登山者情報678号

【2002年12月23日/明沢〜三体山方面/井上邦彦調査】

国道113号線、トンネルとトンネルの間から北に入ると「小国リレーセンター」がある。ここは小国町の塵を高畠町の処理施設に搬送する中継所である。積雪はあまりないが除雪はここで終わっている。邪魔にならないように車を停め、スキーを履いて、05:51ヘッドランプを点けて歩き出す。今回の山行は前回に引き続き、新しい道具の使い心地を確かめることにある。
06:01―06明沢集落分岐。以前、川向にあった民家は地すべり危険地の指定を受けて移転してしまったが、まだ解体されていない建物も見える。崖上にあった神社も姿を消した。メモを取ろうとすると鉛筆の芯が折れていた。ナイフを探すが見つからない。これまではデジカメ・コンパス・地図・ノート(タコ糸で鉛筆を結んである)と一緒にポシェットに入れておいたのだが、バンド不要のズボンに変更したため、バンド付きのポシェットに変えたので、内容物が変わってしまったのだ。ザックをごそごそ掻き回して見つけたナイフをバンドにつないでポシェットに収める。
06:19名沢川第1号砂防ダムを通過する。獣の足跡が散乱している中、細身のスキー跡が私と同じ方向に続いている。06:29フリースを脱いで下着1枚となりライトを消す。あまりみたことのない足跡。
キツネ・キネズミ・ウサギ達の足跡の中にあって、カモシカの足跡だけが深く潜っている。06:37左に林道を分ける。開けた所を過ぎると官民境の橋で左岸に移る。06:58−07:10、−2℃、第2号砂防ダムで食事を摂る。今回はコンビニで温めたお握りを断熱袋に入れてみた。何時もの冷たいお握りと違い、ほかほかして美味しい。
07:44スキーを両手に持って明沢トンネルを抜ける。出口付近は氷の上を恐る恐る歩く。この前後の対岸の崖は横縞がくっきりとしており面白い。細身のスキーの方は、トンネル先はスキーを履かないで進んでいる。彼の足跡は時折ルートを外れる。茸かウサギを探しているのだあろうか。
天神橋で右岸に移り、07:51第3号砂防ダムを通過する。足跡の主はこの先から戻っている。右足裏が、底で滑っているような感じがし、熱くなってきたので、インナーブーツを締め直す。10m程、林道に雪が全くない所があったので、スキーを持って通る。
08:14−25左岸に移った所で2回目の食事とする。気温0℃、標高は430mである。ここから林道はじぐざくに高度を稼ぎ始める。途中でスキーを脱ぎ登山靴で歩く。殆ど潜らない。曲がりくねった林道を所々ショートカットして登る。林道脇のヤネギが集中的にウサギに食べられていた。
09:28再びスキーを履くと程なく、09:35標高760mで林道の分岐に到着した。明沢川を隔てて荒々しい荒沢山が羽を広げている。孫守山に向かう北端は岸壁となっており、通過するにはロープが必要と思われる。
分岐から右手に折れるとすぐ、林道終点の広場に出る。ここで地形図とコンパスを出し、慎重にルートを選び、コンパスをセットする。これでコンパスだけで950m峰に辿り着ける筈である。付近は平坦な杉の植林地である。950m峰は正面右手が急な藪となっているので、やや左手から登る。植林地から伐採跡の潅木地帯に入ると、急な堅い雪面となり、ゴムのシールは殆ど効かず、斜登を試みるとゴムがスキーから横に伸びて、これまた役に立たない。高坂カンジキに履き替え、カンジキの爪とキックステップで950m峰上に出る。ここで始めてデフ布を使用する。残念ながら飯豊連峰主稜は雲に覆われているが、明沢川源頭の山々はなかなか見ごたえがある。
そのまま鞍部をふたつ越えて、10:49飯豊町との町境主稜に着いた。ここから南の主稜は荒涼とした伐採地跡が連なっているが、北側はさほどではない。平坦な主稜なのでスキーに履き替える。シールを着けての滑降は均一でない雪質では斜滑降が精一杯である。さらに、進むと東斜面は伐採地らしく広くて雪も軟らかく、シールが快適である。11:14−19空腹に耐え切れず食事とする。尖った1080m峰の東に食い込んでいる沢の上部は緩くなっていることを地図で確認し、若干東の尾根を下りスノーブリッジを探して沢を渡り、ブナ林を登る。天候が次第に悪くなってくる。地図と高度計で現在地を探りながら12:05―17、1150m峰に到着する。気温は-4℃。東斜面が切れているので雪庇留意しながら、シールを外す。靴紐を締めなおしている時、コンパスが見当たらないことに気がついた。これはまずい。記憶とデフ布が頼りだ。今冬初めての滑降を開始する。潅木の中でタイミングがなかなか取れず悪戦苦闘、膝がガクガクする。1080m峰の雪庇は比較的安定しているようなので思い切って東斜面を滑るが、結構急斜面となり、全く回転ができない。しかたなく沢を渡って、登りに使用したブナ林に入る頃、漸く感覚が出てきた。12:40−13:05スノーブリッジ脇でラーメンを煮て缶ビールを飲む。登りはスキーを持って坪足とする。13:17鞍部を通過、13:27町境主稜と分かれる。かなりスキーに慣れてきた。13:42、950m峰、ここからのルート選択が正念場である。多少ルートを誤っても林道に出るので安心だが、左の沢に入り込むと厄介そうである。一面に柴が露出している硬い雪面、登ってきたトレースは分からなくなっている。無理やり滑降すると、枝が目の脇を叩く、痛さに暫し休憩。杉林に入り傾斜が緩くなった時点で振り返ると、950m峰の姿から見て、やや右に来ているようだ。修正をしながら下り、13:15漸く登高時のトレースを見つけた。14:09無事に林道終点に到着した。あとは、林道を下るだけである。快適に高度を下げていくと、目の前にウサギが飛び出し、ピンク色の耳を立てて斜面を駆け上って行った。
明沢川まで降りてくると、朝と同じスキーの跡があった。今日ここまで往復したものらしい。14:34橋を渡り右岸に移る。14:48第3号砂防ダム通過。14:57−15:05トンネルを潜った所で最後の食料である(非常食は別にある)ウウイダーインを飲む。15:23第2号砂防ダム通過、15:28官民境の橋を渡り、15:53第1号砂防ダム通過、16:05明沢集落通過、16:13小国クリーンセンターに到着した。
トンネル手前、対岸壁の縞模様
アカネズミの足跡?
ウサギに齧られたヤナギの枝
荒沢山
林道を登る
950m峰から荒沢山・孫守山方面
950m峰から三体山方面
飯豊連峰の主稜は雲の中
町境主稜南部は痛々しい伐採跡が続いていた
主稜手前のブナ林 主稜に出る
主稜南部を振り返る
1150mを目指す スノーブリッジを探して沢を渡る
1150m途中のブナ林 長井方面はよく見えない
1080m峰を振り返る 主稜を振り返る
1150m峰から1170m峰を眺める
最高到達点1150m峰にて 950m峰を振り返る
澄み切った明沢川 明沢川沿いの林道
振り返ると荒沢山が赤くなり始めていた 出発点のリレーセンター