、ルートを探しながら進むが、次第に危なくなり、右岸に追いやられる(雪渓の端は薄くなっているので、岸に上がるときは充分な注意が必要)。再度雪渓に上がるが、右岸枝沢の穴と左岸下流からの亀裂に緊張、右岸上流は岸壁となるのでへつれない。恐る恐る雪渓を横断し左岸側に移る。まもなく左岸より枝沢(ホン石転ビ沢対岸の枝沢)が入っているので、早目に岸に上がる。崩壊中の雪渓をそのまま左岸から巻いて、雪渓に上がる。右岸から水の音がし、左岸から入っている2本の枝沢で薄くなりかけている部分があり、左岸に上がって薄さを確認してみる。まだ暫くは持ちそうだが、面倒なのでガレ場をへつる。今回はすぐ雪渓に戻ったが、今後、雪渓が危なくなると、足場の不安定なガレ場へつりとなる。雪渓を登高中、「ピシッ!」と嫌な音がして肝を冷やす。
北股沢は左岸側が融けて水が流れているが、視界のない時は迷うことがないとは言えない。清水に黄旗を立てているので、一息入れ、そのまま踏み跡を辿って黒滝を左岸から巻く。通常はそのまま踏み跡を進んで小尾根を登るが、今回は特別に沢身を登って草付キ(中ノ島)の下端に取り付いた。このコースは、靴が濡れやすく岩も滑りやすいこと、草付キ(中ノ島)の踏み後が殆ど消えかかっていること等からお勧めはできない。
三角岩(仮称)の上で小尾根コースと合流し、左手の水場を過ぎ、草付キ(中ノ島)上端から小沢を横切って直登する。何時もは水が流れている登山道なのだが、上部の雪渓が全て消えたので、今回は乾いていた。草付キノ広場に出ると、頭上にガスに包まれた梅花皮小屋が見え、ひと登りで小屋に出る。
OTJと四方山話をしていると、南山さんがブッシュを担いで北股岳から降りてきた。北股岳山頂から二俣まで道刈りをしてきたとのことである。下山時間が気になるので、ラーメンを食べて出発する。門内岳までの花畑は、端境期というところだろうか、同じ花が一面を覆い尽くす飯豊の花畑としてはやや物足りない。それでもハクサントリカブトやコゴメグサは見事である。薄日が差してくると、イイデリンドウも咲き始めた。門内小屋の管理棟に顔を出す。常駐は明日までで、月曜日(19日)には下山するとのことである。頼母木小屋も同じである。これ以後は無人開放となるが、便所は使用できなくなる。扇ノ地紙までの登山道は刈り払いの跡があり、快適に歩くことができた。
扇ノ地紙でコースを梶川尾根に変更することを無線でOTJに連絡する。キンコウカとイワショウブの咲く草原を進み、梶川峰でズックの紐を締めなおし、膝バンドを巻き、一気に下降する。まもなく天狗平という所で、つまずき前転、無意識に片手で木の根を掴み空中で回転して無事着地。しかし右臀部に擦り傷をしてしまう。下山時間を気にして速度を上げたため、両足の大腿四頭筋を使いすぎて乳酸が溜まったようである。また半ズボンであることも擦過傷の原因である。幸いそれ以上のトラブルにはならず。無事天狗平に到着した。
【通過時刻】
天狗平05:47→06:15梅花皮沢第4号砂防ダム→06:36ウマイ水→07:04梶川出合07:12→07:42石転ビノ出合(道刈り)08:51→08:59右岸枝沢で食事09:07→09:29本石転ビ沢対岸の小沢→09:57北股沢出合清水10:08→10:44梅花皮小屋12:01→12:19北股岳→12:51門内小屋→13:06扇ノ地紙13:12→13:34梶川峰13:37→13:55五郎清水→14:09滝見場→14:29湯沢峰14:41→15:26天狗平
【咲いていた花】
梅花皮沢左岸:マルバヌスビトハギ・エゾアジサイ
ホン石転ビ沢対岸の小沢:イワアカバナ・ミヤマガラシ
草付キ:ヨツバシオガマ・ハクサンボウフウ・ミヤマキンポウゲ・イワオウギ・シナノキンバイ・モミジカワマツ・ミヤマセンキュウ・イワアカバナ・オトギリソウ・オタカラコウ・ウメバチソウ・エゾオヤマリンドウ・ミヤマアキノキリンソウ・ヤマハハコ・ヒトツバヨモギ・シシウド
梅花皮小屋周辺:ハクサントリカブト(盛)・ミヤマアキノキリンソウ・タカネマツムシソウ・オンタデ・ハクサンフウロ・イイデリンドウ・コゴメグサ(盛)・イワインチン・タカネナデシコ・タカネツリガネニンジン・ミヤマコウゾリナ・ヤマハハコ・ヤマトウバナ・トモエシオガマ
北股岳〜扇ノ地紙:オヤマリンドウ・ミヤマアキノキリンソウ・ミヤマセンキュウ・エゾイブキトラノオ・オンタデ・キオン・ハクサントリカブト・コゴメグサ(盛)・タカネナデシコ・ウメバチソウ・イイデリンドウ・タカネマツムシソウ・ハクサンフウロ・トモエシオガマ
扇ノ地紙〜梶川峰:ニッコウキスゲ・キンコウカ(盛)・イワショウブ(盛)・ミヤマアキノキリンソウ・ニンジンモドキ・オヤマリンドウ(盛)・オンタデ・ミヤマリンドウ・コゴメグサ
湯沢峰付近:ホツツジ

梶川の出合(雪渓に上がらず、川原を通る)
赤滝手前で僅かに雪渓を踏む 赤滝ノヘツリ
赤滝ノヘツリから下流の状況 石転ビノ出合全景
門内沢の雪渓を渡る 石転ビ沢を渡渉する
石転ビ沢右岸からみた石転ビノ出合の雪渓(左が門内沢)
踏み跡から石転ビ沢 右岸の枝沢から見る荒れた雪渓
右岸から見下ろす、荒れた雪渓
亀裂が伸びる ホン石転ビ沢対岸の枝沢で一休み
石転ビノ出合を見下ろす 北股沢が露出している
北股沢出合の清水 黒滝を行く
シシウド ハクサントリカブト
扇ノ地紙〜梶川峰 チングルマの実