登山者情報694号

【2003年04月19日/西俣尾根〜頼母木山/井上邦彦調査】

奥川入に車を止めさせて頂く、05:10発。途中からスキーを履く、傍らにはミズバショウが咲いていた。05:22、300m尾根の取り付きでスキーを担ぐ。夏道にはカタクリ・マンサク・イワナシ・イワウチワ・ユキツバキ(始)が咲いており、数本のブナの木が新緑に萌えていた。プラスチックブーツで夏道が歩きにくい上、スキーを担いでいるので疲れる。簡単な岩場を登り、05:35-48、420m小ピークでザックの具合を直す。羽ばたきはヤマドリだろう。05:59トラバースして主尾根に出る。登山道は一面イワウチワの花で覆われている。550mナラの巨木を過ぎると登山道に雪が出始め、660mから雪道となる。急斜面を登り切ると夏道になり、程なく06:30、690m西俣ノ峰を仰ぐ十文字池に着き、ここで夏道は終わる。すぐ先から飯豊山を始めとする主稜を望む。06:49-57、780m休憩。07:16-23、910m食事。
07:37-44西俣ノ峰、高度計を995mから1,023mに訂正する。デフ棒を1本立てる。ここであらかじめシールを貼り付けていたスキーを履く。二つ目のピークで、この先は藪が露出していることを確認し、スキーをデポする。藪の中の踏み跡を探しながら進むと、広い雪原になり、08:32-39枯松山々頂、携帯電話が通じた。百石山蕨園の山焼きをしているというLFDと無線交信を行う。08:46-57、1,140m鞍部で食事を摂る。この先は全て雪道となる。ウアサギが脇を走り登る。耳から黒い斑模様が春の訪れを示している。
09:36予想より早く雨が降り出したので合羽を着る。09:50森林限界を過ぎ、09:59三匹穴を通過、左手に遭難慰霊碑が露出している。10:06-11食事、風が出始める。ここから上はルートを誤りやすい所である。左側斜面を斜上していくと、微かにトレース跡がある。ここはどうしても手前ピークと間違えやすい、いったん手前ピークを経由しても良いが、急斜面をトラバースして手前ピークと頼母木山の鞍部に突き上げるコースが旧道であり、残雪時も使いやすい。しかしこのルートは大変に分かりにくい。登りと思われる微かなトレースがまっすぐに鞍部を目指している。よほどコースに熟知している者と思われた。ザックの中の携帯電話が鳴る。10:45鞍部に出て頼母木山を目指して直登する。
10:55山頂の地蔵尊が見えた途端に凄まじい風で、ザックカバーが外されバタバタと旗を打つ、真っ直ぐに立っておられず、ストックに体重を掛けて踏ん張る。それまで見えていた杁差岳方面が瞬く間に姿を隠し、視界が無くなった。そうそうに夏道を下り、記憶を頼りに主稜を北に下る。殆ど巨大な雪庇であるが、小屋の直前で夏道が露出していた。
11:07頼母木小屋に到着する。小屋の入口には例年通り雪が全くない。ドアの上下にロックが付いているので、これを外してノブを回し小屋の中に入る。新潟県側(風上側)の窓が風の振動で霧笛のような唸り声を小屋中に響かせ、窓枠から雨水が飛沫となって噴き出している。さっそく缶ビールを雪に埋め、雪を融かしてラーメンを煮る。無線で呼びかけるとODDが応えてくれた。長いアンテナを使用すると小屋の中でも明瞭に交信できる。ラーメンにレトルト中華丼とお握りを入れ、缶ビールで喉を潤す。
天候は悪化する一方、11:53頼母木小屋を出発する。視界は10m程度、幸い自分のトレースが残っていた。頼母木山々頂直下夏道の手前で左にトラバースする。12:16山頂に向かった時のトレースと合流、トレースを頼りに下る。何処を歩いているのか見当もつかない。異界に降りていく感覚だ。下るにつれてトレースが風雨で薄れていく。
12:39森林限界を通過、12:58鞍部から夏道となる。13:10枯松峰まで来ると視界が出てきたが雨は止むことがない。13:35スキーデポ地点でスキーを履くが、靴紐をよく締めていないので操作しにくい。登りよりも状況が悪くなっているのだが、面倒とばかりにスキーの利点を生かして渡ろうとしたところ、案の定、雪橋が崩壊し数m下に落ちる。幸い雪塊に押し潰されなかったので、スキーを外して無事に這い上がる。
注意力判断力が散漫になっていること、雨のため滑降すると目がよく開けなくなることから、西俣ノ峰手前ピークでスキーをザックにつけて担ぐことにした。13:57西俣ノ峰に立てたデフ棒は強風で吹き飛ばされていた。休憩する気にならない、急斜面を下ると十文字池までは平坦なスキー適地であるが、ここも全てスキーを担ぎ、14:12十文字池を通過。14:28主尾根から枝尾根に入る。急峻な枝尾根は縦に担いだスキーの上下が引っかかるので疲れる。最後の2mという所で尻餅を着き、ストックを折り曲げてしまった。14:55民宿奥川入に到着、傘をさして隆蔵氏が迎えてくれた。

民宿奥川入から飯豊連峰 対岸の倉手山
イワナシ ナラの巨木とイワウチワ
倉手山と天狗平への車道
十文字ノ池
西俣ノ峰を仰ぐ 十文字ノ池を見下ろす
十文字ノ池と対岸車道入口 枯松峰への県境尾根
西俣ノ峰山頂から頼母木山 枯松山を望む
杁差岳 帰路にここで落ちる
藪の中の踏み跡 頼母木山
杁差岳
三匹穴と頼母木山を遠望する 沢は雪崩の巣
枯松峰山頂から振り返る 雪庇の状況は良くない
ダイグラ尾根と飯豊山
枯松峰を振り返る 杁差小屋と杁差岳
森林限界を見下ろす 丸森尾根最上部
三匹穴にて
三匹穴を見下ろす 頼母木山を見上げる
頼母木山々頂 山頂から杁差岳
山頂から地神山 頼母木小屋

大淵から天狗平へ