登山者情報669号

【2002年10月19日/権内尾根〜杁差岳/井上邦彦調査】
東俣彫刻公園までは車で進入できる。ここで林道に遮断機が設けられている。遮断機は地元の方が茸採り等で入山するため開いていることがあるが、不用意に進入すると容赦なく鍵を掛けられ閉じ込められてしまうことになるので、十分に留意することが必要である。東俣大橋までは普通の砂利道だが、その先は流水により抉られている所が多く、普通車では動けない悪路である。林道の終点には5台程度の駐車スペースがある。
林道の終点で本流から水を汲み、鉄製の東俣第1橋を渡り、ブナ林の河岸段丘を進み、急斜面を登ると五葉松の平坦な尾根上を進んで若干登ると、「三吉ノ峰」と書かれた菱形標識が置かれている。さらに尾根道を登る踏み跡に入らないようにして、ここから斜面に強引に作られた右手の登山道を下る。東俣川を隔ててカモス峰に続く尾根が見える。ブナ林を下りきると、右の踏み跡を無視して足を濡らさないように注意して進むと、鉄の橋が現われる。東俣第2橋である。渡りきってブナの斜面を登り、右手の尾根に上がる。330m第1橋からここまでの間、幾つか茸採りや岩魚釣りの踏み跡があるので留意すること。
ヘリコプターで搬送するのだろう、雨量計が置いてある。ここでいったん平坦になり上部の色づいた山が見える。631mでさらに大きな尾根を左から合わせ、ナラの尾根を登ると、左手に権内ノ峰を始めとする主尾根が見えた。松の小ピークから僅か下った鞍部のブナの木に「水」の書き込みがあり、白く小さな水場の標識がある。ひと登りで847m「カモス頭」の標識、ここで食事とする。自宅に電話を掛ける。ブナ林を進み、登降を繰り返す。登山道に獣の足跡がある。判然とはしないが、大きさから見てカモシカと思われる。足跡は所々に見られる。念を入れて腰の熊スプレーを抜いて操作を確認する。ペリット状の糞は猿だろうか。乾いた熊の糞もある。朝露に濡れ歩きにくかったズボンが漸く乾いてきた。権内ノ峰は特異な形をしている。尾根には高木がなくなり、急な斜面にはロープも設置されていた。山頂には「権内ノ峰」の標識がある。前杁差岳に連なる大きな尾根を見上げる。鞍部になるとブナが出てくる。砂礫地で直進する踏み跡と左手の尾根上に登る登山道がある。尾根に上がると右手の尾根に雨量観測施設が建っている。砂礫地を過ぎるとすぐに山頂で1,164m「千本峰」の標識がある。ここで2回目の休憩とする。前杁差岳の登りに取り掛かる。単調な登りの中、高度を上げていくと潅木が次第に低くなると共に葉がない裸木の絡み合った様が面白い。道刈りはしっかりとされている。やがて傾斜が落ちると1,534m「前杁差岳」の標識がある。最高点はもう少し先にある。登降を繰り返し、笹原を登ると、湿地のある草原となり、「長者平」の標柱が立っていおり、山頂の標柱が見える。扇ノ地紙付近で行動しているGPNと無線が繋がる。1,636m杁差岳山頂を越えて誰もいない杁差小屋に入る。例により中華丼入りラーメンを煮る。
膝バンドを巻き、ズック靴の紐を締め直し、下り始める。千本峰を過ぎた所で、獣が動く音がして、ブナ樹から猿が駆け下りるのが見えた。ガッガッガという威嚇の声と、クウーンという甘えた声と、キーキーと金切り声が辺りを取り巻く。権内ノ峰で一息入れて、カモス頭下の水場でザックを降ろす。水場の状況を確認するため、南斜面の踏み跡を下る。整備されていない沢を下り西の沢と合流した所に水が湧いていた。水筒に汲むにはコップが必要である。高度計では標高差40m、降り1分40秒、登り2分10秒であった。後は、順調に降り、林道終点に到着した。

通過時刻(この時刻は山岳救助隊員のものです。一般登山者はエアリアマップコースタイムを参照して下さい)
大石ダム→3.1km→遮断機→1.4km→東俣大橋→1.0km→水量測候施設(鉱山跡) →2.4km→林道終点06:33→東俣第1橋→三吉ノ峰→東俣第2橋06:55→尾根上07:02→雨量計07:22→07:26左から尾根が合流→左に主尾根見える07:34→小ピーク07:37→水場07:38→07:44カモス頭07:55→権内ノ峰08:15→08:42千本峰08:51→前杁差岳09:30→長者平09:51→杁差岳山頂09:58→10:00杁差小屋10:43→11:08前杁差岳11:12→千本峰11:39→猿と会う11:44→小ピーク11:54→12:03権内ノ峰12:13→12:29小ピーク12:31→カモス峰12:36→12:41水場12:58→雨量計13:07→尾根上13:22→東俣第2橋13:27→13:38三吉ノ峰13:45→13:55林道終点

エアリアマップコースタイム
林道終点→5:00→千本峰→2:40→杁差岳→1:40→千本峰→3:50→林道終点

写真(クリックして下さい)