登山者情報698号(投稿)

【2003年05月04日/鷲ヶ巣山(わしがすやま)1093.3m/山田亘(wataru@infoibis.ne.jp)調査】

晴れ 地形図 三面
コースタイム
06:00沼田林道入口(70)→06:08登山口(120)→06:20タケン沢(200)→06:35尾根に合わさる(290)→06:55見晴台(420)→07:35〜07:45鷲ヶ巣山避難小屋(660)→08:11前ノ岳825.3m(790→825)→08:31 690m鞍部(690)→08:50〜08:59 774mピーク(770)→09:07 740m鞍部(730)→09:20水場分岐(810)→09:45〜09:48 950mピーク(950)→10:04〜10:08中ノ岳990m(990)→10:32 1004mピーク(1000)→10:55 870m鞍部(890)→11:22 1010m小ピーク付近(1030)→11:42〜12:15鷲ヶ巣山1093.3m(1100)→12:52 870m鞍部(880)→13:35〜13:42中ノ岳990m(990)→13:55 950mピーク直下(950)→14:07〜14:15水場分岐(820)→14:22 740m鞍部(750)→14:32 774mピーク(785→775)→14:45 690m鞍部(670→690)→15:14〜15:24前ノ岳825.3m(825)→15:41鷲ヶ巣山避難小屋(690)→16:07見晴台(450)→16:24尾根を外れる(320)→16:32タケン沢(220)→16:38登山口(160)→16:46駐車場着(100) (@カッコ内の数字は高度計の標高表示です。Aここでいうタケン沢は、支流のハルコ沢と思いますが、他のガイドブック等との整合性を考え、タケン沢と表記しました。)
記録
 新潟からR345で村上方面に向かい、岩船八日市の信号を右折すると、正面に三段になった特徴的な山体が目に入る。村上市の臥牛山からは双耳峰、朝日村の北部からは三尊型と、見る角度によりその姿を変えるが、どれも非凡で美しい。これが鷲ヶ巣山で、山頂に十二体の黄金仏が納められていたという言い伝えがある(越後名寄)。私は村上で18才まで過ごしたが、この山に登ったことはなく、故郷に借りがあるように思っていた。加えて@先週川内山塊の銀次郎山で苦戦したので同じような登路を歩きたい、A朝日連峰の展望が魅力、Bダイグラ尾根を意識してある程度の登路を、ということでこの山を選んだ。
 03:58新潟市の自宅発、04:55古渡路(フルトロ)のセブンイレブンで食料調達し、三面ダム方面に入る。布部橋を渡り岩崩集落を過ぎて、朝日スーパー林道に入るとすぐ右側に記念公園があり、ここに車を止めた。 06:00沼田林道入口(70)発、ゲートには鍵がかかっている。砂利道を緩やかに登り、06:08登山口(120)、郵便受があり山行届を入れる。暗い杉林に入り、少し歩くと右手が伐採された明るい原に出る。登路に細いブナが混じってくると杉林をへつる道に変わり、水音が聞こえて来て06:20タケン沢(200)通過。明るく小さい沢だが、ヒルが出るので足早に通り過ぎる。道はタケン沢沿いに少し登った後、ブナ林の斜面を尾根に向かい始める。06:28この登りは地形図より急に思える(260)。樹間から高く見える山は、前ノ岳から北に派生する尾根の650m峰だと思う。最後少しへつった後、06:35尾根に合わさる(290)。他のレポートでも25000図の登路より前で尾根に乗ると書いてあったが、今回歩いてみて、自分も歩き出しから尾根に乗るまでは地形図と異なると感じた。事前の地図読みでは尾根に乗ると急登という印象があったが、むしろ斜度がやや緩み歩きやすいように思えた。これも実際の登路が300m前後で合わさると思えば納得できた。木本はブナしかわからないが、明るく歩きやすい尾根だ。樹木に遮られ展望はあまり良くない。06:55見晴台という標識があるが樹間が少し開け、三面川(みおもてがわ)沿いの集落が少し見える程度だ(420)。アカヤシオがブナの新緑に美しい。この登路は健脚者の記録でも時間を掛けているので、荷物を少なくし、ゆっくりと休まず歩き続けた。右手から南側を並行して走る尾根が迫ってくる。北側にある尾根の650mピークが樹間越しに段々近づいてくる。斜度はあまり変化がなく新緑にアカヤシオが気持ちよい。斜度が緩み07:35〜07:45鷲ヶ巣山避難小屋(660)付近。この小屋は朽ちており使用できないだろう。登路左手すぐに水場もありちょろちょろ出ていた。ここを過ぎると登路が広くなりブナ林も立派になった。一方、ロープのつけられた箇所が目立ち斜度も増した。08:02斜度が緩み、前方から日が射し、登路にイワウチワがあり、タムシバがブナの新緑に映えている(760)。歩いていくと中ノ岳と後岳が見えてきて、08:11前ノ岳825.3m(790→825)着。標識はないが三角点がある。日が射し、三面貯水池の観音島がよく見える。晴天が続いたため朝日連峰はぼんやりだが、以東岳は特徴のある姿を見せていた。鷲ヶ巣山(後岳)は相当遠くに見え、すぐ下りはじめた。
 08:31 690m鞍部(690)は、風通しがないけれどブナの新緑がきれいな明るい場所だ。北の沢に雪が残っていた。08:50〜08:59 774mピーク(770)付近で、おにぎりを食べ中ノ岳をバックにタムシバを撮る。09:07 740m鞍部(730)。前ノ岳を過ぎてからのアップダウンは覚悟していたが、歩いてみるとむしろ登路の「長さ」を感じる。けれど品格というか清浄なものを感じさせる登路で苦でなかった。目の前に中ノ岳が迫り標高差以上に高く感じる。鞍部からの登りは赤土の滑りやすい登路で雨の降った日の下りは大変だろう。枯葉がたまっていたこともあり今回は問題なかった。09:20分岐があり左の尾根沿いを行く(810)。実は右に行けば水場だったが標識がなく、つい登った。この水場を計算して荷物を軽量化していたので失敗だったが、雪を採ったりしてなんとか保った。別なレポートで標識があると書いてあったのを意識した私が悪い。この先、水場に注意しながら登ったが09:45〜09:48 950mピークまで来てもなく、見落としたと感じた(950)。ここにはほこらがあり、朝日連峰を背に立っていた。山頂で会った関川の人は大日様と呼んでいた。あるいは相模尾根を神格化したものかもしれない。この先kniferidgeの可能性があったが、雪は安定しており登山靴で歩けた。10:04〜10:08中ノ岳990mまで来ても水場がなく、失敗したのがわかった(990)。そして先程の分岐ではないかと思った。朝日は、ぼんやりとだが豪快に見えた。ただ以東岳からの展望のような立体的なものではなかった。ここには村67と書かれた標石があった。
 南を見ると三角錐の美しい山が見え光兎(こうさぎ)山であった。荒川の下流から見ても特徴ある姿をしているがこちら側からの山容はひときわ目立った。この先1004mピークまでもkniferidgeの可能性があったが、登山靴で歩けた。落ちると困るところがあり、ピッケルを抜いた。中ノ岳の山頂部は長く、10:32 1004m平頂部(1000)を通過している。10:34 1004mからの下りだしで南斜面に入った後、残雪で登路が不明瞭になった。トレースを辿り尾根に戻り、雪を使い歩いていたら唐突に藪に当たった。先人もここにぶちあたったようでヤブ漕ぎを試みた跡があった。ここにオレンジ布をつけて藪を漕いで南斜面に下りていくと10m程で夏道に出た。このオレンジ布は帰りに回収するつもりだったが、残ってしまった。後から来る人には申し訳ないことをした。もう少し進むと、実景で地形図上の890m鞍部、900mピーク、870m鞍部がはっきり読み取れた。けれど現場ではピークの南側を巻く感じで違いがわからなかった。10:55 870m鞍部(890)、ここからの登りは長く感じた。予め地形図を見ていなければ嫌になったと思う。900m位から急登になり、11:22 1000m位で斜度緩んだが(1030)、先を見るとまだ長く感じられた。標高差よりも水平距離が長く見えた。1010mの小ピークを過ぎ11:27斜度出てくる(1020)。雪の残る斜面を登り11:39少し斜度が緩む(1080)。まだ上があるように見えたがこれは山頂の大岩だった。ほどなく祠が見え11:42〜12:15鷲ヶ巣山(後岳)1093.3m(1100)に居た。祠は南南西に向いているようだった。何を祭ったものか考えた。私は光兎山ではないかと思う。光兎山が最も美しく見えたからだ。越後の山旅上巻231p上段は、黄金仏の二体が光兎山に盗まれたという説を紹介しているが、これは両者の間に何らかの関係があったことを示していると思う。祠には岩崩集落の人々が平成3年に作ったもので、山開きは5月3日と彫られていた。昨日来れば山開きが見れたと思うと少し残念だ。石の蓋が少しずれ観音菩薩のような光背が見えた。そこに硬貨を滑り込ませると立ち上がり、山頂の大岩に登った。そして辺りを見回した。朝日連峰は殆ど見えなかった。鷹ノ巣山から北の名も知れぬ山々が品よく見えた。この大岩は朝日連峰の相模様を祭ったものと聞いている。真偽はわからないが、この大岩が古い神を祭り、祠が新しい神を祭っているように感じた。三角点に行き、写真を撮っていると単独行者が2人やってきた。関川と新潟の方で、中ノ岳の水場の位置を尋ねると思った通りだった。二人とも優しく山好きな感じで好感が持てた。
 自分は遅いのでおにぎりを食べると先に出た。12:52 870m鞍部(880)、13:25 1004m平頂部直下の登路が不明瞭なところ(990)。この箇所は稜線を南斜面側に少し下がったところに道がつけられている。13:35〜13:42中岳990m(990)。実景ではここから950m峰までの距離が長く落差があるように見える。今思ったが、前ノ岳が950mピークの後にあるので、それと一緒に距離を捉えようとして錯覚をおこしているのかもしれない。地形図と見比べ考えていると先程の二人が来たので抜いてもらった。ここからの下りだしは地形図で見るよりも急に感じた。13:55 950mピーク直下(950)。この部分の登路も地形図より、祠に近ずいてから下りはじめているようだ。14:07〜14:15水場分岐(820)。先程の二人が休んでおりここが水場だと教えてくれた。あるいは私に教えようと休んでいたのかもしれない。そうだとしたらありがたいことだ。標識はないが水場まで20歩で行ける。良い水が出ていたが、関川村の人によれば夏はかなり細くなるとのことだ。14:22 740m鞍部(750)14:32 774mピーク(785→775) 14:45 690m鞍部(670→690)と進む。この登路はアップダウンがきついと紹介されるが、むしろ水平移動の長さを感じた。鞍部からの登り返しはさほどの急登もない。斜度が緩み、長く感じる水平移動の後、15:14〜15:24前ノ岳825.3mにいた(825)。観音島の上に小さな雲が出はじめ、予報より早く崩れる気がした。下りだしは緩いが、790mから急になる。斜度緩み15:41鷲ヶ巣山避難小屋(690)、関川村の人によればここの水場は盛夏は枯れるそうだ。小屋を過ぎると斜度が安定した感じで、アカヤシオも開き目が慰められる。16:07見晴台(450)まで来ると下界の工事の音が聞こえ、着実に下っていると感じた。16:24尾根を外れる(320)。へつった後、ブナ林の斜面は急いでおりた。午後の木漏れ日が美しいが、静か過ぎて何か出そうだ。耐えきれず声を上げ、辺りを見回すと、上の方から小さな石が転がってきた。おうおうおうと三度声を上げたところで近くのブナにぶつかって止まった。今思い出すと少しこわい。下る途中に火炎式土器のように開いたシダがある。毎春思うが、火炎式土器は春の山菜の芽生えをモチーフにしたものではないか。火よりも山菜の方が似ている。美しい造形に写真を撮る。16:32タケン沢(220)を過ぎる。暗い杉林を駆け抜け、16:38登山口(160)。最後走ったので高度計の誤差が大きくなったかもしれない。下りていくと右の杉林に大杉が見えた。上が幾つにも枝分かれしており名のある杉のようだ。前方左から合わさる道は、岩崩集落に通じるものだろう。16:46駐車場着(100)。まほろばの湯に寄り、ゆっくり新潟に戻った。
自分にはハードだったがとても美しい登路だった。鷲ヶ巣山はもっと評価されてよい山だと思う。
詳しくは http://yasumi.web.infoseek.co.jp/