登山者情報707号(投稿)

【2003年05月17-18日/日暮沢〜竜門山〜狐穴小屋/山田亘(wataru@infoibis.ne.jp)調査】

コースタイム
5/17晴一時曇り
07:43日暮沢小屋620m(640→620)→07:12 809mピーク(820→810)→08:29 880m小ピーク(880)→08:56 948mピーク(950)→11:01 1359mピーク(1360)→11:54〜12:12清太岩山1464.6m(1470)→12:56ユウフン山1565m(1560)→13:20 1540mポコン(1550)→14:02竜門山1688m(1680)→14:14〜14:30竜門小屋1570m(1590→1580)→15:40南寒江山1680m(1670→1680)→15:58〜16:15寒江山1694.9m(1700)→16:48北寒江山1658m(1660)→17:02三方境1591m(1590)→17:15狐穴小屋1500m(1510)
5/18曇り一時晴 
05:12狐穴小屋1500m(1510)→05:46三方境1591m(1590)→06:05北寒江山1658m(1660)→ 06:49寒江山1694.9m(1695)→07:25南寒江山1680m(1680)→07:40 1530m鞍部(1540)→08:19竜門小屋1570m(1570)→08:50竜門山1688m(1670)→09:35ユウフン山1565m(1560)→10:12〜10:35清太岩山1464.6m(1465)→11:23ブナ美林(1150)→11:34雪面のトラバース終(1060)→12:10 880m小ピーク(890)→12:45日暮沢小屋620m(640)
(カッコ内の数字は高度計の標高表示です)

記録
 ある雑誌で以東岳の写真を見た。狐穴付近から撮られたもので、主尾根から南に延びる4本の尾根と主稜に降りる大きな尾根が、朝の光を受け、わずかに雲をまといはじめたものだった。あたかも天に向かって突きだした拳のようだった。同じ景色が見たくて、昨秋大鳥池から狐穴に入ったが、雪がなく凡庸な感じだった。あの写真が不思議に心に残り、この週末出かけた。
5月17日 
 03:00起床、ピッケルとアイゼンを入れ03:50新潟市発、バイパスから新発田に入り、〆切橋でR290に出てR113を手の子で北にそれて長井を抜けて最上川沿いを北上する。下界は藤がきれいで、家を出るときは気乗りがしなかったが楽しくなってきた。西川ICから月山ICを経て南へ17キロ、最後の7キロはかなりの悪路だ。小屋直前で沢が林道を洗っている。こんなとこ通れるのかと言いながら車を入れ、07:00過ぎ日暮沢小屋についた。駐車場は5台程度。大混雑かと思ったが1台しかなかった。支度をしているともう1台来て都合3台になった。
 GPSのセットをする。一昨日届いたものでよくわからないが、電源を入れると1分ほどで衛星を5つ捉え3D計測を始めた。前のものとは比較にならない程しっかりしている。07:43日暮沢小屋(640→620)発、少し歩くと、すぐ左手の尾根にとりつく。急登と聞いていたがそうでもない。新緑がきれいで、この先の登路にわくわくする。その一方、一人だけ楽しんでおり、家族に申し訳ないと思う。標高が低いうちは、ブナの緑にムラサキヤシオの赤・ムシカリの白が鮮やかだ。ブナに混じり尾根沿いにキタゴヨウが続く。07:12 809mピーク(820→810)。ここでGPSログを見る。樹林帯でもしっかり取れておりストレスがない。標高が上がりキタゴヨウが消えると、ブナが一段ときれいになる。下の方ではしおれていたタムシバも元気になってきた。とにかく想像以上に素晴らしい登路だ。あまり記録をとらず景色を楽しむようにした。08:29 880m小ピーク(880)を過ぎると登路に雪が出てきた。北にこの尾根に平行して大井沢から来る稜線が見える。948mピークへの登りは急な上、直線の見通しがよく、今日初めて急登を実感した。08:56 948mピーク(950)で白い山が見えた。コンパスをあてると、少し右にずれたが清太岩山だと思う。
 930m鞍部を過ぎ夏道を交えながら登っていくと完全に雪の上に出た(1060)。ここは、尾根の北面を巻く急斜面の雪渓であり、ピッケルを抜いてトラバースした。このトラバースの始まりから1359mピークまで登路を選ぶのが難しかった。注意していたがゴロビツ清水はわからなかった。他の記録では、ゴロビツは1040m付近から沢に降りたところのようだ。おそらくこのトラバースの雪の下だったと思う。ゴロビツは五郎櫃という弁当箱の名前から来ているらしい。自分は「五郎水」の転訛ではないかと思う。尾根を巻き終わると、広い雪面の登りが始まり1050m位からアイゼンをつけた。ちょっと夏道があり、1226mで斜度が緩んだ後、10:32 1230mから登りに入る(1240)。1359mピークまでオレンジ布を10本くらい使った。広い雪面で登路がわかりにくい。全部回収するつもりだったが、他の人の赤布が雪面すれすれになっているところなどに3本くらい残した。トレースは強いキックステップのものが一つ、弱く蛇行しながら登るものが一つあった。雪面は斜度を増し、ピーク直下でかなり急になった。南側に回り込むようにして11:01 1359m平坦部に上がった(1360)。障子が岳方面がよく見えた。美しいブナ林といい、爽快な雪原といい、難しいけれど楽しい区間だった。平坦部からカタクリの咲く夏道を抜けると白い雪原に標識旗が続いていた。清太岩山手前で竜門小屋が見えた。
 11:54〜12:12清太岩山(1470)。大朝日方面に並行して走る谷の切れ込みがきれいだ。またユウフン山(熊糞山)との鞍部が深く見え、コースタイムを大分オーバーしているので焦る。登路を観察すると鞍部から夏道が出ているようだ。アイゼンをはずし雪面を一気に下り1410m鞍部。登りは長いように見えたが途中から緩く登りやすかった。この辺まで来ると大井沢からの稜線がよく見え、実質的に稜線漫歩だ。12:56ユウフン山(1560)は、清太岩山より展望が良い。特に障子ヶ岳方面が立体的な角度で見える。山頂と思われる場所に棒杭がささっている。雲が多くなってきた。せめて竜門小屋に14:00まで入りたい。1520m鞍部を過ぎ13:20 1540mポコン通過(1550)もう一度1520m鞍部に降りると道は緩やかに登り始め、山頂直下で急な雪面に突き当たった。ピッケルを抜いて最後の60mは雪の登りを楽しむ。14:02竜門山頂付近(1680)、で主稜の北側を見る。寒江山を始めとした連なりが立体的だ。竜門小屋まで雪原の下りを楽しんだ。14:14〜14:30竜門小屋(1590→1580)で西川山岳会の人と話す。この人が今日の管理人さんで、今日は一人だから、竜門に泊まれとしきりにすすめられた。自分も狐穴に一人は嫌だが、なにしろ以東岳が目的なのでしょうがない。この人の「朝日は主稜線を歩かないと良さがわからないよ」「ユウフンから見る障子ヶ岳が一番好きだ」という言葉が印象的だった。この先主稜線は殆ど夏道が出ていた。寒江山の登りはきつそうに見えた。15:40南寒江山(1670→1680)に三角点のような標石がある。まだ新しいが摩滅していて文字は良く読めない。標石の前にケルンが置いてあり相模様がよく見えた。ここから寒江山までアップダウンは緩いが、水平移動が長く感じられた。15:58〜16:15寒江山(1700)までの登路は小さな石組みが見られ相模尾根に対する尊敬の気持ちが感じられた。山頂からの展望は、北も南も立体的に見え興奮した。以東岳の前景に相模尾根があるのだが、主稜との接合部に白い眉のように雪が残り緑とのコントラストが鮮やかだ。昔奥三面に知り合いがいたが、その人が「寒江山はいいぜ」と目を細めながら言っていたのを思い出した。寒江山から鞍部まではハイマツがとても小さかった。ヒナウスユキソウの芽吹きも見られ、あと2週間ほどで咲き出しそうだった。1630m鞍部を過ぎるとハイマツがやや大きくなり登路に笹が混じってきた。16:48北寒江山(1660)から下りとなり17:02三方境(1590)まで来ると以東岳がどっしりと見えた。下部の雪渓をたどり17:15狐穴小屋(1510)に着いた。収容はメノコで45人くらい。トイレは水洗2つに普通一つだが、水洗はまだ使えない。清掃協力費1500円。壊れているところはなかった。やはり私一人だ。荷物を置き水を探すと、すぐ近くの雪渓末端から採れた。携帯が通じず、家族と話せないのがさみしい。昨日寝る前に子供が「行かないで」と泣いたのを思い出した。今日は満月だ。風邪も治りきっておらず、大きな咳が出る。その音が小屋に響き「咳をしても一人」という句を思い出した。
5月18日
 04:00起床、ほの白くなっている。昨日より雲が多く、太陽はしばらく昇ってから姿を見せた。鮭茶漬けと味噌漬で雑炊を作る。熱い雑炊をうまいうまいと食べる。食べているうちに体が目覚めてきた。05:12狐穴小屋(1510)発、雪渓に登り大井沢の方に少し移動して以東岳を何枚か撮るが4本の尾根が正面に来ない。あの写真は拳を正面から見たように撮れていたが、私のは右斜め前から見た感じでインパクトがない。今度は大井沢から入ってみよう。山頂に雲がかかり、写真を諦め動き始めた。05:46三方境(1590)。こうなると家族が心配だ。早く主稜を外れる竜門山まで行きたい。06:05北寒江山(1660)。06:49寒江山(1695)からの展望は昨日より雲が多い。けれど日暮れ沢側の雲海が美しい。昨日登ってきた尾根を横から見る形になり、ユウフン山、清太岩山で苦しかったところ、楽だったところがよくわかる。寒江山と南寒江山との間に相模様を拝むケルンがめだつ。ヒナウスユキソウの芽吹きに励まされながら歩く。07:25南寒江山(1680)。竜門山への登り返しが高く見え、早く鞍部に降りたい。07:40 1530m鞍部(1540)。小屋への登りで携帯が通じた。子供が熱を出したそうだ。どんなにか心細いだろう。08:19竜門小屋(1570)、中をのぞいたが、管理人さんはすでに出ていた。夏道を登り08:50竜門山頂付近(1670)、09:00まで休みピッケルを抜いて雪面を下った。ユウフン山への登りで3人パーテイが休んでいた。昨日日暮れ沢から入り大朝日に泊まったらしい。09:35ユウフン山(1560)からは、大朝日のピークの下に、入リソウカ沢、柴倉沢、横松沢が斜めに入っているのが見えかっこいい。清太岩山への鞍部で先程の3人に抜かれる。本当は清太岩山で休んでいる時に抜いて欲しかったが仕方ない。ミネザクラがありその先に寒江山が見えた。ピッケルを抜いて雪面の登り返しわずかで10:12〜10:35清太岩山(1465)で鱒鮨を食べる。なぜかおいしくない。先程のパーテイには先に行ってもらい、この先の難しいところにトレースをつけてもらう計算だ。雪原と短い夏道の歩きを繰り返しながら1359mの平坦部に降りていく。降りる直前は南側の雪面に行きそうになるから要注意だ。東にすすみ夏道に入るとカタクリが開きかけていた。中に白いカタクリがあり驚いた。大して群生していないのに、しかも5月中旬という時期に、朝日連峰という高山で見れたので嬉しかった。しかし疲れていたので写真は2枚しか撮らなかった。マクロ撮影したものは、ぼけていた。山形県で白いカタクリを見たのは初めてだった。1359mピークからは快調に下りだした。気持ちよい雪面にブナ林。先行者のトレースがついており、オレンジ布も役だった。こんな気持ちのいい登路は経験したことがない。ひとしきり下ると斜度が緩み、ブナが増えてきた。後でGPSログを見るとあれだけ走ったのに切れておらず、感心した。もうここから先は記録を取らず緑を楽しむことにした。11:23ブナ林がきれいだ。こういうのを美林というのだろう。家族に申し訳ないと思うが、ついゆっくりになってしまう。今まで見た中では浅草岳が一番と思っていたが、それより気持ちのいい感じだ。雪渓の末端から融雪水が流れていた(1150)。しかし写真がエコノミーモードになっており残念だ。粗悪な画質で掲載できない。道は尾根の北側に寄りトラバースが始まった。11:34尾根を北から巻くトラバースが終わった(1060)。夏道が出てもブナにタムシバのコントラストが美しい。でも足が疲れた。12:00まで下山したかったが、だめだった。12:10 880m小ピーク通過(890)。809mピークか880m小ピーク手前で南側の沢からグルルルルという声とがさがさという気配がした。熊のようだ。見ないようにして手をたたきながら離れた。沢音が近ずき、登路にキタゴヨウが混じってきた。そのなかに十字架のように大きな横枝が張りだしたものがあり、格を感じた。高度計は700mからなかなか下がらない。ガクンと下がったと思ったら尾根を降りて12:45日暮沢小屋についた(640)。大井沢で温泉に入り新潟に18:00に戻ると、かみさんも風邪をひいていた。疲れていたが、買い出しで家族にこきつかわれるのも楽しかった。 中腹のブナ林と稜線の展望に心が躍る山行だった。それから、今まで朝日を大朝日−以東岳のラインで考えていたが、今回歩いて三面−寒江山−大井沢までのラインも含め十文字で捉えるべきだと思った。それに気づいた山行だった。 
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