登山者情報674号

【2002年11月23日〜24日/角楢小屋/井上邦彦調査】
予定は角楢小屋に荷物を置いて大朝日岳まで日帰りし角楢小屋に戻って泊まるというものであった。前夜、自然公園管理人の齋藤初男氏に電話をすると、山口氏と一緒に角楢小屋に泊まっているとのことであった。夜中に置きだして、コンビニで食料を買い足して、朝日連峰に向かう。徳網を過ぎると、車道に雪が出てくる。私のスペースギアは車高が高いのだが、それでも底を擦っている。針生平の駐車場で方向転換に多少手間取る。
予定では角楢小屋まで長靴を履き、そこからプラスチックブーツ(プラブー)に履き替えるつもりであったが、軽量化を全く無視してパッキングをしたので、プラブーがザックに収まらない。面倒なのでここからプラブーを履く。雪がカチカチに締まっているので、スパッツは着けなかった。ヘッドランプを付けて歩き出す。大石橋を渡り、左折して杣小屋手前の小沢を渡ろうと足を濡らさずに済む渡渉点を探す。ストックでバランスを取りながら石の上を渡る。3歩目であったろうか、僅かに水没している石の上に足を置いた時、突然、頭から転倒した。一瞬状況が飲み込めなかったが、口を開くと水が入り呼吸ができない。足が空中にあり身動きができない、うつ伏せと逆立ちの中間のような格好で顔から水に突っ込み、荷物が後頭部を押さえつけているようだ。このままの状態でいれば、祝瓶山を登ろうと後から来る筈のLFDが私の遺体を見つけることになるのかな等と、意外と冷静でいられた。何時までもこうしている訳にはいかない。両手に力を入れて、力任せに身体を持ち上げる。プラブーが水の中に入るが、この際仕方がない。立ち上がり、氷が張っている足場板を身長に渡って左岸で一息つける。転倒時に左大腿部を岩に打ち付けたようであるが、さほどの痛みは感じない。プラブーを脱いで靴下を絞る。インナーブーツもかなり水を吸っているようだ。車に戻って長靴に履き替えることも考えたが、予備の靴下を持っていない。このまま引き返すには、今日の好天がもったいない。かといって、標高を上げれば凍傷にもなりかねない。ともあれ初男氏達がいる角楢小屋に向かうこととした。途中のブナ林で何度か靴を脱いで靴下を絞る。その都度の水が出る。インナーブーツは一度濡れると手におえない代物だと痛感する。カッターシャツやズボンの裾が凍り付く。結構寒いのだろう。
角楢橋を渡り終えると犬が盛んに吠えてくる。初男氏の愛犬である。角楢小屋には、初男氏と山口・高田氏がおり、さっそく日本酒を頂き身体を温める。こんな日は無理して登ってもろくな事がない。昼まで飲み続ける。ようやく乾いた靴下とプラブーを履いて、角楢平を散策する。凍雪の上に風で吹き寄せられたブナの葉が積もっている。落ち葉の中に身体を横たえると、何とも心地よい。
小屋に戻ると、祝瓶山を登ってきたLFDも来ていた。上部はピッケルを使用したとのことである。3人は下山し、今夜はLFDと2人で泊まることとしたが、午前中のアルコールが効いて、私は早々にダウンとなった。24日は、2人とも用事があるので、早朝に下山をした。
齋藤初男氏と愛犬 山口氏(ホームページ
高田氏 角楢平のブナ林
凍りついたナメコ
山口氏とLFD 角楢小屋
角楢橋 白布平のブナ林
祝瓶山分岐 筆者が転倒した小沢
針生平から祝瓶山