登山者情報665号

【2002年10月05〜06日/オウインノ尾根/山田亘調査】
コースタイム
10月5日曇
05:25〜05:40掛留沢駐車場458m(430→460)→06:22北股川吊橋(450)→07:07〜07:19湯の平温泉490m(510→490)→08:25鳥居峰の標識850m(820→850)→10:53滝見場1080m(1090→1080)→11:33〜11:42寅清水1280m(1240→1280)→12:16〜12:38中峰1390m(1390)→14:37二岐1810m(1800→1810)→15:32北股岳2024.9m(2030)→16:06梅花皮小屋1850m(1870→1850)
10月6日高曇
05:07梅花皮小屋1850m(1850)→05:38〜06:05北股岳2024.9m(2030)→06:50二岐1810m(1780→1810)→08:04〜08:13中峰1390m(1410→1390)→08:41寅清水1280m(1290)→09:10滝見場1070m(1120→1070)→11:04鳥居峰の標識(850)→12:09湯の平温泉490m(520)→13:09北股川吊橋→13:58掛留沢駐車場458m(460)(カッコ内の数字は高度計の標高表示。2430→2450は2430mの表示を2450mに補正したということを表す。)

記録
 オウインの尾根は1997年9月20日に鳥居峰の上でリタイヤしている。尾根上で感じた焦げ臭いような熊のニオイ、リタイヤを決めて寝そべって見ていた青空の気持ちよさが印象に残っている。リタイヤの直接の原因は荷物が重かったからだが、もう少し考えると1日で登りきるのも難しい私が万一の装備を備えすぎ重くなったという「臆病」に本当の原因がある。前の冬読んだ「飯豊道」の影響でオウインの尾根を歩きたくなった。あのときのことを思い出し、今度は頭を臆病にではなく勇気を出す方に使ってなんとか北股に届きたいものだと考えた。装備を厳選し月曜からパッキングし、月曜の昼休みから地形図とエアリアと登山者情報で登路を見比べ週末に備えた。
10月5日曇<BR>
 04:00過ぎ新潟市の自宅発、バイパスに乗ると飯豊方面に稲光が見える。加治川ダムから先に時間がかかり05:25掛留沢駐車場に着く。空いていた。05:40掛留沢駐車場を出る頃は殆ど明るくなった(430→460)。ここから湯平までは飯豊川の右岸を歩く。道はよく整備されているがへつり道が多く、北股川を渡るときと、湯の平の前でアップダウンがある。すぐ掛留沢を渡り、少し歩いて曲沢、05:52曲り沢平過ぎると飯豊川から離れ登路が広くなりブナ林も立派になった(460)。06:18ベンチを過ぎると道は北股川へと下り始める(480)。06:22北股川吊橋に出る(450)。ここは地形図では右岸430m左岸470mに見え悩んだ。430mが正しいと思う。左岸に岩稜のマークがあるため等高線が表示できないのだろう。上流は流れが白い岩を洗いなかなかの眺めだ。オウインの尾根はこの出合で終わる。ここから道をつけられなかったのかと観察したが、急峻な岩肌に一般の登山道はなじまないと納得した。吊橋は広くしっかりしているが、子供でも渡れるようにということだろうか、中央のロープがかなり低い位置にあり、巾が広いため腰を落として両手で掴まなければならなかった。橋を渡ると標高差40m位を登り返す。以前ここで草鞋履きの若い僧侶にあったことがある。お供えの水を汲みに来ていたのだと思う。06:32登り返し終わり平地を歩いている(490)。06:43登路が右にカーブすると一杯清水があり量は充分出ていた(490)。06:58水天狗坂始まる(520)。手すりのつけられた岩肌の道をつづら折れに下るとなだらかになる。女湯の手前で岩肌を落ちる水に触ると温泉だった。
07:07〜07:19湯の平温泉(510→490)で水を補給し登山者カードに記入した。管理人さんに中峰の水場の状態を尋ねると、昨日の雨で出ているはずだと答え、だがおまえに見つけられるのかと言われた。登山者情報の660号を持参していたので、見つけられると思うと答えた。小柳美能碑から山荘の裏手に入り緩やかな登り、テン場を過ぎ蛇行しながら歩いて行くと梯子があり道形が急登に変わった。しばらく登ると鎖が続く。ここらへん尾根に合わさるためにかなり無理してつけた道という印象だ。08:02小ピークに乗ったというメモがある。キタゴヨウ?の生えた乾性の気持ちよい尾根を歩いている。沢音と鳥の声が聞こえる中進むと北股川出合から続く主尾根が迫ってきた。地形図にある600m付近の平らな歩きは感じ取れなかった(710)。08:09斜度緩みヘツリ道になる。地形図通りだ。植生はブナに変わる(790)。08:20主尾根に合わさっている。登りなのだが高度計はあれから一瞬のうちに30m下がり760mを指した(790)。08:25鳥居峰の標識に着く。展望が開けるが予報が外れ北股は雲の中である(820→850)。コンパスを使うと自分が884mピークと思っていた所は1074mピークであった。884mピークは思いの外目立たなかった。行く手には平坦な尾根が長く続く。今日はここまで何も食べていない。08:40バナナを食べると大変うまい。飯豊川を挟み烏帽子岳、実川山、西大日岳、大日岳と続く稜線がでかく見える。黒沢の入り方がなんともいえずよい。中峰をあてにして水を500ccほど捨てて歩き出す。滝見場までは地形図とエアリアを交互に出し、実景と突き合わせ感嘆しながらの歩きで大変遅くなった。また前夜興奮して寝不足気味で平坦な歩きに眠気を覚えた。
08:48鳥居峰を左に巻きはじめたのに気づく(840)。途中木の幹が登路に張り出しているところがあり滑りかける。08:57巻き終わり少し下る(820)と斜度の殆どない平坦な歩きが続く。09:30鞍部を越えてようやく登り始める。振り向くと蒜場山が尾根の上に美しい(890)。鳥居峰の標識から滝見場までは時間を掛けすぎたと思う。10:12〜10:25尾根を外れ湿地に入るところで食事を採るか進むか考える。今日はバナナ1本とカロリーメイト2片しか食べていない。休まず行きたいがここからしばらく嫌な区間というイメージがあったのでごはんにする。栃尾の油揚げ、加嶋屋の鮭茶漬に白飯だ(1020)。今回新潟に縁の深い登路ということから、新潟の名産とかみさんの手料理にこだわった。うまい。人心地がつき尾根を右に外れると下に続く沢が見えた。下山時は確かにこの沢を下り続ける人がいるかもしれない。10:31背よりもえぐれた登路を登りシダの生えた湿地を歩いている(1040)。10:41尾根に戻る(1050)。10:53やっと滝見場に着いた。不動の滝が木の間からかすかに、だが太く見え水音も聞こえる。(1090→1080)。この先緩やかな歩きが続く。11:10斜度が出たかと思ったらすぐ終わった(1110位)。写真を見るとこの辺りのブナの木に男性器が彫られている。豊漁を祈るマタギの神事と思う。その近くの木に「飯豊道」に登場するマタギの名前が彫られており登路の歴史を感じる。11:33〜11:42寅清水1280m(1240→1280)。寅清水の手前で登路が日向から木陰に入る所があり紅葉と青苔のコントラストが美しい。11:46寅清水過ぎると左手にとても小さい池がある。さらに平坦な道を進むと11:54右手に池が出てきた(1320)。池を過ぎると登路が右に螺旋を描くように登り始めた。この箇所は事前に地形図を見て何故こんな道形なのか不思議に思っていたところだ。池を避けていたのかと納得した。11:59巻き終わり尾根に合わさるような道形になる(1330)。12:10中峰の手前で朝、私より10分位前に出ていった人とスライドする。そのスピードにおどろいた。いつのまにかへつり道になり12:15中峰のプレートが登路に埋まっている(1400)。ほどなくロボット雨量計が見え12:16〜12:38中峰に居た。
中峰の倒れた標識から右手のヘツリ道に入る。尾根を越えると水音が聞こえ遠目にも水が落ちているのが見えた。近づいていき12:29中峰の水場で水を採る。うまい(1390)。ここからは1607mピークが目立つ。中峰には12:00までに入りたかったので先を急ぐ。風が出てきて夏シャツではきつい。耳の奥と喉が痛くなってきて、風邪をひいたようだった。ウインドブレーカを着て13:09〜13:25尾根の陰で休憩する(1550)。鮭茶漬と栗おこわを食べりんごを丸かじりする。りんごの甘い香りが広がる。13:38 1607mピーク(1590→1600)、14:15 1739mピークの南端(1740)と地形図と実景を照らし合わせながら進む 14:30 1770mピークは越える前は先に鞍部あるかと思ったら、地形図通りなかった(1770)。二岐の前にも小さなピークがあった。14:37二岐1810m(1800→1810)ガスの中登り始める。少し登ると斜度がきつくなる。笹の中を登るうち背よりも高い箇所があり刈払いに感謝する。ガスが出て洗濯平は見えない。笹の中右手にナナカマドの実が赤く色づいている。山頂に近づくと登路は東に回り込んでから緩やかに登っていく。15:32北股岳、ガスと風が強く下り始める(2030)。風邪が心配だ。
16:06梅花皮小屋着(1870→1850)。今日は空いている。管理棟にお金を払いに行く。管理人さんの他に年配の山域に精通していそうな人がラーメンを食べていた。ラーメンが欲しくなり管理人さんに300円で売ってもらった。暖かいラーメンは体にありがたかった。さらに鮭茶漬と栗おこわとチョコレートとコーヒーで夜をすまし、風邪が心配だったので19:00頃寝た。
10月6日高曇
 03:40起床、風邪は落ち着いておりほっとする。鮭茶漬と栗おこわで朝を済ます。今回加嶋屋の鮭茶漬には本当に助けられた。固くなった飯でも一緒に食べるとうまい。05:07梅花皮小屋発(1850)、ライトをつける。曇っている。05:38〜06:05北股岳にいた。遠望は効かないがダイグラ尾根が見える。あれが宝珠山、休み場の峰、水場付近と見当がつき、いくら見ていても飽きない(2030)。門内からきた人と二人で、なんでみんなここへ来ないんだろうと話す。門内方面も遠望は効かないが、胎内尾根から二つ峰ときて主稜線があって梶川尾根へと続く山体が美しい。飯豊は本山だけではないと改めて思う。石積のケルンを拝んで山頂を辞す。
山頂と二俣までは写真を多く撮った。洗濯平の緑色のビロードのような美しさやそこに入る洗濯沢が上品に見え、いつかここを歩いてみたいと思う。06:50二岐(1780→1810)、07:35 1607mピーク(1620→1610)を過ぎるとなだらかになり07:47ゆるやかな下りの赤土の登路が始まる(1510)。08:00前方の地形が緩んできて中峰が近いことを知る。登路も乾き赤土も目立たなくなる(1430)。08:04〜08:13中峰(1410→1390)、中峰のプレートから先は沢ではなくヘツリ道の方に入る。標柱が倒れ下山時は迷いやすいだろう。08:23尾根が痩せ風通しが良く気持ちよい。飯豊川の音が聞こえ行く手に蒜場山を意識する。08:30下っていき登路が右カーブして1316mの巻きはじめに入ったとわかる(1340)。08:37赤土に青苔があり滑りやすい登路だ(1300)。08:41寅清水に出ると登路が乾いている(1290)。寅清水の下で単独行2人とスライドする09:05紅葉は中峰からここらへんまでがきれいだ。寅清水から先しばらく明るい登路が続く(1170)。09:10滝見場(1120→1070)を過ぎてまた赤土の登路になる。
09:32尾根を外れ南側のシダの生える湿地を歩いているとはっきりした熊の足跡を見つけた。瞬時に緊張し、すぐ先の背よりも深い登路ではここで会ったらどうしようと思った。下りは左折する感じで尾根に戻るので、今のように気が動転していれば沢筋を下り続けることもあると思う。09:37尾根に戻る(1010)。10:07 950m位から急な下りになる(900)。10:16 870m小ピーク手前(840→860)で前方を撮影すると鳥居峰の標識までの長さがかなりあるように見える。10:35大岩から884m峰の巻きに入る(820)、と思ったら岩を越えて進み20mくらい登り巻きに入る(840)。この岩を越えた辺りが前回のリタイア地点だと気づいた。日射しがきつくこの木陰で休んだのだ。巻道の途中で水を飲み10:53巻き終わった(850)。11:04鳥居峰の標識(850)を過ぎ少し下ったところで水を飲み気合いを入れる。蛇行してヘツリ道を過ぎ急な下りが始まる。この最後の下りは足にくる。ダイグラは鎖のないところがかっこいいと思う。けれど鳥居峰の下りでは鎖がありがたい。頼りすぎてその後の鎖のない区間がつらい。11:58ひとつめの梯子を通過すると湯の平小屋が見えた(570)。
12:09湯の平温泉(520)で水を汲み、管理人さんに下山の挨拶をした。12:25水天狗坂の上(540→520)、13:09北股川吊橋通過し、13:58掛留沢駐車場に着いた(460)。
二王子そばやなぎに寄り山菜天ぷらとビールとそばを楽しみあけびを貰い新潟に戻った。 おういんの尾根は新潟に住むものとして歩いておきたかった。率直に言ってダイグラ程の風格はないと思った。むしろ旧赤谷登拝道と思われる所や蒜場山から大日岳への稜線などに越後側からの登路のポテンシャルを感じた。いつか不動の大滝を目の前で見たいと思う。

詳細は http://isweb28.infoseek.co.jp/sports/wataruya/